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ギャラリー・ラボ2007―鑑賞空間の合意に向けて
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ギャラリー・ラボ2007―鑑賞空間の合意に向けて
©京都府文化芸術室
2007年9月22日(土)~11月4日(日)
京都国立近代美術館コレクション・ギャラリー
サブ・プロジェクト一覧
「ギャラリー・ラボ2007」全体報告会 開催報告
問い合わせと連絡先
鑑賞空間での会話は悪しきものなのだろうか?
「美術館では静かに作品を鑑賞しなくてはならない」という約束事、これは本当でしょうか?美術館の展示室は一種の公共空間であり、私的会話はその公共性を侵害するものとして排除されてきました。しかし作品を前にして印象を語り合うことや展示室で自然に生まれる会話は、作品についての新しい理解や発見につながる、可能性に満ちた鑑賞の一つの形ではないでしょうか?
鑑賞空間にとって子供は異物なのだろうか?
鑑賞者のアンケートには「幼児が奇声を発して鑑賞の妨げになった」など子供が成人鑑賞者にとって不愉快な対象であるとの指摘が多くあります。逆に親の立場から、「子供が絵を見て『お魚だ!』と声を出しただけで監視の人に注意された」、「子連れで美術館に行くと露骨な嫌悪感を投げつけられる。子供が成長するまでは美術館には行きにくい」という回答もあります。美術館の鑑賞空間にとって子供は邪魔なノイズであり異物なのでしょうか?自己の快適な鑑賞のために子供を排除する成人鑑賞者の視線と、我が子の鑑賞の権利を切望する親の私的な願望、どちらが鑑賞空間の公共性を侵害しているのでしょうか?
鑑賞空間での社会的ジレンマは調停可能なのだろうか?
鑑賞空間での私的会話と子供への白眼視の問題は、私的な振る舞いと制度的なものとのバランスについて身近な形で問題を提起しています。それは、「個人にとっての最適な選択が全体にとっての最適な選択とはならない」という私領域と公共性を巡る社会的ジレンマの問題であると言えます。
この現実を直視し、私領域と公共性との調停可能な距離を探るために、京都国立近代美術館は上記の期間のコレクション・ギャラリーを実験空間として使うプロジェクト、ギャラリー・ラボ2007を実施します。
美術館側は二つの枠組みだけを設定しました。この期間のコレクション・ギャラリーは鑑賞者が積極的に会話をする場とします。この期間のコレクション・ギャラリーは子供たちの来館を歓迎します。子供たちの来館を促すために、中学生以下の子供に同伴されてコレクション・ギャラリーを鑑賞される成人2名の入館料を無料とします。この単純な枠組みの中で、様々な立場と創造的な発想により、鑑賞空間の公共性について自分自身で検証してください。美術館はこの実験空間を用いる提案を歓迎しその実施を支援します。
実験鑑賞空間・ギャラリー・ラボ2007への参加を募っています。
鑑賞者が積極的に会話を交わし子供たちを積極的に迎えようとする場であるギャラリー・ラボ2007の期間中コレクション・ギャラリーでは、鑑賞者同士の会話を主体とした鑑賞実験、作品鑑賞を通じて親子の対話を促す試み、こうした試みと一般鑑賞者との不協和音の実態調査、私領域と公共性との調停可能な距離を探る試みなど、幾つかのサブ・プロジェクトが実施されます。ギャラリー・ラボ2007に興味を抱かれ、様々な立場からこの実験空間を使った調査・試行を希望される方やグループの参加を募っています。
サブ・プロジェクト
(1) | イチハラヒロコ+箭内新一「プレイルーム。」 2007年9月22(土)~11月4日(日) 京都国立近代美術館1Fロビー 入場無料 |
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(2) | レクチャーと討論 三木美裕「街角のミュージアム——アジア、ヨーロッパ、北米を歩く」 2007年9月23(日)午後2時~午後4時(当日午前11時から整理券配布) 京都国立近代美術館1F講演室 定員100名、聴講無料 |
(3) | ファンがつなごう!まちとミュージアム+越野清実 「美術館“で”話そう、美術館“を”話そう」 |
(4) | イチハラヒロコ+華頂女子高等学校クリエイティブ科H1+東福寺保育園 「保育園児と美術館へ行こう!」 |
(5) | 横田香世「こども+アート+おとな → 新・コミュニケーション」 |
(6) | 「TheatreZooiii(シアターズーイ)とまわるコレクション・ツアー」 2007年10月13日(土)午後3時30分~午後4時30分 2007年10月20日(土)午後3時~午後4時 2007年10月27日(土)午後3時~午後4時 京都国立近代美術館1F「プレイルーム。」/4Fコレクション・ギャラリー 定員10名程度、参加無料 |
(7) | 細見美術館「鑑賞方法についてのアンケート」 |
(8) | ミュージアム・アクセス・ビュー「見えない人と絵を見よう。」 |
総合アドバイザー:京都造形芸術大学芸術教育推進室・杉浦幸子
9月22日(土)~11月4日(日)の会期に当館で開催された「ギャラリー・ラボ2007」を振り返るため、サブ・プロジェクト参加者が集う全体報告会が開催されました。期間中実施されたサブ・プロジェクトの、その立案から現場の様子までが実施者自身の見解や感想を交えながら報告され、それに対する他のプロジェクト実施者からのコメントや意見が交換されました。
参加者全員は、この報告会が「ギャラリー・ラボ2007」の終了を意味する儀礼的なものではなく、今後の継続的展開に向けての通過点であるとの認識を共有し、プロジェクトの過程で各自が抱いた疑問や課題を、各現場の個別的な実践の中でさらに深めていくことを確認しました。
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