日時:2018年10月31日(水)午後6時30分~8時
会場:京都国立近代美術館 1階講堂、4階コレクション・ギャラリー
参加人数:参加者26名、スタッフ13名
共催:京都市教育委員会、京都市図画工作教育研究会、京都市立中学校教育研究会美術部会
スケジュール:
18:30 オリエンテーション
18:50 研修の方向づけ
19:00 展示室にて鑑賞ワークショップ
19:50 まとめ
20:00 終了
昨年度に引き続き、京都市教育委員会と京都市図画工作教育研究会、京都市立中学校教育研究会美術部会との共催で「授業実践力向上講座」を開催しました。今年度は、幼稚園、小学校、中学校の先生方26名が参加し、閉館後の美術館を会場に、鑑賞教育の充実を目指した研修会が行われました。
オリエンテーション
まずは当館の教育普及担当が、具体的な実践事例を示しながら、美術館活用のポイントについて話しました。本物の作品や展示空間、研究員、情報など、美術館に特有の資源を柔軟に活用することで、活動がより充実したものになることを伝えました。
「美術館活用のすすめ」(当日配布したものから一部改編しています)[PDF:348KB]
鑑賞ワークショップ
続いて展示室に移動し、研究会所属の先生がファシリテーターとなって作品鑑賞を行いながら、活動の進め方や指導のポイントについて学びました。ここからはグループ別の活動となりましたが、「作品と能動的に関わること」、「自分にとっての意味や価値を見つけること」という共通認識のもとで活動が展開していました。
黒田重太郎《冬林》を取り上げたグループは、絵の中に入り込んでみる方法として「音」に着目。描かれた風景の中から聞こえてきそうな音、たとえば風の「ヒューヒュー」という音や自転車が通った時の音などを、作品の前で一斉に出してみるという活動で盛り上がっていました。
別のグループは、マルセル・デュシャンのレディメイドが展示された部屋の中で、「どこから、どのような角度で鑑賞してみたいか」を探し、みんなで共有。作品の「影」も含めた展示空間全体を活用するという、美術館だからこそできる体験になっていました。
「こんな音も聞こえてきそうじゃないですか?」 おすすめの「見方」をグループ全員で体験 ル・コルビジュエ「直角の詩」を使って物語を作る 箱から引いた「お題」について考えながら鑑賞
この講座は毎年、経験を積まれた研究会の先生がファシリテーターを務められます。そのため、短い時間の中でも、鑑賞のポイントや教師の役割など、現場ですぐに実践できるスキルを身につけることができる効果的な内容になっています。また、同じ教員という立場から、日頃抱えている課題を共有したり校種の違いを越えて交流を深める場にもなっているようです。昨年度から、幼稚園、小中学校、総合支援学校と参加対象枠が広がり、受講をきっかけに「美術館と連携した授業をしてみたい」とご連絡をいただくケースも増えてきました。今後も引き続き、現場指導者である先生方に美術館を身近に感じていただける機会を定期的に設けていきたいと考えています。
(当館特定研究員 松山沙樹)
講座を振り返って
昨年度と同様に、鑑賞ワークショップが行われましたが、今年度は企画展の藤田嗣治の作品もあり、研修に参加した先生方は、いつもと違った展示室の雰囲気を感じられたと思います。最初10分程の作品鑑賞は、思わず魅力的な作品に見入ってしまい時間が足らないほどでした。鑑賞ワークショップではそれぞれが子どもの目になって鑑賞していただきましたが、ファシリテーターとのやりとりが進む中で作品の中に引き込まれていく実感を持たれた先生方も多かったのではないでしょうか。他者の発言から新たな発見や、対話を重ねることで、作者の意図やその工夫への気付きがあり、鑑賞活動が深まっていく程、自分の中でその意味や価値を見いだしていくのを体験されたのではないかと思います。研修に参加された先生方は、子どもたちにもこういった体験を是非させたいと充実した気持ちで研修を終えられたと思います。
(京都市総合教育センター指導主事 桝本 徳裕)