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教育普及・授業サポート 第20回 子ども美術館鑑賞教室 実施報告

日時:2018年10月27日(土)午前9時~11時30分
会場:京都国立近代美術館
参加人数:小学4年生~6年生 28名、保護者・同伴者 32名、スタッフ 12名
共催:京都市図画工作教育研究会


 京都市図画工作教育研究会(図工研)と当館の共催で、「第20回 子ども美術館鑑賞教室」を開催しました。毎年、図工研所属の先生方を中心に、子どもたちが本物の作品と主体的に向き合いながら鑑賞活動を楽しめるようにとプログラムを組み立てています。

 今年の鑑賞教室には、小学4年生から6年生までの児童28名が参加しました。まずは国立美術館のアートカードを使って自己紹介を行い、続いて美術館のマナーについても学習。その後は展示室に移動し、ファシリテーターの先生と一緒に作品鑑賞を行いました。作品を見る際の様々な方法や視点を身につけてほしいということで、「立ち止まって鑑賞」と「歩いて鑑賞」の二つの鑑賞活動を体験しました。

風景

 まずは、ファシリテーターが事前に選んだ作品の前で対話をしながら作品鑑賞を行う「立ち止まって鑑賞」です。
 藤田嗣治《すぐ戻ります(蚤の市)》の前では、描かれているモチーフを次々に見つけたり、「ここはどんな場所だろう?」という問いに対して「がらくたの山」「ごみ処理場かな」「お店屋さんみたい」と活発な意見交換が行われていました。意見がまとまってきたところで、ファシリテーターからフリーマーケットの一場面が描かれていることが紹介されます。その情報を踏まえて更に「真ん中のマネキンと時計は一体何を表しているんだろう?」と、対話が進むにつれて少しずつ作品の核心に迫っていきました。

風景 風景

 続いては「没後50年 藤田嗣治展」の会場で、オリジナルのワークシートを手がかりに、眼鏡や猫といった藤田作品に特徴的なモチーフを探していく「歩いて鑑賞」を行いました。

風景 子どもたちに配布したワークシート

 ここで子どもたちは、色や形といった造形的な特徴を捉えることだけではなく、描かれた人物の表情やしぐさ、作品全体から受ける印象などにも着目していました。活動後の感想文には、「藤田さんの意思が伝わってきました」、「自分の気持ちを伝えたい!自由が一番!という気持ちがこめられていると思います」、「自分の描きたいものをしっかり描いているところがすごいと思った」などとあり、短時間でも、作家の思いや人柄についてもイメージを膨らませながら展覧会を楽しんでいたようです。

風景

 鑑賞を終えて戻ってきた子どもたちは、充実感や達成感のある表情をしていました。美術館に来るのが初めての子もいましたが、ここでの経験をもとに今後は気軽に足を運んでもらえたら嬉しいです。

 また、今回は会場が混雑し、運営面に課題が残りました。特に「藤田嗣治展」では、一般の鑑賞者で混み合う中を大人数で移動する状況になり、場所を譲り合ったり声の大きさを気にしたりと参加者も一般のお客様も双方のあいだに緊張感が高まっていました。誰もが展示室で気持ちよく過ごせるよう、今後は少人数での活動を心掛けたり実施時間を検討するなど改善していきたいと思います。

(当館特定研究員 松山沙樹)

実施を振り返って

 「歩いて鑑賞」の活動では、藤田嗣治展を子どもたちと一緒に見て回りました。藤田嗣治の作品の中には、自画像や作品の一部に本人の肖像が登場するものが多数見受けられます。子どもたちはそれらの作品の時代背景を知らずとも、色調や線のタッチなど微細な変化から子どもなりに作者の心情などを感じ取っていました。
 また作品にたくさん登場する猫の数を一生懸命数えたり、「この猫はなんで怒っているんだろう?」と想像を膨らませながら楽しく鑑賞する姿も見られました。
 マルセル・デュシャンの「パリの空気50cc」という作品を鑑賞した際には、パリの空気を作品に閉じ込めたというエピソードを聞いて、「自分ならお菓子を入れる!」「ゲームを入れたい!」と子どもらしい楽しい会話も聞かれました。
 一見難解そうに見える作品も、子どもたちは素直に作品としての魅力を受け入れ、そこに自分たちの発想を重ね合わせて自由に発言している様子が印象的でした。


 子どもたちにとって美術館という場所は、どこかかしこまった場であるという印象が少なからずあったようで、それは鑑賞前の子どもたちとの会話や事後のアンケートからも伺えるものでした。
 そして以下は鑑賞教室終了後の感想の一部です。

「美術館は難しいイメージがあったけどイメージが変わった」
「友達や家族と意見を交換しながら見るのが楽しかった」
「もっと美術館を身近にしていきたい」
「難しい絵ばかりなのかなと思っていたけれど、見方は自分で決めたらいいと言ってくれたので簡単に見られた」
「他の美術館にも行ってみたくなった」
 美術館で「本物」の作品に出会い、みんなと鑑賞をする中で、子どもたちの意識の変容が見られ、またそんな子どもたちの様子から、私自身も鑑賞の楽しさを改めて感じ取ることのできる素敵な時間になりました。

(京都市立花園小学校教諭/京都市図画工作教育研究会メンバー 村中誠士)

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