日時:2018年11月7日(水)午後1時~3時
会場:京都国立近代美術館 講堂、「没後50年 藤田嗣治展」会場
参加人数:高校2年生(美術・工芸専攻)29名、引率2名
活動の流れ:
① グループごとに1作品を鑑賞(30分)
② 講堂で意見交換(45分)
③ グループ発表(30分)
④ 藤田嗣治の生涯と作品について、研究員によるレクチャー(15分)
⑤ 自由鑑賞
亀岡高校の美術・工芸専攻の生徒たちが「人物画」の単元の一環で来館しました。グループごとに藤田嗣治展を鑑賞し、作品1点について「その作品を通して伝えたかったことは何か」、「何に心が動かされて制作に至ったのか」といった点から議論を深めました。
当日の鑑賞作品は、《アンナ・ド・ノアイユの肖像》、《友情》、《客人(糸満)》、《アッツ島玉砕》、《私の夢》、《カフェ》の6点。事前に担当の先生がピックアップしておいたものです。展示室でグループに分かれて鑑賞した後は講堂に戻り、各作品についてグループごとに話し合いを行いました。気になったモチーフや作品から受ける印象、作者の意図、話題に上ったキーワードなどを付箋に書き出し、模造紙に貼りながら議論の内容を整理していきます。
貼った付箋を分類し、グループ内の意見をまとめていきます
あるグループは、漆黒の背景に眠る裸婦が描かれ、周囲に猫や猿、梟、犬などが配された《私の夢》を鑑賞。絵の中のモチーフを丁寧に観察しながら話し合いを進め、最後は「周りの動物は他の国の人たちを表していて、戦後の日本領土を取り合おうとしている。それに対して中央の女性は目を閉じて、母国への悼みの気持ちを表しているのではないか。」という結論に至っていました。
別の班では《アンナ・ド・ノアイユの肖像》の女性の表情をめぐって、「呆れている」「悲しそう」「含み笑いにも見える」と様々な意見が出ていました。さらに「日本画みたいに見える」「衣服、肌、髪と、それぞれ違った”柔らかさ”を感じる」と、絵の質感が印象的だったという声もありました。
「作品を通じて、何を見ようとしていたのだろう?」
最後に、藤田の画業と主な作品について研究員がレクチャーを行いました。ここまでの一連の活動を通して、生徒さんたちは作品について十分に議論を尽くしていましたが、また別の視点から藤田作品について考えるきっかけになればということで、作家の生涯や当時の時代背景について詳しく紹介しました。話を聞いた後は再度「藤田嗣治展」の会場に戻り、今度は展覧会全体を自由鑑賞しました。
この「人物画」の単元は、「作者の心情や制作に対する考え方に思いを馳せることで、発想力や構想力をより一層身につける」ことをねらいとしてカリキュラムが組まれていました。多くの生徒さんが美大・芸大へ進学するということで、過去の作品を通して作家の生き方や表現の特徴を直に学ぶよい機会になったのではないでしょうか。このあとの授業では人物画のエスキースを描いていくとのこと。作品を通して何を伝えようと模索していくのか、生徒さんたちの今後が非常に楽しみです。
(当館特定研究員 松山沙樹)