日時:2018年10月 午後1時~2時
会場:京都国立近代美術館 4階コレクション・ギャラリー
参加人数:中学生3名、高校生7名、引率1名
学習支援事業の一環で、今年も京都府立福知山高等学校・附属中学校の生徒さんたちと一緒に作品を鑑賞しました。この活動は、本物の作品を前に対話をしながら鑑賞を行いたいという要請を受け、担当の先生と連携をはかりながら実施しているものです。
今回も生徒たちの対話が弾む作品や活動内容を検討し、次の作品・展示エリアで活動することとしました。今年はさらに、同じ作家による他作品の画像を見せたり作家が生きた当時の時代背景を紹介し、「制作者の意図に迫ること」にも重点を置いた活動になるよう心がけました。以下に当日の様子を簡単にご紹介します。
「川勝コレクションにみる河井寬次郎の陶芸」のコーナー
まずは、作品を見た時に感じる印象は人それぞれということを実感してもらうため、「教科」のイメージと陶芸作品とを結び付けた鑑賞活動を行いました。「壺の滑らかで優しい曲線が和歌や古典の柔らかな感じと似ていると思った」など、それぞれが感性を働かせて作品と向き合いました。
小出楢重《卓上静物》
パブロ・ピカソ《静物-パレット、燭台、ミノタウロスの頭部》
続いてはこちらの2点を順に鑑賞。静物画という点で共通していますが、描かれたモチーフや作家の意図は異なります。まずは絵の中から見つけられる「事実」を共有し、続いて、作者はなぜこの作品を描いたのか、作品を通して伝えたかったメッセージは何か、全員で意見交換を行いました。
「没後50年 マルセル・デュシャン特集」のコーナー
最後は、デュシャンのレディメイドが展示された空間へ。はじめに、デュシャンが芸術の意味を世に問う作品を発表した作家であると紹介しました。そして、今度は少人数に分かれて、気になった作品について感じたことを自由に話し合いながら鑑賞を深めました。
この活動は今年で4年目となりました。今年は例年に比べて、作品の造形的な特徴や印象を根拠にしながら自分の考えを説明しようとする生徒が多かった印象を受けました。3年連続で参加しているという生徒さんはファシリテーターとしての視点も培われてきているようで、「自分ならこの絵を対話鑑賞してみたい」と先生に提案する場面も見られました。学校でも作品について意見交換する活動を行っているとのことで、こうした経験の積み重ねによって鑑賞の力が着実に身についていることを実感する機会となりました。
(当館特定研究員 松山沙樹)
<生徒の感想から>
・ 机の上に果物などが置かれている作品について、最初、特に何とも思わなかったこともじっと見ていると思いつくし、他の人が言ったことで、自分は全く気が付かなかったことがあり、楽しいなあと思いました。魚のお腹がぷっくりしているのが、「身が詰まっている感じでいいな」と思いました。なぜ、作家さんが机上のものを何度も何度も描いたのか、考えるのも楽しいし違った視点で自由に鑑賞できてよかったです。
・ 対話型鑑賞をして、学芸員さんの仕事に興味を持ち、ちゃんと調べてみようと思いました。芸術には、色々な形があって、美しさだけではないんだと改めて知ることができてよかったと思います。単純に絵に描かれていて、その描かれているものがどういった意味を持つのかを考える楽しさや、自分以外の人の話を聞いたりして違った視点を持つことができました。