京都国立近代美術館京都国立近代美術館 京都国立近代美術館 京都国立近代美術館

MENU
Scroll

開館状況  ─  

コレクション展平成28年度 第4回コレクション展(計171点)

コレクション・ギャラリー

平成28年度 第4回コレクション展(計171点)

会期

2016(平成28)年9月22日(木・祝)~ 12月11日(日)

前期:9月22日(木・祝)~ 10月30日(日)
後期:11月1日(火)~ 12月11日(日)

概説

 今回のコレクション展は、3階企画展会場で開催する、「メアリー・カサット展」に関連する展示を数多く行っています。

 フィラデルフィアに生まれたメアリー・カサットは、パリで印象派の画家として活躍すると同時に、母国アメリカでは印象派の紹介者としても大きな役割を果たしました。コレクション・ギャラリー入口すぐの場所では、カサットと同じ印象派展に参加した作家たちの作品を展示しています。これらの作品に見られる日常の生活や風景への眼差しや、光のうつろいを躍動感ある筆致で描き留める手法などから、カサットが彼らとの交流を通していかに多くのものを学んだかがわかります。

 日本画のコーナーでは、特集1として梶原緋佐子の作品を紹介しています。梶原緋佐子は、1896(明治29)年に京都祇園の造り酒屋に生まれ、京都府立第二高等女学校(現府立朱雀高等学校)で教えていた千種掃雲の勧めによって、画家を志します。菊池契月に入門した緋佐子は、まずは社会の下層で生きる女性を描いた《矢場》などで頭角を現し、戦後は《カメラ》のように契月の清廉な画風を受け継いだ作品を多く手がけました。今回の展示では、緋佐子の初期から晩年の代表作《残波岬》までにいたる作品と、彼女を画家へと導いた千種掃雲の作品を併せてご覧頂きます。さらに「秋の日本画」と題して、前期展示では木島桜谷《行路難》や神阪松濤《暮れゆく街道》、後期展示では池田遙邨《家を持たない秋がふかうなった 山頭火》ほかを展示します。深まる秋の風情を、作品を通してお楽しみ下さい。

梶原緋佐子《残波岬》1978年
梶原緋佐子《残波岬》1978年

 写真・版画のコーナーでは、「“291”と近代美術―大西洋の向こう岸を夢みて」と題した展示を行っています。カサットは印象派の画家そしてその作品のプロモーターでしたが、印象派以降のフランス近代美術の紹介に大きな役割を果たしたのが、写真家アルフレッド・スティーグリッツです。彼は、自らの作品と雑誌『カメラ・ワーク』の刊行によって、写真という新しいメディアによる作品の発展に寄与したことで知られますが、加えて、ニューヨークの五番街291番地に画廊をオープンし、ピカソやマティスなど当時のパリで最も先進的であった作家と同時代のアメリカ人作家の作品の両方を紹介することで、アメリカにおける前衛芸術の展開をサポートしました。第二次世界大戦前の世界における美術の中心であったパリと戦後その地位を奪取するニューヨーク、大西洋を挟んだふたつの地域の相互交流を、作品と資料でご覧いただきます。

アルフレッド・スティーグリッツ《飛行船》1910年
アルフレッド・スティーグリッツ
《飛行船》1910年

 工芸のコーナーでは、「伝統のわざ:人間国宝特集」と「針仕事(ニードルワーク)の向こうへ」と題した二つの展示を行っています。「人間国宝」という言葉は、重要無形文化財を保持すると認定された人物を指す通称で、無形文化財とは芸能や工芸技術など無形の「わざ」そのものを指します。つまり、人間国宝とは、その「わざ」を高度に体得して創作活動を行う人に他なりません。認定されている「わざ」の種類は多く、陶芸だけでも「色絵磁器」(富本憲吉ほか)や「練上手(ねりあげで)」(松井康成)など21種類におよびます。現在工芸技術の分野で認定されている重要無形文化財保持者は約170名。そのうち19名の「わざ」を当館コレクションでご覧下さい。また「針仕事(ニードルワーク)の向こうへ」では、カサット作品に手に針をもち刺繍に勤しむ女性がしばしば描かれていることに注目し、刺繍という技法または出来上がった刺繍がモティーフとなっている作品を集め、「針仕事(ニードルワーク)」がもつ多様な可能性とその特徴を探ります。

富本憲吉 《色絵更紗模様瓢形飾壺》1944年
富本憲吉 《色絵更紗模様瓢形飾壺》1944年

 二つ目の特集展示では「創る女たち」と題して、日本画や油彩画、陶芸そして染織といった異なる分野で活躍した、または現在も活躍中の女性作家たちの作品を紹介しています。特に、ステンレススティールワイヤーや釣り糸を手で織ったり編んだりしたところに紙を漉いた上野真知子とアニケン・アムンゼンによる《無題》、同じくステンレススティール線をよりを掛けて編み上げた、つまり綯(な)って作られた熊井恭子《草莽の風》は、「針仕事」同様、染織という分野の多層性や越境性を考える上で注目されます。また、田中敦子《’78 B》や菅野聖子《拡がりを持つ素粒子》は、隣接する「1970年以降の絵画」と題されたコーナーで紹介されている同時代の作品と併せてご鑑賞下さい。

主なテーマ

  • 特集:創る女たち
  • 印象派展の作家たち
  • 秋の日本画
  • 特集:梶原緋佐子
  • “291”と近代美術――大西洋の向こう岸を夢みて
  • 伝統のわざ:人間国宝特集
  • 針仕事(ニードルワーク)の向こうへ
  • 1970年代以降の絵画
  • 常設屋外彫刻

展示作品


このページの先頭へ