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展覧会特別講演会 「ベンヤミンとドイツ近代映画」

特別講演会 「ベンヤミンとドイツ近代映画」


  • 講師:仲正昌樹氏(金沢大学教授)
  • 日時:2011年8月19日(金)午後5時から6時30分まで
  • 会場:京都国立近代美術館1階講堂
  • 定員:100名
  • (聴講無料、当日開始時間の1時間前より受け付けにて整理券を配布します)

 ポストモダン的な表象文化論の先駆者である、20世紀ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンは、『複製技術時代の芸術作品』で、人間が知覚したものを機械的に「複製」する技術を応用したニュー・メディアの急速な発展によって、人間の知覚様式、そして「芸術」概念が大きく変容し始め、新たなステージに入りつつあることを示唆した。特に、人間の無意識を可視化することのできる映画が芸術の領域に参入し、資本と芸術の境界線を流動化させたことは大きかった。大衆は、太古から人間を呪縛してきたアウラから、そして資本主義・機械文明が生み出した疎外状況から、最終的に解放される可能性をベンヤミンは予感した。儀礼価値から展示価値への転換である。しかしながら、現実の歴史においては、そうした彼の期待を反証するかのように、ナチス政権が、映画などの複製技術を応用した芸術作品に、新たな”アウラ”を付与し、大衆動員のために巧みに利用した。ベンヤミン自身、ファシズムによる「政治の美学化」に対する懸念も表明したが、明確な対抗戦略は打ち出せなかった。戦後、ベンヤミンの友人であったジークフリート・クラカウアーは、映画が、大衆が潜在的に抱いている権威主義的願望を具象化させたことを、ワイマールの映画史に即して指摘した。『複製技術時代の芸術作品』を起点として、[映画—知覚—メディア—無意識—芸術—集団]の相互関係について考察する。

仲正昌樹

 金沢大学法学類教授。1963年広島生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了。西洋古典、現代ドイツ思想、社会哲学、基礎法学、医療問題から、テレビ、映画、アニメ、松本清張まで幅広く真剣に議論を展開している。主な著作に、『日本とドイツ 二つの全体主義「戦前思想」を書く』(光文社、2006)、『集中講義!日本の現代思想——ポストモダンとは何だったのか』(日本放送出版協会、2006)、『知識だけあるバカになるな! 何も信じられない世界で生き抜く方法』(大和書房、2008)、『ポストモダンの正義論 「右翼/左翼」の衰退とこれから』(筑摩書房、2010)、『ヴァルター・ベンヤミン 「危機」の時代の思想家を読む』(作品社、2011)など多数。



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