日本の印象派

期間
平成20年5月13日(火)〜 7月21日(月・祝)

展示作品
日本の印象派 展示目録


3階企画展示場で5月20日(火)から「ルノワール+ルノワール展」を開催するのに連動して、コレクション・ギャラリーでは、当館所蔵の洋画作品(油彩画及び水彩画)を中心に、わが国の「印象派」受容について紹介いたします。
よく知られているように「印象主義」(印象派)は、19世紀の後半にフランスに登場した近代のもっとも重要な絵画運動で、欧米をはじめわが国にも強い影響を与えました。モネの《印象―日の出》(1872年)にその名が由来し、写実主義を受け継ぎながらも、風景や人物(ルノワールはこの人物表現において「印象派」を代表する作家です)を中心に、戸外での制作を重視して「外光派」とも呼ばれています。特にわが国では、「明治洋画の新風」として、黒田清輝ら白馬会の画家たちによってこの表現が広められ、わが国のアカデミズムをも形成してゆくほどの大きな影響力をもちました。
残念ながら当館には、黒田清輝の作品は所蔵されていませんが、「白馬会」に関係した岡田三郎助の《セーヌ上流》(1900年、寄託作品)や、小品ながらも赤松麟作の《婦人像》(1913年)、藤島武二の《花籠》(1913年)などに、「白馬会」風の印象主義の痕跡が示されています。
また、当館は西日本に位置する国立近代美術館という側面から、京都を中心とする洋画作品の収蔵の充実につとめてきましたが、その京都・洋画の指導者であった浅井 忠の《編みもの》(1901年)には、印象派特有の柔らかな「光」の描写を読み取ることができます。さらに興味深いのは、この浅井を師と仰いだ門下生たちの描いた水彩画にも、印象派の雰囲気に満ちた数多くの秀作が残されていることでしょう。そして、浅井の主宰する聖護院洋画研究所に学んだ梅原龍三郎は、フランス留学中にルノワールに師事し、その成果が示された《半裸体》(1913年)の作品を完成させました。
今回、この小企画で紹介している「日本の印象派」と呼ぶべき作品群には、すべて「光」の微妙な表現効果が生かされています。また、フランスでは、光と色彩についての科学的な分析によって「点描」という技法が開発され、「新印象派」という動向が生まれました。わが国で、この「点描」を代表する画家として、ベルギーに学んだ太田喜二郎の名は忘れられません。太田は帰国後、日本の風土を「点描」の大作にまとめようと試みました。
さらに「後期印象派」(Post-Impressionism)と呼ばれる画家たち、すなわちセザンヌやゴッホ、ゴーギャンらは、より革新的な絵画空間の創造へと向かいました。わが国でも、京都の黒田重太郎がフランスに留学して、こうした美術運動の影響を受けるとともに、ピカソなどのキュビズムの手法にも感化を受けました。近年の研究では、ルドンをも含めて、「印象派」を20世紀初頭の「抽象絵画」誕生にいたる絵画運動の源流としてとらえ、改めて近代絵画史上の重要な位置づけが与えられているのです。そしてわが国では、坂本繁二郎に典型的に示されているように、まさに「日本の印象派」というべき独自の美意識をもつ表現が生み出されたことも、今回の小企画から確認いただけるものと思います。
(主任研究員・山野英嗣)


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