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コレクション展平成18年度 第13回・19年度 第1回コレクション・ギャラリー特集展示
  「現代ジュエリーの諸相―metaphor in mobility」

コレクション・ギャラリー

平成18年度 第13回・19年度 第1回コレクション・ギャラリー特集展示
  「現代ジュエリーの諸相―metaphor in mobility」

期間
平成19年2月27日(火)~5月6日(日)
     平成18年度 第13回コレクション・ギャラリー
     平成19年度 第 1回コレクション・ギャラリー
     ※展示作品はどちらかの展示目録をご覧ください。

会場風景写真

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コレクション・ギャラリー特集展示 「現代ジュエリーの諸相―metaphor in mobility」 2007/4/3 会場の様子
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解説

当館所蔵のジュエリー作品の多くは、1984年に開催した展覧会「今日のジュエリー 世界の動向」を機に収蔵されたものであり、1980年代前半に制作された作品が中心となっています。

1980年代前半はジュエリーの世界に新たな素材が紹介され、技術革新が次々と持ち込まれた時代であり、それぞれの作家はジュエリーの意味の再検証と可能性を追求しました。また一部のジュエリーの実践はファッションとの境界領域において試みられ、伝統的なジュエリーの枠組みを超えた挑戦的な試みが行われました。これらのジュエリー作品は身体性についてきわめて自覚的であり、ジュエリーは身体を「装飾するもの」であると同時に、身体を「拡張するもの」、個人の占有空間を明示することにより身体の「防御」をも暗示し得るということを私たちに示してくれます。さらにジュエリーは、伝統的には富の顕示であり、それを身につける者の社会的階級や政治的立場を示す移動可能な象徴としても機能します。

この特集展示では造形美だけではなく、ジュエリーが持つこうした象徴的機能に焦点を当て、ジャンルにこだわらず、1980年代のジュエリー作家たちが挑戦した発展的な可能性を抽出し、現代の美術全体が取り組んでいる問題とも共鳴する作品を中心に展示しています。

今回は京都服飾文化研究財団のご協力を得て、津村耕佑の《ファイナル・ホーム》を出品しています。この作品は服としての機能を持つのは当然ですが、全身に付けられた多数のポケットに新聞紙を入れることで断熱保温効果を生み出し、路上生活者や難民にとってはシェルター(避難所)、最小限の家として機能します。一方で富裕な市民がこの服を着用することは、現場から安全な距離を保ちつつ、社会問題への自らの関心を誇示する(皮肉な)メタファーとなります。市販のチョコレートの空箱にピンを付けただけのオットー・クンツリの《スイスの黄金》と併せて考えると、現代ジュエリーの挑戦の重要な部分が、「移動可能なメタファー」として個人と社会との関係性に注目していたことがわかります。

(研究員・中尾優衣)


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