京都国立近代美術館京都国立近代美術館 京都国立近代美術館 京都国立近代美術館

MENU
Scroll

開館状況  ─  

お知らせEvents & News

バーバラ・ホルプ「不確かな箱の中で——美術館と都市空間の間の芸術戦略」

お知らせ

Barbara Holub “In Case of Doubt—Artistic Strategies between Art Institution and Urban Space”
バーバラ・ホルプ「不確かな箱の中で——美術館と都市空間の間の芸術戦略」


2008年1月31日(木)午後5時30分〜7時30分
京都国立近代美術館1階講堂  聴講無料、定員100名
講演者: バーバラ・ホルプ氏 (ウィーン分離派館館長、アーティスト)
※英語。逐次通訳あり

19世紀末クリムトら当時最先端の芸術家たちが集ったウィーン分離派の活動拠点として、ヨーゼフ・マリア・オルブリヒによって設計されたウィーン分離派館(Secession)は、現在ウィーンのランドマークのひとつとなっているとともに、その内部は現代のアーティストたちの活動に利用されています。昨年末までその分離派館館長を務めていたバーバラ・ホルプは、自身もアーティストとして作品を発表すると同時に、パウル・ラヤコビッチ(Paul Rajakovics)、ベルント・ヴレイ(Bernd Vlay)とユニット「トランスパラディーソ(transparadiso)」を結成し様々なプロジェクトを行っています。本講演会では、彼女が常に関心を抱いている芸術と都市の関わりというテーマを採り上げ、特に分離派館のようなアートの公的機関と都市空間や都市の発展が、芸術を媒介としてどのように戦略的に関わり合うのかを、オーストリアならびに各国の事例を挙げて紹介します。

バーバラ・ホルプ(Barbara Holub) 略歴

1959 シュトゥットガルト(ドイツ)生まれ
1978–87 シュトゥットガルト工科大学で建築を学ぶ
1991–95 「シュタットラウム・レミーゼ(Stadtraum Remise)」(ウィーン)を共同で設立(旧市電車庫を利用したカルチュラル・スペース)
1998– ウィーン分離派館メンバー
1999– パウル・ラヤコビッチとともに、都市生活と建築そして美術を包括する都市計画を目指して「トランスパラディーソ」を設立
2003— 雑誌『Derive』(ウィーン)編集メンバー
2004— パウル・ラヤコヴィッチ、ベルント・ヴレイとともに「akkut」を設立
2005–07 低地オーストリア、パブリック・アート協議会メンバー
2006–07 ウィーン分離派館館長

関連リンク

バーバラ・ホルプ+トランスパラディーソ  ※ドイツ語・英語のみ
ウィーン分離派館  ※ドイツ語・英語のみ

開催報告

レクチャーの様子 前ウィーン分離派館館長であり、アーティストでもあるバーバラ・ホルプ氏による講演会が、2008年1月31日(木)の閉館後、17:30から京都国立近代美術館1階講堂で開催されました。

公共空間としてのウィーン分離派館が続けてきた都市への挑戦的な関わりを起点に、彼女の作家としての制作発表と、オーストリアおよび各国の都市におけるユニット「トランスパラディーソ(transparadiso)」のプロジェクトが、映像と共に具体的に紹介されました。それは多くの場合、都市の空き地や廃墟にアートを投企し、介入する手法をとります。個々の取り組みは、一貫してアートがいかに都市空間とコミュニティに関与し得るかというテーマで展開され、彼女とユニットのメンバーとが、アートとプロジェクトに込める構想が次第に浮き彫りになりました。

レクチャーの様子 彼らが活動するウィーンや各国の都市の多くは近現代の歴史を色濃く残しており、プロジェクトは、これらの都市における既存のモニュメンタルなアイデンティティを解体、あるいは喪失したアイデンティティを新たな形で回復させること企図しています。彼らの、アートと建築による都市への介入は、参加者の主体的関与により成立すると可能性の「場」の創出であり、さまざまな立場の市民が共存し得る公共空間の再定義のように思えます。

講演後の質疑応答では会場から鋭い指摘や率直な質問がなされ、ホルプ氏との間で活発な議論が展開されました。講演と討論を通じ、参加者は各々の立場から、社会的なアートやプロジェクトについて、あらためて深く考察する有意義な機会を持つことが出来ました。


このページの先頭へ