展覧会身体の夢 ファッションOR見えないコルセット
身体の夢 ファッションOR見えないコルセット
当館は1980年の「浪漫衣装展」を皮切りに、京都服飾文化研究財団と協力し「華麗な革命展」(1989)、「モードのジャポニスム展」(1994)などの展覧会を開催し、日本の服飾文化の啓蒙と、ファションという分野を美術館活動の中に位置付ける努力を続けてきた。今回の展覧会は従来の啓蒙的立場から一歩踏み出し、20世紀ファッションを「身体」という視座で読み直すことで、ファッションをより広範な文化状況の中で考えようとする、きわめて挑戦的な内容となった。
20世紀初頭に実現したコルセットからの決別は、女性ファッションに革新と無限の造形的自由をもたらし、同時に、女性の社会参加や性的平等の実現に向けての大きな契機になった。一方で身体の自由を謳歌するファッションは、身体に最先端のファッションを着こなすことを強い、被服の身体に対する優越という矛盾する状況を生みだした。20世紀ファッションは、女性の身体意識の変化(あるいはそれを強いた社会の変化)とともに展開してきたと言える。20世紀ファッションが内包するこうした矛盾を、先鋭的な現代のファッション・デザイナーや美術家の一部は、ファッションは華やかな被服造形であると同時に女性を社会の枠組の中に拘束する記号(見えないコルセット)であると分析し、この両義性の中に21世紀ファッションの可能性と創造的部分を見いだしている。
京都服飾文化研究財団の所蔵品約120点と内外の美術家の作品約70点で構成された本展は、21世紀初頭に大きく変貌しようとする「身体意識」を機軸にファッションと身体との新しい関係を模索するものとして、広範囲な人々の関心を集めた。特に、美術館前庭に設置され、季節の変化と自然の風化作用により変化し崩壊していくマルタン・マルジェラの美しい野外インスタレーションは、明日のファッションを暗示する象徴的なものであった。
- 会期
- 4月6日―6月6日(55日間)
- 入場者数
- 40,079人(1日平均729人)
- 共催
- 京都服飾文化研究財団
- 出品作品数
- 194点
- カタログ
- 『身体の夢 ファッションOR見えないコルセット』/30.5×20.5cm/209頁
監修:河本信治(京都国立近代美術館)、深井晃子、周防珠実、新居理絵、聲高順子、谷川真美(京都服飾文化研究財団)/編集:京都国立近代美術館、京都服飾文化研究財団、株式会社福本事務所/デザイン:西岡勉/発行:京都服飾文化研究財団
所収論文:「序論」河本信治、「身体の夢―20世紀の身体イメージとファッション」深井晃子、「身体の夢/夢の身体」渡邊守章、「仮想身体(ヴァーチャル・ボディ)の着替え方 デヴィッド・リンチ『ロスト・ハイウェイ』の可能性を探る」遠藤徹 - 巡回先
- 東京都現代美術館
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