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展覧会土谷武展 しなやかな造形、生成するかたち

土谷武展 しなやかな造形、生成するかたち

 本展は、鉄や石の素材を用い、構成的かつ有機的な立体作品の制作で知られる彫刻家・土谷武(1926年京都生)の40年間の活動を、87点の代表作で回顧したものである。
 時代の動向から一定の距離を保ちつつ独自の思索による作品展開を重ねてきた土谷は、疑いもなく、戦後日本の現代彫刻発展の一翼を担ってきた彫刻家であり、サンパウロ・ビエンナーレ展(1983年)への出品、芸術選奨文部大臣賞の受賞(1994年)など、その業績に対する評価は高い。
 戦後まもなく東京美術学校彫刻科を卒業、ロダンに深く傾倒した具象彫刻を制作していた土谷は、1961年のフランス留学を機に大きな転換をむかえる。これ以降の土谷は、伝統的な彫刻の造形言語から離れ、空間の構造化、すなわち形態を語るのではなく「かたち」が生成する空間を視覚化する方向へと展開する。こうした近代彫刻の造形性という呪縛から離れようとする意志、作者自身が「彫刻の余白」と呼ぶ領域へのアプローチにこそ、土谷彫刻の独自性があると言えよう。
 常套的な「具象」「抽象」の区別を無効にするほど豊かな表情と空間の暗示に満ちた「かたち」が集められた本展は、一人の彫刻家の回顧展に止まらず、「彫刻とは何か」という本質的な問題をわれわれに静かに問いかける濃密な展示となった。

会期
12月8日―1999年1月17日(30日間)
入場者数
3,780人(1日平均126人)
共催
東京国立近代美術館
出品作品数
87点
カタログ
『土谷武展』/30.0×22.3cm/149頁
編集:市川政憲、髙橋幸次、蔵屋美香(東京国立近代美術館)/デザイン:桑畑吉伸/発行:東京国立近代美術館、茨城県近代美術館
所収論文:「かたちのいのち/いのちのかたち―彫刻家土谷武の造形精神」髙橋幸次、「土谷武 あるいは自由な心―最近作を中心に」荒木扶佐子
巡回先
東京国立近代美術館、茨城県近代美術館

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