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展覧会村岡三郎展 熱の彫刻―物質と生命の根源を求めて

村岡三郎展 熱の彫刻―物質と生命の根源を求めて

 本展は、関西を中心に活動し海外でも高い評価を得て注目される彫刻家、村岡三郎(1928生)の近作展で、80年代半ば以降の最新作39点を紹介した。
 村岡は60年代から、鉄を素材にしてきたが、視覚的な純粋造形を目指したものでもモニュメント彫刻でもない、独自の問題意識から立体物を創作してさた。言語のまやかしに疑念を抱き、言語の網目からこぼれ落ちる、あるいはその外部にある宏大な世界に眼を向けることが村岡の創作の原点となっている。伝統的な意味での彫刻とは違って、視覚よりも触覚、喚覚、聴覚や身体のバランス感覚に強く訴えかける形態、量感、素材感、様々な仕掛けを特徴とし、これらによって、日常生活では背後に退いて意識されない、目に見えない文化的諸制度、さらには、水、塩、熱、音、酸素など、私たちの生存にとって不可欠の物質的条件を造形化する。
 出品作の中でも《送られた熱(体温)》は、鉄壁の前に銅製シリンダーを設置したもので、作者が自宅で毎日計測した体温の数値が電話回線で送信され、取り付けられたヒーターが同じ温度にシリンダーを過熱する仕掛けとなっている。鑑賞者は作者の体温としてシリンダーの温度を触知することができ、また毎日の体温の変化は会期中に開設されたホーム・ページに記録表示された。触知(熱)とインターネット(数値)による作者と不特定多数のコミュニケーションを鑑賞行為と見做した本作品は、これまでにない試みであった。
 インターネットという新たなメディアに加えて、触覚、嗅覚、聴覚を導入した本展は、これまでの美術展の常識(これも-つの文化的制度)を破るもので、批評家のみならず若い作家たちに大きな刺激を与えたものと思われる。

会期
1月27日―3月1日(30日間)
入場者数
5,214人(1日平均174人)
共催
東京国立近代美術館
出品作品数
33点
カタログ
『村岡三郎展』/33.0×22.1cm/96頁
編集:本江邦夫、松本透、中林和雄(東京国立近代美術館)/デザイン:田中久子/発行:東京国立近代美術館
所収論文:「村岡三郎1983-1997―塩・熱・酸素」松本透、「村岡三郎あるいは物質の沈黙」本江邦夫
巡回先
東京国立近代美術館

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