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展覧会ドイツ現代写真展[遠・近]―ベルント&ヒラ・ベッヒャーとその弟子たち―

ドイツ現代写真展[遠・近]―ベルント&ヒラ・ベッヒャーとその弟子たち―

 ベルント&ヒラ・ベッヒヤー夫妻(1931生/1934生)は、給水塔や溶鉱炉、ガスタンクのような匿名的な近代的産業建造物を、ある一定の視点から、薄曇りの空や爽雑物の排除といった厳密な条件と手法に則って撮影した作品で知られている。さらに、彼らは首尾一貫して体系的に撮影されたそれらの写真をタイポロジー(Typologie)という手法によってグリッド(格子)型に組み合わすことで、写真の持つ新たな批評の地平を切り開いた。「私たちは、古き産業建造物から聖遺物を作るつもりはなく、様々な現象形態の、あまり隙間のない連鎖を作り出したいのです」、という彼らの精神は、デュッセルドルフ美術アカデミー写真部門でベッヒャー夫妻のもとに学んだ数多くの優秀な弟子たち受け継がれ、戦後ドイツさらには世界の写真の動向の重要な一系譜を形成している。
 今回の展覧会では、その弟子たちのなかから、既に名を知られた、公共建造物の室内空間を写すカンディダ・ヘーファーや、都市の街路や家族の肖像を撮るトーマス・シュトルート、ドイツ人の住居空間の日常的断片を切り取るトーマス・ルフらに加えて、アンドレア・グルスキー、アクセル・ヒュッテ、シモーヌ・ニーヴェック、ペトラ・ヴンダリッヒ、イェルク・ザッセといった作家たちの作品が出品された。そこにベッヒャー夫妻の作品を加えた76点で構成された本展は、当館において戦後ドイツの写真の動向を包括的に紹介する最初の場となった。またさらに、会場にそれぞれの作家の作品がタイポロジカルに並べられることによって、各々の作家の視点とともに、観る者は全体を見ようと対象(被写体・写真)から距離をとったり(Distanz・遠)、細部を捉えようと対象に近づいたり(Nähe・近)する。そしてその揺動の中から、自ずと芸術における写真とは、社会における記録あるいは芸術としての写真とは、というような様々な問題提起がなされた展覧会でもあった。
 本展は、ベルリンにあるifa(ドイツ対外文化交流研究所)所蔵作品による世界巡回展であり、日本においては京都展に先立ち、一部構成を変えた形で、1996年11月24日から1997年1月26日まで川崎市民ミュージアム、2月9日から3月23日まで栃木県立美術館においても開催された。

会期
4月8日―5月11日(30日間)
入場者数
31,265人(1日平均1,0422人)
共催
関西ドイツ文化センター
出品点数
68点
カタログ
『ドイツ現代写真展[遠・近]』/(邦訳差込)29.0×20.5cm/15頁
編集:川崎市市民ミュージアム/発行:川崎市市民ミュージアム、栃木県立美術館、京都国立近代美術館
所収論文:「遠・近」ヴルフ・ヘルツォーゲンラート

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