教育普及第19回 京都市子ども美術館鑑賞教室 実施報告
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第19回 京都市子ども美術館鑑賞教室 実施報告
- 日時
- 2017年10月21日(土)午前9時~11時30分
- 会場
- 京都国立近代美術館
- 参加人数
- 小学3年生~6年生 55名
今年も、京都市図画工作教育研究会の主催による「子ども美術館鑑賞教室」を開催しました。今回は図工研の先生方の柔軟なアイデアによって、展示室内の作品だけでなく屋外彫刻や美術館建築、展示空間など、美術館にある様々な「ほんもの」を活用した鑑賞教室となりました。
まずは講堂に集合し、テーブルごとに国立美術館アートカード・セットを用いて自己紹介。気になったカードを見せながら選んだ理由を発表し合います。初対面ということもあり、まだまだ硬い表情の子どもたち。鑑賞マナーについてのお話を聞いたら、さっそく4つのグループに分かれて活動が始まります。
昨年は、展示室の中で、グループごとに「立ち止まって鑑賞」「歩いて鑑賞」を行いましたが、今年は、各グループのファシリテーターがそれぞれ異なる内容のグループワークを組み立てました。当日は、全く異なる活動が同時進行しましたが、その中でも全体に共通する学びのポイントがあったように感じましたので、以下に紹介したいと思います。
<視点を変えてみる>
あるグループは、外に出て美術館横の平安神宮の鳥居を下から鑑賞した後、4階ロビーから外の風景を見渡し、「下からは見えないもの」と「上から見て初めて気付いたこと」を共有していました。別のグループでは、リチャード・ロング《滝の線》を、遠くから近くから、さらには寝転がって鑑賞し、能動的に視点を変えながら作品の見え方の違いを体験しました。
<さまざまな見方にふれる>
コレクション・ギャラリーの中では、ファシリテーターを中心に、意見交換しながら作品の見方を深める”対話による鑑賞”が行われていました。扱っていたのは、千種早雲《浪華の春(港の風景》、鹿子木孟郎《書斎における平瀬介翁》、向井順吉《K氏の像》など。自分とは違う意見にふれ、みんなで話している間に作品の見え方がどんどん変化する楽しさを味わいました。
<レディメイドの「影」を使って>
また、「キュレトリアル・スタディズ12:泉/Fountain 1917-2017」の展示空間を活用するグループも。ここでは、マルセル・デュシャンのレディメイドが天井から吊り下げられ、作品に照明が当たることで壁や床に影が現れていました。(この展示は10月22日で終了しました。)子どもたちは、作品の影と自分の影とを組み合わせて新しい形を作ることに挑戦。ひとりひとりが、自分なりのやり方で「展示空間の中に入り込む」ことで、難解だと思われがちな現代美術も身近に感じるきっかけになったのではないでしょうか。
この鑑賞教室には例年、「ほんものとの出合い」というサブテーマがついています。今回の活動をサポートする中で改めて気づかされたのは、美術館には様々な「ほんもの」があること、そしてこうした要素と利用者との間には、あらゆる「出合い」の形が創り出せるということです。これからも利用者のニーズに合わせた学習支援を行いながら、美術館活用の可能性をひらいていきたいと思います。
(当館特定研究員 松山沙樹)
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