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展覧会痕跡―戦後美術における身体と思考

痕跡―戦後美術における身体と思考

 本展覧会は日本と欧米の戦後美術を、作家の国籍や運動、作品のジャンルといった枠組にとらわれることなく、「痕跡」という独自の観点から検証する試みである。従来の美術においてイメージがなにものかの似姿というかたちをとったのに対して、本展覧会ではなにごとかの結果としてのイメージに「痕跡」という名を与え、「表面」「行為」「身体」「物質」「破壊」「転写」「時間」「思考」という8つのセクションに分けて紹介した。
 ジャクソン・ポロックが絵画の表面を切り抜いた痕跡、篠原有司男の「ボクシング・ペインティング」、イヴ・クラインが裸の女性を絵筆にして描いた「人体測定」、カンヴァスへの放尿の跡として提示されるアンディ・ウォーホルのビス・ペインティング(小便絵画)さらにはロバート・ラウシェンバーグとジョン・ケージが何枚もの紙を貼り合せて記録した自動車の轍の跡、村上三郎によって破られた紙のスクリーン、さらにはソル・ルウィットのウォール・ドローイング。これらの多様きわまりない作品を痕跡という観点から検証する時、明らかになるのは大文字の美術史、モダニズム美術が抑圧してきた現代美術のもう一つの系譜である。身体や破壊、転写や物質といったこれまで美術史の中で抑圧されてきた主題がテーマとして浮かび上がる点はこのような問題を反映しているといえるだろう。同じ理由によってこの展覧会はフェミニズムやイコノクラスムといった現在、美術史学において注目されている問題と切り結ぶものであった。
 展覧会には日本、アメリカ、ヨーロッパのおよそ60人、120点の作品を紹介し、ウィーン・アクショニズムやアナ・メンディエッタあるいは九州派といったこれまでほとんどまとまって紹介されたことのない集団や作家の作品も出品された。
 会期中、2回にわたる講演会と広く美術史学全般と痕跡性の問題を論じるシンポジウムを開催した。

会期
11月9日―12月19日(36日間)
入場者数
9,590人(1日平均266人)
共催
東京国立近代美術館
出品作品数
125点
カタログ
『痕跡―戦後美術における身体と思考』/29.6×21.3cm/351頁
編集:尾﨑信一郎(京都国立近代美術館)/デザイン:宮谷一款(株式会社エヌ・シー・ピー)/発行:京都国立近代美術館
所収論文:「痕跡―苛酷なる現実としての美術」尾﨑信一郎、「イメージ―痕跡」ジョルジュ・ディディ=ユベルマン、「指標と似せもの」リチャード・シフ、「超過とプロセス―ウィーン・アクショニズム」フーベルト・クロッカー
巡回先
東京国立近代美術館

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