展覧会ムンク版画展
ムンク版画展
本展覧会は、ワシントンD.C.のエプスティーン・ファミリー・コレクションが所蔵する300余点ものムンク版画作品から、選りすぐりの127点によって構成された。
《叫び》の画家としてその名を知られるムンクは、前世紀転換期に当時の人々が新しい世紀を前に漠然と抱いていた生の不安や死の恐怖、愛の苦悩などの感情をテーマに、精力的な制作活動を行った。《骸骨の腕の自画像》《病める子》《マドンナ》などの著名な作品群は、ムンクが人間の生と死について、周囲の環境や対人関係を凝視しいかに自問したかを、明らかにしている。さらに同じテーマで、技法や色彩・素材を変えていくつものヴァージョンが制作された版画作品は、油彩画以上に、ムンク自身の芸術家・人間としての試行錯誤を反映していると言えるだろう。また、本コレクションを創りあげたエプスティーン夫妻は、1962年から一貫してムンクの版画を収集しているが、1950年の全米巡回回顧展までアメリカではムンクがほとんど知られていなかったことを考えると、夫妻の熱意の大きさが伺える。ムンクの全生涯を網羅するこのコレクションは、まさに夫妻の人生の軌跡を投影するものなのである。そのため、本展は、ムンク芸術の核心を伝えるとともにアメリカにおけるムンクの受容という問題にも関心を向ける絶好の機会となった。
本展は、ひろしま美術館、福岡三越ギャラリー、千葉そごう美術館に巡回し好評を得た。なお、エプスティーン・ファミリー・コレクションは、近い将来ワシントンのナショナル・ギャラリーに寄贈されることが決定している。
- 会期
- 2月2日―3月22日(43日間)
- 入場者数
- 92,328人(1日平均2,147人)
- 共催
- NHK京都放送局、NHKきんきメディアプラン
- 出品作品数
- 127点
- カタログ
- 『ムンク版画展』/30.0×22.0cm/144頁
監修:阿部信雄/編集:京都国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション/デザイン:桑畑吉伸/発行:NHK、NHKプロモーション
所収論文:「序文」サラ・G・エプスティーン、「ムンク、その生涯と時代」阿部信雄、「アメリカとムンク―モダン・アート受容の一断面」池田祐子、「版画技法解説」八重樫春樹、「19世紀版画事情とムンクの版画―技法を中心に」八重樫春樹 - 巡回先
- ひろしま美術館、福岡三越「三越ギャラリー」、千葉そごう美術館
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