展覧会ゴッホと日本展
ゴッホと日本展
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本展は、オランダ人画家フインセント・ファン・ゴッホと日本の関係に焦点を当てた企画である。ゴッホは、今日、ポスト印象派のひとりでありフオーヴイスムの先駆者のひとりとして、西洋美術史の中で揺るぎない位置を占め、我が国で最も人気の高い画家として知られている。ゴッホが画家として活躍した1880年代のフランスは、ジャポニスムの盛んな時代で、ゴッホが熱心に浮世絵を収集したり当時出版されていた雑誌等で日本に関する情報を集めたことは一般に知られている。さらに、ゴッホが日本美術を参照したこともしばしば指摘されてきた。
本展は、この「ゴッホと日本の関係」という問題を次の二つの方法により紹介し検証した。第一に、ゴッホが所蔵していた浮世絵約50点と日本美術や日本についてのイメージ形成のためにゴッホが参照したと思われる雑誌等の遺品をゴッホの油彩画やデッサンとともに展示した。第二に、日本及び日本美術をめぐってゴッホと関心を共有していた同時代作家達の作品を出品した。ゴッホは、また、主として弟テオにあてた書簡で、日本・日本人・日本美術について多くのことを語っており、ゴッホの言葉も作品と関連づけながらパネルで表示し、第二の方法を補足するために、ゴッホの生きたジャポニズムという時代環境を説明する年表パネルを作成し会場に設置した。
こうして、ゴッホが日本美術に関心を示し実践の中でこれを吸収した事実、ゴッホのジャポニスムが視覚的・造形的問題から思想的問題に至るまで幅広いものであった事実を紹介した。また、ゴッホの日本への関心が当時としては決して珍しいものではなく、ジャポニスムという同時代の大きな流れの中から生まれたものであり、思想的な問題へと大きく踏みこんでいる点にゴッホのジャポニスムの大きな特長があることなどを紹介した。
本展は、しかし、このような歴史的事実として既に認められている事柄を紹介するだけにとどまるものではない。展示は、ゴッホの作品とゴッホが参照したりモティーフとして借用したゴッホの浮世絵、および造形的に類似を見せる浮世絵を視覚的に比較できるように構成された。比較展示を通して、ゴッホが単なるジャポニザン(日本・日本美術愛好家)として日本美術を模倣するだけに終わったのではなく、自身の芸術形成に際して極めて創造的に日本美術を参照し吸収していったことも具体的に証明しようと試みた。これが、本展のもうひとつの狙いであった。以上の、歴史的事実の紹介作業さらには批判的な検証作業はカタログの論文や年表においてもなされた。同時に本展は、近代日本人がゴッホを発見して以来、ゴッホが日本人画家達によってどのような形で受容されてきたか、という問題意識も設定し、カタログの論文と資料でこれをとりあげ論じた。
この展覧会は、オランダのフインセント・ファン・ゴッホ美術館と同財団の全面的な協力のもとに、世田谷美術館との共同作業により実現したもので、全作品がゴッホ美術館より出品され世田谷美術館へ巡回した。
- 会期
- 2月18日~3月29日
- 入場者敷
- 総数133,575人(一日平均3,710人)
- 共催
- 世田谷美術館、国立フインセント・ファン・ゴッホ美術館、フインセントファン・ゴッホ財団、朝日放送、朝日新開杜、テレビ朝日
- 出品目録
作品名 | 制作年 | 材質・形状 | 寸法 |
---|---|---|---|
雪のアントウェルペンの街 | 1885 | 油彩、カンヴァス | 44×33.5 |
火のついた煙草をくわえた骸骨 | 1885/86 | 油彩、カンヴァス | 32×24.5 |
カフェ「ル・タンブーラン」に坐る女 | 1887 | 油彩、カンヴァス | 55.5×46.5 |
アニエール付近のセーヌ河沿いの道 | 1887 | 油彩、カンヴァス | 49×65.5 |
アブサンのグラスと水差し | 1887 | 油彩、カンヴァス | 46.5×33 |
三冊の小説 | 1887 | 油彩、カンヴァス | 31×48.5 |
セーヌ河のタランド・ジャツト橋 | 1887 | 油彩、カンヴァス | 32×40.5 |
麦わら帽子とパイプの自画像 | 1887 | 油彩、カンヴァス、厚紙 | 42×30 |
レストランの外側 | 1887 | 油彩、カンヴァス | 18.5×27 |
日本趣味:雨中の橋 | 1887 | 油彩、カンヴァス | 73×54 |
《パリの小説》の習作 | 1887~88 | 油彩、カンヴァス | 53×73.2 |
広重〈亀戸梅屋舗〉のトレース素描(花咲く梅の木) | 1887 | 鉛筆、ペン、インク、透明紙 | 38×25.8 |
「パリ・イリュストレ」誌表紙の「花魁」のトレース素描 | 1887 | 鉛筆、ペン、インク、透明紙 | 39×25 |
タンギー爺さんの肖像 | 1887~88 | 鉛筆、紙(レストラン「デュ・シヤレ」のメニューの裏) | 21.5×13.5 |
アルルの老婆 | 1888 | 油彩、カンヴァス | 58×42.5 |
花咲くアーモンドの木 | 1888 | 油彩、カンヴァス | 48.5×36 |
アイリスの咲くアルルの眺め | 1888 | 油彩、カンヴァス | 54×65 |
サント=マリー=ド=ラ=メールの海景 | 1888 | 油彩、カンヴァス | 51×64 |
裏返しの蟹 | 1889 | 油彩、カンヴァス | 38×46.5 |
柳のある野道 | 18銘 | 鉛筆、ペン、茶色のインク、紙 | 25.5×35 |
ひまわりの咲く道 | 1888 | 鉛筆、葦ペン、茶色のインク、紙 | 61×49 |
道端のアザミ | 1888 | 鉛筆、葦ペン、茶色のインク、紙 | 24.5×32 |
アルルのフインセント・ファン・ゴッホの寝室のスケッチ | 1888 | ペン、インク、方眼紙 | 13.3×21.1 |
どくろ蛾 | 1888 | 油彩、カンヴァス | 33.5×24.5 |
オリーヴの園 | 1889 | 油彩、カンヴァス | 73×92 |
花咲くアーモンドの枝 | 1890 | 油彩、カンヴァス | 73.5×92 |
バラとこがね虫 | 1890 | 油彩、カンヴァス | 33.5×24.5 |
サン=レミ、サン・ポール療養院の庭の蔦に絡まる木 | 1889 | 鉛筆、葺ペン、茶色のインク、紙 | 62.5×47 |
三匹の蝉の習作 | 1889 | ペン、インク、方眼紙 | 11.7×10.9 |
麦の穂 | 1890 | 油彩、カンヴァス | 64.5×48.5 |
つるにちそうの習作 | 1890 | 黒チョーク、ペン、インク、紙 | 47.5×40 |
作家名 | 作品名 | 材質・形状 | 制作年 |
---|---|---|---|
アドルフ・モンティセリ | 花瓶の花 | 油彩、カンヴァス | 制作年不詳 |
カミーユ・ピサロ | 市場の光景 | 油彩、カンヴァス、薄い和紙に木版 | 制作年不詳 |
アンリ・ソム | 扇を持つ女 | エッチング、紙 | 制作年不詳 |
アンリ・ゲラール | 1884年のジャポネズリー・カレンダー | エッチング、紙 | 1884 |
ポール・ゴーガン | 冬のパリ | 油彩、カンヴァス | 1894 |
オーギュスト・ルイ・ルペール | 雪のモンマルトル | 油彩、カンヴァス | 制作年不詳 |
クロード・エミール・シュフネッケル | 風景 | 油彩、カンヴァス | 1888 |
ジョン・ピーター・ラッセル | フィンセント・ファン・ゴッホの肖像 | 油彩、カンヴァス | 1886 |
リュシアン・ピサロ | うさぎ | 木版、紙 | 制作年不詳 |
ポール・シニャック | ボワ・ド・コロンブ線、アニュール駅付近 | 油彩、カンヴァス | 1885 |
アンリ・ド・トゥールズ=ロートレック | カフェの二人の娼婦 | 油彩、パネル | 1885/86 |
イサーク・イスラエルス | ゴッホの《ひまわり》の絵の前に立つ婦人 | 油彩、カンヴァス | 1917/20 |
エミール・ベルナール | 花瓶とカップのある静物 | 油彩、カンヴァス | 1887 |
エミール・ベルナール | ゴーガンの肖像のある自画像 | 油彩、カンヴァス | 1888 |
エミール・ベルナール | パリの街角に立つ女 | ペン、インク、水彩、紙 | 1888 |
エミール・ベルナール | 売春宿 | 水彩、紙 | 1888 |
エミール・ベルナール | カップ、果物鉢、ティーポット、果物のある静物 | 油彩、カンヴァス | 1890 |
エミール・ベルナール | 振り向く女 | 茶色の紙に木版、手彩色 | 1889~90 |
作品名 | 制作年 |
---|---|
『パリ・イリュストレ』日本特集号 | 1886 |
『芸術の日本』S.ピング編 美術・産業資料 | |
七宝の花瓶 | |
朱漆の箱 |
作家名 | 作品名 | 材質・形状 | 制作年 |
---|---|---|---|
渓斎英泉 | 花魁と梅の木 | 錦絵 | 1820 |
渓斎英泉 | 夜の楼 | 錦絵 | 1848 |
歌川広重 | 五十三次名所図会《原》 | 錦絵 | 1855 |
歌川広重 | 五十三次名所図会《島田》 | 錦絵 | 1855 |
歌川広重 | 五十三次名所図会《袋井》 | 錦絵 | 1855 |
歌川広重 | 五十三次名所図会《藤川》 | 錦絵 | 1855 |
歌川広重 | 五十三次名所図会《石薬師》 | 錦絵 | 1855 |
歌川広重 | 五十三次名所図会《亀山》 | 錦絵 | 1855 |
歌川広重 | 名所江戸百景《亀戸梅屋舗》 | 錦絵 | 1857 |
歌川広重 | 名所江戸百景《川口のわたし善光寺》 | 錦絵 | 1857 |
歌川広重 | 名所江戸百景《廊中東雲》 | 錦絵 | 1857 |
歌川広重 | 名所江戸百景《昌平橘聖堂神田川》 | 錦絵 | 1857 |
歌川広重 | 名所江戸百景《赤牧桐畑雨中夕けい》 | 錦絵 | 1859 |
歌川広重 | 名所江戸百景《大はしあたけの夕立》 | 錦絵 | 1857 |
歌川広重 | 名所江戸百景《市中繁栄七夕祭》 | 錦絵 | 1857 |
歌川広重 | 名所江戸百景《目黒爺々が茶屋》 | 錦絵 | 1857 |
敬川広重 | 名所江戸百景《猿わか町よるの景》 | 錦絵 | 1856 |
歌川広重 | 名所江戸百景(真間の紅葉、手古耶の社、継はし) | 錦絵 | 1857 |
歌川広重 | 名所江戸百景《よし原日本堤》 | 錦絵 | 1857 |
歌川広重 | 名所江戸百景《びくにはし雪中》 | 錦絵 | 1858 |
歌川広重 | 富士三十六景《武蔵本牧のはな》 | 錦絵 | 1858 |
歌川広重 | 富士三十六景《さがみ川》 | 錦絵 | 1858 |
歌川広重 | 富士三十六景《東海堂左り不二》 | 錦絵1 | 858 |
歌川広重 | 富士三十六景《甲斐御坂越》 | 錦絵 | 1858 |
歌川広重 | 富士三十六景《上総黒戸の浦》 | 錦絵 | 1858 |
歌川広重 | 富士三十六景《武蔵越かや在》 | 錦絵1 | 858 |
作家名 | 作品名 | 材質・形状 | 制作年 |
---|---|---|---|
歌川広重 | 東海道五十三對《赤板》 | 錦絵 | 1843~45 |
二代歌川広重 | 諸国名所百景《京都四条夕涼み》 | 錦絵 | 1859 |
二代歌川広重 | 江戸名勝図会《昌平橋》 | 錦絵 | 1862 |
二代歌川広重 | 新撰花鳥尽 a《あさがおにかはらひわ》 b《牡丹に瑠璃》 c《柘榴に連雀》 d《水葵に鴫翡翠》 e《海棠にひよどり》 f《桜に百舌鳥》 g《かのこ百合に樫鳥》 h《仙扇花に鶸》 |
1850 | |
初代歌川豊国 | 扇屋内篁 | 錦絵 | 1800 |
初代歌川国貞(三代豊国) | 春雨の景(三枚続) | 錦絵 | 1820 |
初代歌川国貞(三代豊国) | 古今未曾有 工夫の幽霊 尾上梅幸 | 錦絵 | 1830 |
初代歌川国貞(三代豊国) | あやめ橋の婦人(仮題・三枚続きの内の一枚) | 錦絵 | 1850 |
初代歌川国貞(三代豊国) | 雷に驚く婦人(仮題・三枚続きの内の一枚) | 錦絵 | 1849~53 |
初代歌川国貞(三代豊国) | 婦人点灯図(仮題・三杖続きの内の一枚) | 錦絵 | 1851~53 |
初代歌川国貞(三代豊国) | 今様押絵鏡 芸者長音 | 錦絵 | 1859 |
初代歌川国貞(三代豊国) | 今様押絵鏡 梅の由兵術 | 錦絵 | 1859 |
初代歌川国貞(三代豊国) | 三世岩井粂三郎の三浦屋高尾 | 錦絵 | 1861 |
二代歌川国貞 | 東京美女揃え(風呂屋にて) | 錦絵 | 1868 |
二代歌川国貞 | 東京許遊之一廊/今様歌舞之妓場/松本棲金 瓶大黒(三枚続) | 錦絵 | 1870 |
歌川国芳 | 青棲美人揃《岡本屋内長太夫》 | 錦絵 | 1830 |
歌川国芳 | 賢女烈婦伝《常盤御前》 | 錦絵 | 1840~41 |
歌川国芳 | 汐汲み美人(仮題・三枚続の内の中央) | 錦絵 | 1847~50 |
歌川国芳 | 豊前国内裏の沖 爼板ケ瀬にて難風に出会う図(仮題・三枚続) | 錦絵 | 1849~53 |
歌川国芳 | 舟遊びの娘(仮題・三枚続の内の一枚) | 錦絵 | 1851~53 |
歌川泉晁 | 浮世の景絵(化粧する花魁) | 錦絵 | 1830 |
歌川芳丸 | 新板虫画 | 錦絵 | 1883 |
歌川芳丸 | 御殿山盛花の三美人(仮題) | 錦絵 | 1847~48 |
歌川芳虎 | 尾張屋内長尾 | 錦絵 | 1830 |
作者不詳 | 新吉原江戸町弐町目 稲本屋内香川 | 錦絵 | 1820 |
- 新聞雑誌関係記事
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新聞記事
朝日:2月17日(虹川宏)、2月18日、3月4日(永井隆則)、3月13日(潮江宏三)
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新美術新聞:2月21日(永井隆則)
アサヒメイト:3月1日(永井隆則) - 雑誌記事
芸術公論:1992年2月号(粟津則雄)
関西版ぴあ:1992年2月27日号
月刊ギャラリー:1992年2月号
月刊美術:1992年3月号(安村敏信)
芸術新潮1992年5月号
美術館ニュース「視る」:296号(米村典子、渡部葉子)、297号(イザベル・シヤリエ・清木真砂)
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