ロバートヴェンチューリ&スコット・ブラウン展

 アメリカの建築家ロバート・ヴェンチューリ(1925生まれ)と彼の妻であり建築設計上のパートナーであるデニーズ・スコット・ブラウンほど、1960年代以降の世界の現代建築の動向に大きな影響を与えた建築家はいない。彼らの著作「建築の複合性と対立性」(1966)「ラスヴェガスに学ぶ」は、革命的な建築の著作として、また現代建築を考える上での基本的な理論書として、世界各国で翻訳出版されている。

 近代建築に付する批判や反省は、1960年代半ばから世界各地で真剣な問題として取り上げられるようになった。ある意味で理想主義的社会を目標に置いて展開された近代建築の動向は、一方で、画一化された個性の無い住宅や都市景観を生み出し、地域の特性を破壊してきた。近代建築は建物や都市の全体の構造や純粋怯を尊重する余り、部分的な要請や適切さを軽視し、結果として、現代の都市や田園に多くの矛盾と過剰さを作りだしたと言える。

 ヴェンチューリとスコット・ブラウンは、早い時期からこうした近代建築の限界を鋭く批判し、建物の部分的必然性から生まれる不合理性=建物が内包する矛盾と対立こそ、豊かで多様性に満ちた建築を回復するための重要な要素であると指摘してきた。彼らは、純粋な単一形態で全ての機能を取り込もうとする近代津築の理念に疑問を投げかけ、通俗的建築や商業広告板などが備える多様な機能を象徴する装飾こそ、建築を豊かにするための、機能的かつ合理的解決法であると主張したのである。彼らのこうした理論と設計活動は、近代建築の矛盾を克服しようと模索していた世界中の建築家たちに大きな刺激を与えた。1970年代半ばから世界中を席巻したポスト・モダニズム建築の動向は、ある意味でヴェンチューリの理論の発展的解釈であり実践的展開であったとも言えよう。

 今やポスト・モダニズム建築の中心人物として評価されているヴェンチューリとスコット・ブラウンの理論は、決して皮相的な様式の折衷や歴史主義建築の復活を唱えているわけではない。彼らの設計活動は、詳細な現地調査に裏付けられた現場の文化的・歴史的解読を基礎に、固有の場所にふさわしい多様な意味を包摂する建築を目指しているのである。

 今回の展覧会は、彼らの30年間に渡る設計業績を写真や作業図面のパネルで紹介すると同時に、その理論を最も具体的に体現するものとしての家具や食器などのデコラティヴ・アートも展示して、彼らの設計理念を総合的に理解しようとする試みであった。この展覧会は、現在活躍する世界中の建築家が何等かの影響を受けていると言われるヴェンチューリとスコット・ブラウンの活動を紹介する日本で初めての展覧会として、各方面から大きな注目を集めた。

国際交流展
 
会期
5月28日〜6月30日
入場者数
総数17,469人(一日平均582人)
カタログ
(鹿島出版会発行「Architectrue and Decorative Arts : Two Naifs in Japan」を参考図書として販売)
新聞雑誌関係記事
新聞記事
朝日:5月28日
MK新開:6月7日

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