学習支援活動

「志村ふくみ展」キッズプログラム
 鑑賞ツアー『これはどんな色?』実施報告

日時
2016年3月12日(土)午後2時〜3時

会場
京都国立近代美術館 1階講堂、3階企画展示室

参加人数
小学生12名

 志村ふくみさんの着物をイメージを膨らませながら楽しむ鑑賞ツアー『これはどんな色?』の2回目を開催しました。今回は12人の子どもたちと一緒に7つの作品を鑑賞しました。

 はじめに、絹糸の束をさわって色の違いや触り心地を感じました。そしてアルスシムラの方から、これらの糸は全て植物から染めたこと、そして自然から命をいただいて染めるたび、新しい色との出会いを楽しんでいることなどをお話しいただきました。「この糸で着物を織ったらどんな風になるんだろう?」とみんなの期待が膨らんだところで、いよいよ展示室に向かいます。

「志村ふくみ展」キッズプログラム 鑑賞ツアー『これはどんな色?』

 《刈安》という単色の着物の前では、色を言葉で詳しく説明してみることに挑戦。「ふんわりした金色」や「あったかいクリーム色」と視覚以外の感覚を使ったり、「秋になって稲穂が垂れてきたときの色」と風景を引き合いに出したり。身近なものや見慣れた景色と結びつけることで、ひとつの色から具体的なイメージがどんどん出てきました。また、染料の刈安を実際に手に取って着物との色の違いを見比べ、「この緑色の植物からあんな色が染まるなんて」と、染めの面白さも味わいました。

「志村ふくみ展」キッズプログラム 鑑賞ツアー『これはどんな色?』

 別の単色の着物の前では、こんなコメントも飛び出しました。
 「上の方は明るい色で、下に行くにつれて暗くなっていっている」
 実は着物自体は同色の糸で織り上げられているのですが、上から照明を当てていたため、濃淡があるように見えたのです。もし鑑賞をはじめる前に「これから見るのは単色無地の着物です」と説明されていたら、このような気付きは生まれたでしょうか。子どもたちの観察力の鋭さに驚かされるとともに、展示室という空間ならではの発見があることも、今回の鑑賞ツアーの醍醐味だと教えられました。

 特にたくさんの見方が生まれたのが、《月の湖》という作品です。濃紺の着物の下の部分に白い縞模様が入った着物なのですが、子どもたちは作品の全体や部分を観察し、こまかな色合いの違いなども手掛かりにしながら読み解いてくれました。
 「光に照らされている湖だ」
 「白い線は、水面が波打っている様子だと思う」
 「下の方にシマウマがいて、夜の空を見上げているところ」
 「上の部分の少し明るい青色は、霧がかかっていて、月の光が少し漏れているように見える」
 「上の方にある白く細い線が、星をあらわしていると思う」
 他の人の考えを聞くことで、「そうか、時間は夜だな」と自分の見方をより明確にしたり、作品の別の部分に新たに気付いて「月だけでなく星も出ているんだ」と連想をさらに広げたりと、前回同様、対話が進むにつれて子どもたちが抱くイメージが具体的になっていきました。

「志村ふくみ展」キッズプログラム 鑑賞ツアー『これはどんな色?』

 次の作品まで移動する間も、子どもたちは並んでいる着物ひとつひとつに一生懸命目を輝かせていました。中には「あそこではお花が咲いていて、あれは木の幹で、あっちでは日が昇っていて…」と、まるで自然の中を散歩しているように語ってくれた子もいます。こうした反応は、自然とのかかわりを大切にしながら着物を作られている志村さんの思いが、作品を通して子どもたちに確かに伝わっていることの表れだと感じました。

「志村ふくみ展」キッズプログラム 鑑賞ツアー『これはどんな色?』

 2回にわたって実施した鑑賞ツアー『これはどんな色?』では、作品をさまざまな切り口から鑑賞すること、そして自分とは異なる作品の見方に触れて「なるほど、そういう感じ方もできるのか」と、違いを楽しみながら鑑賞を深めることを大切にしました。
 ナビゲーターからの「どんな色?」「どんな風景が見える?」「動きはあるかな?」「タイトルと着物の関係は?」「どこからそう思う?」という問いかけに対して、子どもたちは、頭の中のいろいろな引き出しを引っ張って、想像力豊かに作品を味わいました。また、互いに意見を共有することで作品の見え方がぐっと広がることも体験してもらえたと思います。これから気になる作品に出会った時は少し足を止め、色々な視点から考え、友だちと意見交換もしながら楽しく鑑賞してもらえれば嬉しいです。

(当館特定研究員 松山沙樹)




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