コレクション・ギャラリー

2019年度 第6回コレクション展 (計101点)

会期

2020年1月4日(土)〜3月1日(日)

主なテーマ

展示作品

音声ガイド

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冬の日本画

 日本には四季があり、古来日本人はそれぞれの季節の美を愛で、詠い、書き、描いてきました。今回のコレクション展日本画コーナーでは、冬の風物を描いた作品をご紹介いたします。
 冬と言えば「冬枯れの木立」。朝靄の中に浮かぶ川沿いの柳を描いた竹内栖鳳の《蕭条》は、太い幹と細い枝が作り出すシルエットの面白さを描くとともに、寄り添う二羽のふくら雀によって寒さを、凛として枝にとまる一羽の鶺鴒によって冴え冴えとした空気感を表現しています。一方、小松均《雪の最上川》に描かれる雪をかぶった冬枯れの木立とそれを映す最上川の流れは、冷たいはずなのに、独特の膠の強い墨で粘り強く細部に至るまで描きこまれ、不思議な熱気に溢れています。山形出身で、京都の中でも雪深い大原に活動の拠点を置き続けた作者ならではの空気感です。そして「お正月」に関わる風物詩も忘れてはいけません。令和になって初めてのお正月をお祝いして、七福神のうちの寿老人と大黒天を描いた作品を展示しています。大黒さんの足下には今年の干支である鼠さんも。また、お正月にはお着物を召された方も多いのではないでしょうか。紅白梅の華やかなお着物で初詣、羽根つき、凧揚げ、手毬つき。あるいは、あまりの寒さにチャンチャンコを羽織ったり、お着物の中にセーターを着込んでお家で双六や歌留多に興じる。日本の伝統的な装いも、遊びも、お正月だけのものとなって久しいですが、大切に残していきたいものです。

竹内栖鳳、蕭条 (右隻)、1904頃
竹内栖鳳《蕭条》右隻, 1904頃

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シリーズ:検証「現代美術の動向展」1966–1970

 「現代絵画の動向展」および「現代美術の動向展」は、京都国立近代美術館で1963年の設立当初から1970年まで毎年開催された、同時代の新しい美術動向に注目した展覧会シリーズです。美術の概念や形式が大きく変容した1960年代に、「変転を重ね、多彩きわまる様相を呈している現代の美術界の新しい状況を把捉するために、その断面を集約的にあきらかにしようとする試み」として9回にわたり開催されました。「過去一年間注目すべき仕事を発表した中堅、新進の作家の作品」を中心に、カッティングエッジな表現を積極的に紹介しつづけたことは、当時の日本の美術館としては画期的なことでした。いま振り返ってみれば、動向展にはその作家の代表作と見なされている作品も数多く含まれています。
 <シリーズ:検証「現代美術の動向展」>は、この9回の動向展について当館のコレクションを用いて振り返る小企画で、2010年から2013年にかけて第1回展から第4回展までを特集しました。今回の特集展示では、1966年の第5回展から1970年の第9回展までをまとめて取り上げます。この4年間の作品には、絵画や彫刻といった従来のジャンル区分をはなれ、視覚の虚実を問う立体/平面的作例や、工業的製品を用いた造形、光や音、運動を取り入れた装置的作品、自然素材の配置によって空間そのものを変容させる仕事、パフォーマンス作品など、のちの現代美術において主流となっていくさまざまな展開をみることができます。動向展に出品された実作品の展示はわずかではありますが、当時の作品調書や記録写真などのアーカイブ資料とあわせて、当時の美術館が模索しながら追いかけた1960年代から70年頃の「コンテンポラリー・アート」をご覧ください。

野村仁、「HEARING」についての特別資料室、1970-76年
野村仁《「HEARING」についての特別資料室》1970-76年

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イタリアの現代陶芸

 ニーノ・カルーソ展の開催にあわせて、イタリアの現代陶芸を特集いたします。当館所蔵のイタリア現代陶芸の多くは、当館で開催した1964年の「現代国際陶芸展」、1970年の「現代の陶芸―ヨーロッパと日本」の出品作になります。これらの展覧会は、1971年の「現代の陶芸―アメリカ・カナダ・メキシコと日本」とあわせて、海外の陶芸を日本に一堂に紹介したという点で、日本の現代陶芸の展開にも大きな影響を与えたものです。
 ここで紹介する作品からは、その当時の熱気を窺うことはできないかもしれませんが、イタリアという文化的土壌から生まれた表現は、今なお、日本陶芸を相対化するうえで重要な魅力を有しています。例えば、陶芸表現の出発点ともなる「土」。東洋と西洋とでは、地質の違いから「土」が異なり、イタリアでは伝統的に低火度焼成によるテラコッタやマヨリカが主流となってきました。彫刻家として高い評価を得たレオンチッロ・レオナルディや画家としても活躍したルーチョ・フォンタナの作品はテラコッタによるものです。これらの伝統に対し、高温焼成による陶器制作を試みて独自の「白」を得たのがカルロ・ザウリであり、窯変をも含む色彩世界を確立したのがグエリーノ・トラモンティでした。また、夭逝したアルフォンソ・レオーニは構成的な彫刻作品をマヨリカで制作し、ニーノ・カルーソとカルロ・ザウリというイタリア現代陶芸の巨匠2人に師事した平井智は、地中海の明るさに日本的な装飾的感性を加味することで、現代的なマヨリカの表現を探求しています。さらにフェデリコ・ボナルディは、土俗的なモチーフをコミカルに表現することでイタリア現代陶芸を代表する作家の一人となりました。

平井智、広場から'90、1990年
平井智《広場から'90》1990年

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川勝コレクション 河井ェ次郎作品選

 川勝コレクションは、昭和12年(1937)のパリ万国博覧会グランプリ作品を含む、質、量ともに最も充実した河井ェ次郎作品のパブリック・コレクションです。
 川勝コレクションが当館に寄贈されたのは、昭和43年(1968)のことです。当館への寄贈にあたっては、部屋一面に並べられた膨大な作品群の中から「お好みのものを何点でも」との川勝の申し出に従って415点が選ばれました。それ以前にすでに寄贈されていた3点と、初期作品が不足しているとのことで後に追加となった7点を加えて、計425点に上ります。このコレクションは、中国陶磁を手本とした初期から、民藝運動に参画後の最晩年にいたるまでの河井の代表的な作品を網羅しており、その仕事の全貌を物語る「年代作品字引」となっています。
 コレクションを形成した故・川勝堅一氏は、島屋東京支店の宣伝部長、島屋の総支配人、横浜島屋専務取締役などを務め、また、商工省工芸審査委員を歴任するなど、工芸デザイン育成にも尽力しました。
 河井と川勝の長年にわたる交友は、大正10年(1921)に島屋で開催した河井の第1回創作陶磁展の打ち合わせのために上京した河井を川勝が駅まで迎えに行ったことに始まります。そこでたちまち意気投合したことで、川勝は河井作品の蒐集を始めます。コレクションについて川勝は「これは、川勝だけの好きこのみだけでもなく、時として、河井自らが川勝コレクションのために作り、また、選んだものも数多いのである」と回想し、さらに「河井・川勝二人の友情の結晶」だとも述べています。

河井ェ次郎、三彩双魚文瓶子、1922年
河井ェ次郎《三彩双魚文瓶子》1922年

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建造物を描く

 ニーノ・カルーソの陶芸には古代の建造物を想起させる形象がありますが、一般に、建築は人間のあらゆる活動に不可欠であり、ゆえにそれを絵画や工芸に表すことも古来よく行われてきました。
 日本でも、縄文時代には既に家形の石製品があったようです。弥生時代には土器や銅鐸に建築の文様が刻まれ、古墳時代には家形の埴輪が作られました。以後、古代から近世まで仏画や物語絵、山水図、都市景観図等、様々な画題に建造物が表現されてきました。
 近代以降の絵画、特に洋画(油彩画、水彩画)においては、風俗画としての要素を排して建造物そのものを描くことが多くなりました。それはもともとは外国人観光客のための土産物として名所の景色を描くところから始まったようですが、やがて、まるで静物画や肖像画を制作するかのように、建物や街並を見詰め直して表現しようとする画家たちが出てきたわけです。駅や工場、ダム、高架、鉄橋のような近代の技術による新たな景観の出現も、画家たちの意欲をかき立てました。
 ここでは当館所蔵の日本近代洋画の中から、いろいろな建造物を表現した様々な作品を展示しています。物語絵のような要素をもった作品から、建物そのものを見詰めた作品、さらには建物を通して空間と時間の奥行を象徴させようとした作品、異国の建物や街並を描いた作品、そして近代の新たな景観を捉えた作品まで、多彩な表現があるところをご覧いただけることでしょう。

三井文二、京都疎水ダム、1914年
三井文二《京都疎水ダム》1914年

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エデュケーショナル・スタディズ
   感覚をひらく―新たな美術鑑賞プログラム創造推進事業

 当館は平成29(2017)年度から、地域の盲学校や大学等と連携して「感覚をひらく―新たな美術鑑賞プログラム創造推進事業」を行っています。これは、「見る」ことが中心的になっている従来の美術館での過ごし方を問い直し、見える/見えないにかかわらず誰もが楽しめる新しい美術鑑賞プログラムの開発を目指すプロジェクトです。
 本事業ではこれまで、視覚障害のある方にもご参加いただきながら、立体作品や染織作品を手で触れて鑑賞するワークショップや、音や匂いに着目したまちあるき、美術館建築や展示空間を身体をつかって感じるプログラムなどを続けてきました。美術館で、障害のある方とともにユニバーサルな(誰もが享受できる)鑑賞のあり方を模索することは、これまで気が付かなかった作品の魅力をまったく別の角度から発見していく一助になると考えています。さらには美術館が、そこを訪れた人たちが鑑賞を通して互いの感性を理解しあう場として機能することも期待しています。
 このエデュケーショナル・スタディズでは、「感覚をひらく」事業の一環として制作している、当館の所蔵品についての触察ツール「さわるコレクション」をご紹介します。作品のそばに置いていますので、ぜひお手に取ってごゆっくりとお楽しみいただければ幸いです。


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