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コレクション展平成29年度 第1回コレクション展 (計162点)

コレクション・ギャラリー

平成29年度 第1回コレクション展 (計162点)

会期

2017(平成29)年4月19日(水)~6月11日(日)

概説

 コレクション・ギャラリーでは、今年度最初のコレクション展と並行して、「戦後ドイツの映画ポスター」展を開催しています。それにちなみ、会場入口すぐの場所では「広告のある街角」というテーマで、佐伯祐三《裏街の広告》を手がかりに、パリ・モンマルトルの街角を描き続け佐伯に大きな影響を与えたユトリロの作品や、広大な広告設置空間でもある地下鉄構内を主題とした相笠昌義とアリシア・フラミスの作品、広告のある大都市と郊外の風景を写した写真作品をご紹介しています。

 日本画のコーナーでは「近現代の仏画」と題し、主に大正・昭和の時代に描かれた仏画を展示しています。明治以降、日本画家たちは、伝統的な仏教図像に縛られることなく、広く仏教の世界から題材を設定し、自由に創作を行いました。土田麦僊らとともに国画創作協会を立ち上げ活躍した村上華岳は、晩年仏画の制作に打ち込み、たおやかな数多くの菩薩像・観音像を生み出しました。装飾豊かな高僧の肖像作品で知られた片岡球子は、《供花》《散華》《三昧》で、仏事を行う尼僧を鮮やかな透明感で描き出しています。また、堂本印象の《訶梨帝母》には、西洋の聖母マリアを描いた三連祭壇画の形式の影響が見てとれます。西洋文化が怒濤の様に流入した近代という時代に、仏の教えをどのような表現で伝えていけばいいのか、画家たちのさまざまな試みをご覧下さい。

村上華岳、観音之図(聖蓮華)、1930年
村上華岳《観音之図(聖蓮華)》1930年

 工芸のコーナーでは、3階企画展会場で同時期に開催されている「技を極める――ヴァン クリーフ&アーペル ハイ・ジュエリーと日本の工芸」展に関連して、所蔵作品から1980年代の〈コンテンポラリー・ジュエリー〉をご紹介しています。1960年代、宝石や貴金属を素材とした「ファイン(ハイ)・ジュエリー」や、半貴石などより安価な素材を用いた「コスチューム・ジュエリー」に対し、作家のコンセプトをより重視した「コンテンポラリー・ジュエリー」と呼ばれる一群の作品が生み出されるようになりました。そのパイオニア的存在が、厚紙とアクリル絵具で作られたシニカルなブローチ《スイスの黄金》の作者オットー・キュンツリです。彼は、ジュエリーが身体と密接な関係をもつことや、自己と他者さらには社会との関係を意味づける触媒としての機能を持つことに注目し、ジュエリーを単なる「装身具」ではなく、普遍的な人間存在や社会のメタファーへと変換しました。紙や合成樹脂、セメントやアルミニウムなどで作られたジュエリーは、ときにどのように身に纏うべきか戸惑う形状をしています。しかし、そこにはそれぞれの作者による人間や社会に対する確かなメッセージがこめられています。

 また、前回のコレクション展に引き続き、当館の川勝コレクションから河井寬次郎の優品をご紹介しています。

河井寬次郎、辰砂菱花扁壺、1941年
河井寬次郎《辰砂菱花扁壺》1941年

 洋画のコーナーでは、平成24(2012)年度以降に購入ないし寄贈された作品の中から代表的な作品をご紹介しています。特に安井曽太郎《孔雀と女》は、安井の滞欧期の集大成とも言うべき作品で、イタリアやスペインの古典絵画研究とセザンヌに代表される新しい表現方法の研究とに、熱心に取り組んだ成果が見て取れます。

安井曾太郎、孔雀と女、1914年
安井曾太郎《孔雀と女》1914年

 通常版画や写真作品を展示しているコーナーでは、「キュレトリアル・スタディズ12:泉/Fountain 1917-2017」を開催しています。今年は、マルセル・デュシャンによるレディ・メイド作品《泉》が、展覧会で初めて公開されてから100年目にあたります。男性用小便器を、その通常の向きを変えて署名をしただけで、一「芸術」作品として提示した彼の行為は、「芸術(作品)」の意味そのものに疑問を投げかけ、20世紀美術のその後の動向に計り知れない影響を与えました。今年度のコレクション展では、5回にわたって、この《泉》をめぐる様々な解釈や解読の可能性を展示やレクチャーを通して考えます。今回の展示「Case 1:マルセル・デュシャン29歳、便器を展覧会に出品する」を、まずは、マルセル・デュシャンそして《泉》とは何か、に対する基本的回答としてお楽しみ下さい。

主なテーマ

展示作品


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