シリーズ:検証「現代美術の動向展」第4回

期間
2013(平成25)年7月10日(水)〜 9月1日(日)
展示作品
シリーズ:検証「現代美術の動向展」第4回 展示目録

 当館が開館以来およそ15年間にわたって定期的に開催した「現代美術の動向展」(後に「現代美術の鳥瞰展」と改称)と銘打たれた一連の展覧会の第4回目は、開館二年目の1965(昭和40)年6月18日から7月25日にかけて開催されました。前回と同じ「絵画と彫塑」という副題をもつこの展覧会には、62点の絵画作品と33点の彫刻作品、合計95点が出品され、作家は絵画が28名、彫刻が16名を数えました。展覧会図録の冒頭では、今回は「とくに、最近一年間ほどのあいだに、意欲的な仕事を発表して注目された新人や中堅の作品」、つまり「比較的若い世代」の作品を「積極的に」採りあげたとあります。事実、出品作家の多くは30歳代前半で、最年少の1941年生まれの滝口勝は当時京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)の専攻科に在学中の学生でした。美術館の数が今ほど多くはなかった当時、若手・中堅の芸術家に門戸を開いていた本展の存在は、彼らにとって小さくなかったと言われています。
 作品の選考について、当時事業課長であった乾由明は毎日新聞に寄せた記事の中で「最近一年ほどの制作においていかに新鮮な創造力とイメージの発掘に成功しているかどうかという観点からなされた」、と述べています。それゆえか、絵画においては、前回の「動向展」には見られなかった、漫画的表現(岡本信治郎・中馬泰文)や視覚に訴える緻密な幾何学的パターン(小松豊・宮崎万平)などの傾向を持つ作品が採りあげられています。前回展で、絵画はもはや「イメージ」を表現・伝達するものでなくなり、それそのものが「出来事」ないし「記号」となった、と評されました。しかし今回展では、「手」による緻密な表現に集中することで、むしろ絵画の表面ないし絵画の枠組みの脱構築化が目指されたかのようです。彫刻については、絵画の動向と並走するかのように、一層「素材のもつ特性や材質感が大きい意味を持ち」、その空間認識や構想もより豊かに自由になってきた、と展覧会担当者のひとりであった鈴木健二は述べています。このような作品制作における「手」や「素材」に対する集中について、藤慶之は京都新聞の展評で、そこからは、「既成の芸術に対するせい一杯のアンチテーゼ」や「停滞気味の現代美術に対する"いらだち"にも似た感情」が感じられる、と好意的に論じています。しかしその一方で、「反芸術」的な作品が多かった前回展に比して、「全体におだやかな気分で、異様さや切迫感」に欠け、「虚無的な詠唱がひびいている」かのようだ、と中村敬治は評していますが、その言葉は、本展だけにではなく、これまでの芸術概念を根底から揺るがした読売アンデパンダン展が廃止された当時の美術界全体の状況に対する批評とも言えるでしょう。
 本展に出品された作品で、現在当館に収蔵されているものは、展覧会図録の表紙にもなった作品を含む中馬泰文の作品2点と麻田浩の作品1点に過ぎません。但し、高崎元尚の出品作品の再制作作品、宮崎万平の出品作品の一部分が収蔵されています。これら出品作品のみならず、ここでご紹介している出品作家の同時代作品も。すべては展覧会当時ではなく、展覧会開催から10数年、ときには50年近い年月が経てから収蔵されました。購入予算や収蔵庫の収納能力を考慮しながら、自らの展覧会活動を収集活動と連携させて記録・保存してゆくことの難しさが、このような事実にも現れています。


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