陶片からなにがみえるかな?
テツ_ノ_アワセ
テキスト:中村裕太
鉄絵の発色を見るための色見本である。土の質感はほとんど同じなので鉄絵と釉薬の関係性をみていたのだろう。それぞれの見本には、「一」、「二」、「旧」、「合」と両面に鉄絵で文字が記されている。おそらくは、「一」と「二」が新しく調合した鉄絵と釉薬であり、「旧」はそれまでに使っていたものであろう。さらに「合」は「一」と「二」を掛け合わせたものか、「旧」と「一」か「二」を掛け合わせたものと思われる。陶片は、山型に立つように作られ、鉄絵を描いたあと、釉薬に浸し掛けている。どの色見本が石黒の理想としたものかは定かではないが、その微細な差を見比べて、器物に鉄絵を描いたのだろう。このような鉄絵は、北大路魯山人(1883-1959)の器物にもみることができる。魯山人は「雲錦手」と呼ばれる桜と紅葉の模様の下地として鉄絵で木の枝ぶりだけを描いている。
別の視点から見る