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陶片 No.18

陶片からなにがみえるかな?

カケタ_チャワン

テキスト:中村裕太

小山冨士夫は、1941年4月10日に中国曲陽県澗磁村にて宋代の定窯を発見する。小山はその帰路、八瀬に石黒を訪ねている。石黒はその時にみた陶片について漢詩を残している。「片片凡神技 不知陶藝人 多時看宋(*臨と瓦を合わせた文字) 古瓷反猶新(どの破片もすべて神わざである。いったい、どのような陶芸家なのだろうか。長い間宋代の陶器を見てきたが、古いものほど、かえって新しさを感じさせるものだ)」。この陶片には、その書画とよく似た欠けた茶碗で描かれ、その周囲には磁州窯にみられる千点文が彫られている。八木一夫(1918-1979)は、1947年頃に青年作陶家集団の仲間と連れ立って八瀬に石黒を訪ねている。「そのときの私は、石黒さんの仕事の裏うちとなっているはずの、「古典」という古色の型を感じたりはしなかった。むしろ、作家個人だけにとどまらず、現代そのものにも生きている感覚や、瀟洒な好み、造りのたしかさと柔軟性、そんなものに感心させられていたという記憶がある」と『懐中の風景』のなかで記している。八木は、古陶磁を逐った石黒の陶器作りには、石黒なりの解釈があることを見出していた。八木もまた、自らの解釈をもとに千点文の湯呑みを作っている。

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石黒宗麿《茶碗図》
石黒宗麿《茶碗図》1941年、個人蔵(撮影:小杉善和)

ABCコレクション・データベース vol.1 石黒宗麿陶片集

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