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陶片 No.16

陶片からなにがみえるかな?

カキ_ヲ_ホス

テキスト:中村裕太

石黒は、戦後に「彩瓷」という技法をはじめる。素地に白化粧を施し、高温で焼成し、その上に低温で熔ける上絵の具で模様を描いていく。石黒は「陶器の化粧について」『淡交』1952年6月号のなかで、宋磁に見られる白化粧の二重掛けについて述べている。「乾いたら水につければよいと思ふだらうが、水に一寸つけた位では水分が生地の内部まで浸透しない、それかと言つて永くつけて置けばとろけてもとの土になつて仕舞ふ。そこで、水の様ではあるが水より濃度のある薄化粧にひたして、半乾きの状態にもどす。暫時すれば化粧をするに適當な潮時と同じ状態になる、之れで本化粧卽ち濃い化粧をかけても裂ける心配はない」。《壺「晩秋」》は、白化粧した素地の上にペルシャ黒とえび茶の上絵で干し柿が模様化されている。この陶片は本作の試作として作られたものかもしれない。白化粧した素地には、柿と言えるほどの丸みではないが、同じような筆致で上絵が施されている。

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石黒宗麿《壺「晩秋」》
石黒宗麿《壺「晩秋」》1955年頃、京都国立近代美術館所蔵

ABCコレクション・データベース vol.1 石黒宗麿陶片集

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