陶片からなにがみえるかな?
イモ_ヲ_ホル
テキスト:中村裕太
石黒は、芋版技法を取り入れている。器の側面には、規則正しく茶色の上絵の具を押し付け、表面を埋め尽くしている。木版であればこのようにうまく押すことはできない。芋の柔らかさが適していたのだ。西芳寺の貫主は、石黒からサツマイモだと柔らかすぎるので、ジャガイモを使ったと聞いている。同時期にこの技法で作られた壺や茶碗の芋版は、すべて違う模様である。おそらくジャガイモの柔らかさが長い間持たなかったのだろう。この陶片には、二つの模様が見えることから、ジャガイモを包丁で二つに切って、彫ったのではないか。石黒は蛇ヶ谷時代(1927-1935)を振り返り、「蛇ヶ谷というところは、新しくできた陶器村なんです。それだけに非常に活発に皆、安物をどんどんやっていたところです。食ったり食わなんだったり、ジャガイモばっかり食っていたもんですね。」と『NHK映画 重要無形文化財―鉄釉陶器―石黒宗麿』(以下は『NHK映画』)で語っている。
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