「感覚をひらく」事業では2020年度より、作家(Artist)、視覚障害のある方(Blind)、学芸員(Curator)がそれぞれの専門性や感性を生かし、さまざまな感覚をつかう鑑賞方法を創造する「ABCプロジェクト」を行っています。2020年度は、当館所蔵の石黒宗麿《壺「晩秋」》の新たな鑑賞方法を探っていくためにABCが協働しています。
石黒宗麿(1893-1968)は、1936年に京都市左京区八瀬に「八瀬陶窯」を築窯し、晩年までこの地を拠点に陶器作りを続けてきました。石黒は、1955年に鉄釉陶器の技法による重要無形文化財保持者(人間国宝)として認定されたことを機に、中国や朝鮮の古陶磁を逐った近代的な個人作家として紹介されてきました。ところが、石黒の手によってこの土地に捨て去られた陶片からは、陶器作りに苦心する新たな一面を見出すことができます。
本プロジェクトは、陶片を発掘することから始まり、中村裕太は陶片の研究とその制作、安原理恵は陶片を触察し言葉にすることで、石黒の陶器作りを解きほぐしてきました。さらに、それらの考察をもとに、学芸員は当館のコレクションとのつながりを再構築してきました。今回のエデュケーショナル・スタディズでは、来場者が手や耳の感覚を研ぎ澄ませ、壺のなかに入ったひとつひとつの陶片に触れたり、八瀬での陶片を介した対話の様子を垣間見ることをとおして、《壺「晩秋」》の新たな鑑賞方法を探っていきます。また、石黒の陶片をABCそれぞれの視点から紐解いた「ABCコレクション・データベースVol.1 石黒宗麿陶片集」を公開しています。
エデュケーショナル・スタディズ02 中村裕太 ツボ_ノ_ナカ_ハ_ナンダロナ?
- 日時
- 2020年12月24日(木)~2021年3月7日(日)
- 会場
- 京都国立近代美術館 4階 コレクション・ギャラリー内
- 入場料
- コレクション展の観覧料に準じます。くわしくはこちらをご覧ください。
- 特別協力
- 京都精華大学伝統産業イノベーションセンター
- Webサイト
- 「ABCコレクション・データベースVol.1 石黒宗麿陶片集」
八瀬陶窯から発掘された26の石黒宗麿の陶片を、作家(Artist)、視覚障害のある方(Blind)、学芸員(Curator)の視点から紐解いたウェブサイト。
会場風景
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作家紹介|中村裕太
1983年東京生まれ、京都在住。京都精華大学芸術学部特任講師。2011年京都精華大学芸術研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。〈民俗と建築にまつわる工芸〉という視点から陶磁器、タイルなどの学術研究と作品制作を行なう。近年の展示に「第8回アジア・パシフィック・トリエンナーレ」(クイーンズランド・アートギャラリー、2015年)、「第20回シドニー・ビエンナーレ」(キャレッジワークス、2016年)、「あいちトリエンナーレ」(愛知県美術館、2016年)、「MAMリサーチ007:走泥社̶現代陶芸のはじまりに」(森美術館、2019年)、「表現の生態系:世界との関係をつくりかえる」(アーツ前橋、2019年)。著書に『アウト・オブ・民藝』(共著、誠光社、2019年)。
NAKAMURA Yuta
出品作品
- 石黒宗麿《壺「晩秋」》1955年頃、陶器
- 石黒宗麿《柿釉火鉢》1937年、陶器
- 石黒宗麿《刷毛目蓋物》制作年不詳、陶器
- 石黒宗麿《鉄刷毛目茶碗》1950年頃、陶器
- 石黒宗麿《鉄文壺》1960-68年頃、陶器
- 石黒宗麿《チョーク絵色釉皿》1950-59年頃、陶器
- 石黒宗麿《柿子図》制作年不詳、紙本墨画淡彩、個人蔵
- 中村裕太《ツボ_ノ_ナカ_ハ_ナンダロナ?》2020年、ドローイング、壺、陶片、映像(36'44'')/インスタレーション
制作協力
- 陶片写真: 表恒匡
- 映像制作: ViDeOM
- 什器製作: タケダ工作所
- フライヤーデザイン・ウェブサイト制作: Studio Kentaro Nakamura