「ドレス・コード?――着る人たちのゲーム」展関連イベント
岡田利規、《The Fiction Over the Curtains》について語る 実施報告

開催日
2019年9月23日(月・祝) 14:00~15:30
講師
岡田利規(チェルフィッチュ主宰・劇作家)
聞き手
水野大二郎(芸術博士(ファッションデザイン)、京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab特任教授)
会場
京都国立近代美術館 1階講堂
イベント詳細
「ドレス・コード?――着る人たちのゲーム」展関連イベント
岡田利規、《The Fiction Over the Curtains》について語る
水野大二郎氏(左)、岡田利規氏(右)
水野大二郎氏(左)、岡田利規氏(右)

 京都国立近代美術館での企画展「ドレス・コード?――着る人たちのゲーム」展に関連して、出品作家であるチェルフィッチュの岡田利規氏によるトークイベントを実施した。聞き手にファッションをはじめデザインを社会的な文脈から考察する研究プロジェクトを実践してきた水野大二郎氏を迎え、対談形式でおこなった。

 《The Fiction Over the Curtains》は、部屋の中央に半透明のスクリーンを吊り下げ、そこに俳優たちが演じる映像を投影したインスタレーション作品である。岡田氏が「映像演劇」と称するように、この作品では、あたかもスクリーンの向こう側で実際に俳優たちが会話を繰り広げているかのように見える。「服をもらえませんか」といった登場人物の問いかけは、時にスクリーン越しに作品を観ている私たちへと向けられ、しだいに観る側をも取り込んだ心理ゲームのように展開する。

 今回のトークに先駆けて、目の見えない人/見えにくい人と、見える人が「ことば」を介して本展を鑑賞するツアーが開催された(主催:ミュージアム・アクセス・ビュー)。そこで、トークのきっかけとして、このツアーの中で見えない人と見える人がどのようにこの作品を経験したかを、記録映像をもとに岡田・水野両氏と振り返りつつ、岡田氏の見えない人を対象とした過去の体験談、さらに金氏徹平氏との共作による演劇公演《消しゴム山》の制作プロセスに導入された「ライフログ」という考え方について話を伺った。
 鑑賞ツアーの記録映像を見た岡田氏からは、まず、見えない人にスクリーンを触ってもらうことで、空間の隔たりや心理的な境界線をより体感できたのではないかという指摘がなされた(ツアーは開館時間内に行われたため、展示作品に手を触れることを想定していなかった)。

ミュージアム・アクセス・ビューによる鑑賞の様子ミュージアム・アクセス・ビューによる鑑賞の様子
《The Fiction Over the Curtains》について語る

 トークでは、見えない人のためにダンス・パフォーマンスの音声ガイドを執筆したことや、見える人と見えない人が会話を通して写真や絵画を鑑賞するワークショップでの経験をふまえ、アートを語る際にどのような言葉で何を伝えるのか、何を共有するのかという根源的な問題提起がなされた。例えば、岡田氏は「鉄パイプが傾いて置いてあると言っても面白くないけど、これが何か踊ってるみたいな感じがすると言うと伝わる」と語ったのに対し、水野氏は「われわれがそこに何を面白いと見出しているのかを言うこと」が重視されていると指摘。二人の対談を通して、視覚障害の有無に関わらず、作品鑑賞の経験共有においては、作品に対する主観的な見方、つまり誰かがある作品にその面白さを見出したという経験自体を共有することに他ならない、ということに改めて気づかされた。

(文責:牧口千夏)


▲PAGE TOP