陶片はどんなコレクションと
つながるかな?
窯ならぬ、竈
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戦争の日々をこの八瀬で過ごした石黒宗麿。同時期、おなじく八瀬で過ごし、そこでの生活を描いた建築家がいます。日本の建築計画学の礎を築いたとされる西山夘三(1911-1994)です。京都大学の教授もつとめました。また大阪万博では、会場計画の陣頭指揮を建築家の丹下健三と一緒に担った人物としても知られています。彼の主著である『住み方の記』(1965)には、京都大学営繕課につとめていた西山が、戦局の悪化にともない市内から八瀬に疎開した、そこでの生活の様子が多くの図面とともに詳細に描かれています。
彼も書いていますが、この八瀬の民家の特徴はなんといっても、立派な「おくどさん」。つまり「竈」です。大きなくの字型を描く左官によって作られる竈の、もっとも大きい炊き口に、火の神を祀ったものです。むかし、この周辺の民家を数々調査させていただいたときに知ったのですが、八瀬に古くから住んでいる方々は、この竈を使わなくなったいまでも、このおくどさんだけを残して大事に祀っている家も多いんですよ。驚きました。