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陶片はどんなコレクションと
つながるかな?

点、てん、テン。

テキスト: 松山沙樹 京都国立近代美術館 学芸課専門:教育普及

「点」が印象的な京近美コレクションといえば、吉原治良《作品(黒地に白い点の円)》。183×183cmの大画面に点が円環状に配置された最晩年の代表作です。一見、大きな筆にたっぷり絵具を含ませて一気に描いたように見えます。ですが近寄って観察してみると筆で丁寧に塗り重ねた跡があり、ひとつひとつの点の位置や形が緻密に計算して描かれていることが分かります。

1954(昭和29)年に「具体美術協会」を結成した吉原は「人の真似をするな。今までにないものをつくれ」と説いて、「具体」のグループの中でリーダー的な役割を果たしました。「具体」には、嶋本昭三、正延正俊、山崎つる子、白髪一雄、田中敦子、村上三郎、元永定正らが参加しており、素材と作者の身体が具体的に関わることによって(例えば足を使って描くなど)、人間の精神の自由さを示すことを目指して関西で活発な活動を続けました。しかし1972(昭和47)年に吉原が急死してまもなく解散し、その活動は突然に終わりを迎えました。

ところでこの作品は、中高生との鑑賞活動でよく取り上げる一枚です。単純な構図ながらも抽象的で、作品の解釈や見立てをめぐってさまざまな意見がでて対話が盛り上がります。あるとき一緒に鑑賞した高校生たちは、「ご飯粒の集合体」、「ペンギンが丸く集まっているのを上から見た様子」などユニークな解釈を発表してくれました。同じ作品から人それぞれ多様なイメージが膨らむのは、興味深いですね。さて、みなさんはこの作品から何を感じますか?

つながる京近美コレクション

どんな陶片とつながるかな?

ABCコレクション・データベース vol.1 石黒宗麿陶片集

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