陶片はどんなコレクションと
つながるかな?
作家は動物がお好き?
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日本では古来より現在に至るまで、動物をテーマにした作品が数多く制作されてきました。京都国立近代美術館のコレクションにも、動物があらわされた作品をたくさん見ることができます。
当館の主な収蔵作家のひとり、河井寬次郎(1890-1966)は、猫を飼い、木彫や陶彫のモチーフとして用いるほどに猫好きだったことで知られています。当館は川勝堅一氏から寄贈された計425点にも上る河井寬次郎コレクションを有しています。その大半は壺や皿といったうつわですが、そんななかに《鉄薬陶彫 少女と猫》という作品があります。笑顔で猫をきゅっと抱きしめる女の子と、身動きせず大人しくしている猫の姿がなんとも愛らしいですね。
また河井より三歳年下の陶芸家石黒宗麿は、シェパードを何匹も飼うほどの愛犬家でした。彼が晩年過ごした八瀬陶窯からは、小さい犬が三匹あしらわれた陶片が見つかっています。こんな風に、作品を読み解いていった先に作家の素顔が垣間見られるのも、鑑賞のひとつの愉しみと言えるかもしれません。
さらに“犬が三匹”にちなんだコレクションといえば、石川光明《仔犬図硯箱》。作者の石川光明(1852-1913)は東京の宮彫師の家に生まれ、人物や動物をモチーフとした牙彫作品で実力を発揮。明治23(1890)年には帝室技芸員に任命され、国内外の博覧会で高い評価を受けました。この作品、金彩で桐文があしらわれ格式高さが漂う逸品ですが、蓋に彫られた三匹の仔犬が身体を寄せ合って覆いかぶさったりクンクン顔を近づけたりしている姿に、とっても癒されます。