映像:紐を通して
触察:安原理恵
このコンテンツでは、八瀬陶窯から掘り起こした石黒宗麿の陶片を、作家(Artist)、視覚障害のある方(Blind)、学芸員(Curator)がそれぞれの専門性や感性を生かして読み解き、さまざまな感覚を使う鑑賞方法を創造していきます。
ページを閉じる触察:安原理恵
テキスト:中村裕太
この陶片は、石黒の陶器としては稀な作りである。口のかたちは、宋磁にも見られるが、李朝の白磁のようでもある。花器のくびれのあたりにくっ付いた耳がまるで肘を曲げた人体のようにも見えてくる。こうした陶器は、富本憲吉(1886-1963)の陶器作りを思い起こさせる。富本は、1920年ごろより白磁や青磁の壺を作り始め、アリスティド・マイヨール(1861-1944)の抽象化された人体彫刻の柔らかい稜線を理想とした。そのため、石黒の陶器のように耳がくっ付くことはなかった。
テキスト:
壺の特定の部分について説明するとき、「口」「首」「耳」「胴」と、身体をあらわす言葉を使うことがあります。「首がきゅっとしまっている」とか「胴の部分がぽってりしている」とか・・・。身体になぞらえて話していると、だんだんと壺が人の身体のように感じられてくるかもしれません。
ところで京都国立近代美術館のコレクションには、こうした「見立て」を超えて、なんと実際に人の身体をあしらってしまった!という作品が。それが、スタンリー・タイガーマン《ティー&コーヒー・ピアッツァ》。お盆に「手」がついていたり、コーヒーポットとティーポットの持ち手が「おさげ」だったりと、作家の遊び心を感じさせるデザインになっています。
この作品は、1980年代にイタリアのアレッシィ社が11人の建築家にデザインを依頼したテーブルウェア・セット「コーヒー&ティー・ピアッツア」のひとつ。「ピアッツァ」とはイタリア語で市民広場の意味で、都市と人間の関わりをめぐる建築家たちのアイデアが、それぞれの遊び心やユーモアをまじえつつあらわされています。
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