このコンテンツでは、八瀬陶窯から掘り起こした石黒宗麿の陶片を、作家(Artist)、視覚障害のある方(Blind)、学芸員(Curator)がそれぞれの専門性や感性を生かして読み解き、さまざまな感覚を使う鑑賞方法を創造していきます。

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映像:耳が付いてて

触察:安原理恵

陶片からなにがみえるかな?

ヤワラカイ_ミミ

テキスト:中村裕太

宋磁の青白磁を彷彿とさせる陶片である。薄く線刻された模様もよく走っている。注目すべきは、壺の肩あたりに付けられた耳の作りである。おそらくは二から四個ほどくっ付いていたのだろう。はじめに粘土を紐状に伸ばし、なめし皮などで表面をなめらかに整える。次に、紐を二つに折り曲げ、合わさった両先端を器に抑え込む。最後にU字に重なってブラブラしている紐を下側に曲げ、親指でぐっと抑え込む。耳の作り方はそんなものだろうか。宋磁の水注などにもそうした作りをみることができる。器物の本体は轆轤によって精緻に作られているが、取っ手は柔らかい。石黒はそうした宋磁にみられる柔らかさをしっかりと捉えていたのだ。

景徳鎮窯青白磁木瓜形胴長水注
《景徳鎮窯青白磁木瓜形胴長水注》出典:小山冨士夫『宋磁』聚楽社、1943年

陶片はどんなコレクションと
つながるかな?

カラダを感じながら

テキスト: 松山沙樹 京都国立近代美術館 学芸課専門:教育普及

壺の特定の部分について説明するとき、「口」「首」「耳」「胴」と、身体をあらわす言葉を使うことがあります。「首がきゅっとしまっている」とか「胴の部分がぽってりしている」とか・・・。身体になぞらえて話していると、だんだんと壺が人の身体のように感じられてくるかもしれません。

ところで京都国立近代美術館のコレクションには、こうした「見立て」を超えて、なんと実際に人の身体をあしらってしまった!という作品が。それが、スタンリー・タイガーマン《ティー&コーヒー・ピアッツァ》。お盆に「手」がついていたり、コーヒーポットとティーポットの持ち手が「おさげ」だったりと、作家の遊び心を感じさせるデザインになっています。

この作品は、1980年代にイタリアのアレッシィ社が11人の建築家にデザインを依頼したテーブルウェア・セット「コーヒー&ティー・ピアッツア」のひとつ。「ピアッツァ」とはイタリア語で市民広場の意味で、都市と人間の関わりをめぐる建築家たちのアイデアが、それぞれの遊び心やユーモアをまじえつつあらわされています。

つながる京近美コレクション

  • 陶片 No.9
  • 陶片 No.9
  • 陶片 No.9

陶片詳細

作家名
石黒宗麿
制作年
1936-1968
サイズ
7.8cm×8.6cm×1.2cm
技法
青磁

番外編:どんな陶片だったかな?

鑑賞体験
「壺のなかはなんだろな?」

イベント概要

展覧会の会期中、考古学が専門の学芸員Mさん、陶芸家のYさん、小学6年生のKさんが「ツボ_ノ_ナカ_ハ_ナンダロナ?」を体験しました。壺のなかに入った陶片をそれぞれの切り口で言葉にし、意見を交わしながら鑑賞を深めていきました。

ABCコレクション・データベース vol.1 石黒宗麿陶片集

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