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陶片 No.9

陶片からなにがみえるかな?

ヤワラカイ_ミミ

テキスト:中村裕太

宋磁の青白磁を彷彿とさせる陶片である。薄く線刻された模様もよく走っている。注目すべきは、壺の肩あたりに付けられた耳の作りである。おそらくは二から四個ほどくっ付いていたのだろう。はじめに粘土を紐状に伸ばし、なめし皮などで表面をなめらかに整える。次に、紐を二つに折り曲げ、合わさった両先端を器に抑え込む。最後にU字に重なってブラブラしている紐を下側に曲げ、親指でぐっと抑え込む。耳の作り方はそんなものだろうか。宋磁の水注などにもそうした作りをみることができる。器物の本体は轆轤によって精緻に作られているが、取っ手は柔らかい。石黒はそうした宋磁にみられる柔らかさをしっかりと捉えていたのだ。

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景徳鎮窯青白磁木瓜形胴長水注
《景徳鎮窯青白磁木瓜形胴長水注》出典:小山冨士夫『宋磁』聚楽社、1943年

ABCコレクション・データベース vol.1 石黒宗麿陶片集

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