京都国立近代美術館

ルートヴィヒ美術館展
20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション

145 ヴォルフガング・マットホイアー《今度は何》

東ドイツ時代のライプツィヒ派を代表する画家、彫刻家。神話や聖書に由来するモチーフを巧みに使い、東西に引き裂かれた状況への葛藤や鬱屈した感情を吐露した。飛び損ねたイカロスの神話を取り上げた本作では、上空には羽だけが残り、墜落したイカロスは、その下の孤島に横たわる。この島で周囲との関係を絶って孤独に佇む人々の姿には、当時のマットホイアーの心の内を読み取ることができる。画家は、シュルレアリスムを思わせる画風を、無意識や夢の世界の表出ではなく、東ドイツという孤島で生きることの心情の暴露に用いた。

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