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開館状況  ─  

京都国立近代美術館研究論集 CROSS SECTIONS Vol. 8 (2016) 京都 : 京都国立近代美術館, 2008–ISSN 1883-3403 Vol. 8

序文

美術館を取り巻くいくつもの状況が大きく変化する昨今、人々のニーズは多様化し、美術館は単なる鑑賞の場だけではなく、公共性、 あるいは社会的な役割を視野に入れた活動へと変容の時期をむかえています。そんな中、多くの業務を抱えている研究員が、論文、 調査報告をまとめ上げたのが、この『Cross Sections』なのです。

第8号を数える今回は、「論文」、「研究ノート」、「調査報告」、「キュレトリアル・スタディズ」、「シンポジウム」「エデュケーショナル・ スタディズ」と6つの項目で構成されています。中でも、4階のコレクション展の一画を使用して研究の成果を発表する「キュレトリアル・スタディズ」は、 当館の研究員が日頃の研究成果を公開するという小企画です。また、この企画は、外部の研究者とも協力しながら進めた研究についても 発表する場となっています。所蔵品から派生した問題意識を核に研究を進め、それを形あるものとして公開できることは、ある種、美術館の理想的な 姿でもあります。本企画を当館の特色ある活動のひとつとして自負するとともに、その報告が本誌においてなされることは、館として非常に有意義な ことであると思っております。

さて、本号の内容と致しまして、まず論文は、当館の研究員、中尾優衣によるもので、明治後期から昭和にかけて図案家かつ陶芸家として活動し、 京都の工芸界に寄与した澤田宗山について、陶芸家として活動を始めるまでの過程を、澤田が手がけた図案集を軸に辿った興味深い一文となっています。

そして研究ノートでは、田村宗立の京都における洋画家の先駆けとしての側面にスポットを当て、先行研究や宗立と交流のあった人物による 記述を追うことで見えてくる宗立の足跡の考察を平井啓修研究員が行っています。この考察においては、当館所蔵の田村宗立関連資料を調査し、 京都府画学校時代の宗立の足跡にも言及しています。

調査報告は、また本号にも引き続き、中川克志氏(横浜国立大学准教授)と金子智太郎氏(東京藝術大学非常勤講師)によって、 サウンド・アートに関する調査報告をご寄稿いただいております。今回で連載も5回目を迎え、日本のサウンド・アートに関する様相が、 本誌においてまとまった形で蓄積を続けられていることに誇りを感じております。両氏には深く感謝申し上げます。

キュレトリアル・スタディズの章では、牧口千夏主任研究員が、オーストリア出身の美術家であるフロリアン・プムヘスルが、 近代日本ダダ運動グループの機関誌『マヴォ』とその周辺の前衛運動に関する調査・研究の報告として、2015年3月8日に行った ラウンドテーブルの講演録を一部抜粋・編集して収録したものと、次に開催されたスタディズ10の展示及びシンポジウムの意図、 意義を述べるとともに、展示構成のキーワードに従って、F・トルボット『自然の鉛筆』日本語訳からの抜粋テクストを掲載しました。

さらに、池田祐子主任研究員は、上野リチのテキスタイル・デザインを、ウィーン工芸学校からウィーン工房を経て、さらには京都での活動と、 時系列に沿って紹介、解説をし、その業績を論考しています。

さて、今回の号では、「シンポジウム」の項目を加えており、キュレトリアル・スタディズ10「写真の『原点』再考」に関連して開催された 討論会についての報告も掲載しました。

最後の項目であるエデュケーショナル・スタディズでは、当館の特定研究員の松山沙樹が、企画展に関連した教育普及事業としておこなった 小学校への出張授業の実施の詳細を報告しています。美術館と学校との協働とその成果を明らかにすることで、美術館の教育普及活動の 可能性をさぐる一文となっています。

ともあれ、このたびの8号もまた、日頃の研究、教育活動などを、多角的な視点でとらえながら、より充実した内容になったものと確信しております。 この報告書が、単に美術関係者のみに一読されるだけではなく、これからの美術館のさらなる活動に向かっての活発な議論の起爆剤になることを願っています。

今後とも、この研究論集にご支援、ご批判をお願い申し上げまして、巻頭のごあいさつとさせていただきます。

2017年2月
京都国立近代美術館長 柳原正樹

内容

■論文

澤田宗山に関する一試論 ― 図案集を手がかりに

中尾優衣(京都国立近代美術館 研究員)

■研究ノート

田村宗立研究 ―先行研究と所蔵資料の考察―

平井啓修(京都国立近代美術館 研究員)

■調査報告

日本におけるサウンド・アートの展開
―〈1980年代日本における音具〉をめぐるいくつかの文脈―

中川克志(横浜国立大学准教授)+ 金子智太郎(東京藝術大学非常勤講師)

■キュレトリアル・スタディズ08:

フロリアン・プムヘスル×MoMAK
日本のダダ雑誌『マヴォ』研究―その翻訳の可能性

牧口千夏(京都国立近代美術館 主任研究員)

■キュレトリアル・スタディズ09:

上野リチのテキスタイル・デザイン ~ウィーン工房から京都へ

池田祐子(京都国立近代美術館 主任研究員)

■キュレトリアル・スタディズ10:

写真の「原点」再考―ヘンリー・F・トルボット『自然の鉛筆』から

牧口千夏(京都国立近代美術館 主任研究員)

■シンポジウム「写真の複数の〈原点〉―複写・複製・写し」
 ―キュレトリアル・スタディズ10:写真の「原点」再考―
 ヘンリー・F・トルボット『自然の鉛筆』から

・シンポジウム企画趣旨について

青山勝(大阪成蹊大学准教授)

・発表1:『自然の鉛筆』再考―『自然の鉛筆』の原点と復刻、その展開と原動力

マイケル・グレイ(フォックス・トルボット・ミュージアム元館長)

・発表2:Making drawing with camera obscura

畠山直哉(写真家)

・討議/総括

マイケル・グレイ(フォックス・トルボット・ミュージアム元館長)、
畠山直哉(写真家)、佐藤守弘(京都精華大学教授)、青山勝(大阪成蹊大学准教授)

■エデュケーショナル・スタディズ

出張授業「和食の盛りつけを学び、おもてなしの工夫をしよう」を振り返って

松山沙樹(京都国立近代美術館 特定研究員)