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京都国立近代美術館研究論集 CROSS SECTIONS Vol. 3 (2010) 京都 : 京都国立近代美術館, 2008–ISSN 1883-3403 Vol. 3

序文

 近年、独立行政法人国立美術館の運営・評価に際して、展覧会や普及教育関連の活動とともに、これらの活動から得られた研究員の研究成果を、各種学会での発表や学術論文として公表すること、さらには科学研究費をはじめとする外部資金の獲得などによって、これらの研究成果を広く発信することが、以前にも増して強く求められています。しかしながら、毎年様々の展覧会を担当しながら、他館の展覧会へのコレクションの貸与をはじめとする協力や、近年ことに大きな関心が寄せられている教育普及の実現など、これらの実際の活動に費やされる業務量もきわめて多く、研究成果を着実にまとめ発表する機会を得るのにも厳しい現状が横たわっています。

 そうした状況を踏まえ、京都国立近代美術館では平成18年度に、このような研究成果発表の場として館独自の視点による論集を編んで、これらの活動を毎年研究報告の形で公にして議論に供することを目指し、研究誌を創刊いたしました。本研究誌は、その第三号として公刊の運びとなりました。

 今回は、当館の研究員を中心として構成され、平成21年度に採択された科学研究費補助金(基盤研究(A))「東西文化の磁場 日本近代建築・デザイン・工芸の脱ー、超ー領域的作用史の基盤研究」による研究成果の紹介の場ともなっています。この研究は、平成21年度に当館の前館長・岩城見一氏を研究代表者として(岩城館長退任にともない、研究代表者は筆者に交代しています)、当館のすべての研究員と、大学及び国際日本文化研究センターなどに所属されている方々計19名によって構成されたものであり、平成24年度まで4年間の大型研究プロジェクトであります。

 そして、一昨年の11月に、京都国立近代美術館において、本科研による第1回シンポジウム「『東西文化』交流の視点から見た19世紀末京都における一動向―第四回内国勧業博覧会開催(1895年)前後を中心に」を開催いたしました。

 このシンポジウムでは、「日本近代」の枠組みを「19世紀末・京都」におき、建築、工芸、絵画などのジャンルを視野に「東西文化交流」の一側面を探ろうと、当館が位置する東山・岡崎公園の成立とも深くかかわる「第四回内国勧業博覧会」をその中心テーマといたしました。パネラーとして海外からも研究者を招き、同博覧会に出品された黒田清輝の幻の問題作《朝妝》について取り上げるほか、博覧会のパビリオンとして構想された平安神宮の造営、さらには視野を広げて、岡崎公園に記念碑も建立されているゴットフリート・ワグネルや海外万国博覧会への出品作品などについて発表、討議を行いました。

 さらに今回は、当館のコレクション・ギャラリーにおいても、本シンポジウムと連動した小企画を開催し(10月27日から12月27日まで)、当館の寄託品となった伊東忠太と木子清敬による《平安神宮創建時の図面》九葉をはじめ、田村宗立の油画など20点を陳列しました。今回の科研は、美術館における展覧会の開催で得られた研究成果を基盤としており、その意味からも、小企画ではありますが、このようなシンポジウムと連動した展示は、科研の成果発表に新機軸といって過言ではないでしょう。

 さらに、今回の研究誌は、岩城見一・前館長が継続して論文を寄稿されるとともに、当館客員研究員であり、「東西文化の磁場」科研の研究協力者でもある中川克志も、論文を寄稿しています。筆者は、当館の「上野伊三郎+リチコレクション」とも関連し、科研でのテーマ「『建築から工芸へ』の一視点ー上野伊三郎・リチ夫妻の活動を中心に」にかかわる拙稿を寄稿しました。また、平成21年度に、当館のキュレーター研修生として一年在籍された大山崎山荘美術館学芸員・杉浦美紀氏は、その研修成果の一端として「試論」を寄稿され、本研究論集がより開かれたものとして機能していることもご了解いただけるでしょう。そして当館主任研究員・池田祐子は、前号に続いて、将来展覧会を計画しているヨーロッパに所蔵の「型紙」について、今回はチェコとハンガリーの調査報告を寄稿しています。さらに「東西文化の磁場」科研の研究分担者のひとりである国際日本文化研究センター教授・稲賀繁美氏の論考も、今年度科研の研究成果の一端として掲載いたしました。

 本研究論集は、ここに第三号が刊行の運びとなりましたが、美術館が発信する研究誌として、とりわけ京都国立近代美術館が発行する研究誌として他に類をみない性格をもちはじめてきたのではないかとも自負しております。来年度には、当館の主任研究員がキュレターをつとめたパリでの工芸展の開催に際して、本科研「東西文化の磁場」をテーマに開催されたシンポジウムの報告と、発表原稿もすべて掲載する予定にしております。どうぞ今後とも、本研究誌にご支援・ご批判賜りますことを願い、巻頭のあいさつといたします。

2011年1月
京都国立近代美術館 学芸課長 山野 英嗣

内容

■論文

東洋伝統絵画における「色」――画論とその周辺

岩城見一(京都国立近代美術館 前館長)

クリスチャン・マークレイ試論――見ることによって聴く

中川克志(京都国立近代美術館 客員研究員)

■研究ノート

上野伊三郎、日本インターナショナル建築会とバウハウス

山野英嗣(京都国立近代美術館 学芸課長)

津田青楓の図案制作について

杉浦美紀(アサヒビール大山崎山荘美術館 学芸員)

■調査報告

海外所蔵の日本の染型紙の調査研究――チェコとハンガリー

池田祐子(京都国立近代美術館 主任研究員)

■特集

シンポジウム
「東西文化」交流の視点から見た一九世紀末京都における一動向
 第四回内国勧業博覧会開催(一八九五年)前後を中心に

山野英嗣(京都国立近代美術館 学芸課長)

黒田清輝の《朝妝》と第四回内国勧業博覧会

アリス・Y・ツェン(ボストン大学美術史学部 准教授)

ゴットフリート・ワグネルと京都

松原龍一(京都国立近代美術館 主任研究員)

明治後半期、海外万国博覧会出品作品の制作過程と意義
 ――高島屋の染織出品作品を考察する――

廣田 孝(京都女子大学 教授)

創出された平安神宮
 ――発見された図面・伊東忠太の苦悩・小泉八雲のまなざし――

川島智生(建築史家/神戸女学院大学 非常勤講師)

Object and Images:
Exploring Visual and Material Culture in Japan

稲賀繁美(国際日本文化研究センター 教授)