展覧会
ジュエリーは誰を夢みる(仮称)
2026.10.24 sat. - 01.17 sun.
コンテンポラリージュエリーは、「身体を志向する自己言及的なスタジオクラフト」だと言われます。1950年代以降、作品と着用者、そしてそれを見る相手との関係性のなかで、ジュエリーに紐づけられた既存の価値観(貴重性や富の象徴など)に疑問を投げかけながら、より多岐にわたる表現を包括するように変化を続けています。
日本においてジュエリーは、1964年に日本ジュエリーデザイナー協会(JJDA)が設立されたものの、未だ一般的とはいえず、その後30年ほどの間に、経済成長に伴って急速に普及しました。ただし、芸術表現としてのジュエリーという領域は、あまり知られていません。
1970年の「国際ジュウリー・アート展」(西武百貨店渋谷店)は、世界的にも早い時期の国際展であり、JJDA初代会長の菱田安彦(1927–1981)や平松保城(1926–2012)などを中心としながら、作家同士の直接の交流を通して、欧米の新しい動向が同時代に紹介されてきました。80年代後半からは、例えばヒコ・みづのジュエリーカレッジ(水野孝彦氏設立)のような教育機関などを中心に、海外作家の滞在制作やワークショップがおこなわれ、作家性の強いジュエリー表現が継続的に模索されています。
京都国立近代美術館では、1984年に「今日のジュエリー 世界の動向」展を開催しましたが、現在では、同展に出品されたオットー・キュンツリ(b. 1948)やキャロライン・ブロードヘッド(b. 1950)など先駆的な作家に学び、次の世代として活躍する日本人作家も多くいます。
身に着け、使用することで成り立つジュエリーは、「生活の豊かさ」を想起させるものです。戦争の記憶も色濃い50年代半ばに、簡単な指輪を作り始めたという平松は、展覧会のためではなく、「人間生活の上で、その物に意義があるか、価値があるかが問題」だと言っています。80年代に専門学校のカリキュラムを大幅に変更した水野は、ジュエリーを「生活良品」という「情緒的に人間に必要なもの」であり、「その人らしさを表わす物」と捉えて、実務教育以外にも積極的に取り組んできました。主に女性を対象とする商品としての側面に目を向け、ジェンダーの問題を内包する作品も多く、ジュエリーを通した「生活の豊かさ」の問い直しは、クリティカルな観点からも試みられてきたといえるでしょう。
本展では、欧米を中心に語られることの多いコンテンポラリージュエリーについて、戦後の日本に視点を据えた「私たちの物語」を再考します。
会期
2026年10月24日(土)~2027年1月17日(日)
開館時間
午前10時~午後6時
金曜日は午後8時まで開館
*入館は閉館の30分前まで
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オットー・キュンツリ、ブローチ《スイス・ゴールド》1983年、京都国立近代美術館蔵
©Otto Künzli, VG Bild-Kunst, Bonn 2025
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ハイス・バッカー、ネックレス《露の滴》1982年、京都国立近代美術館蔵
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いしかわまり、リング《in the shade of the tree》、2006年、作家蔵
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嶺脇美貴子、ネックレス《Mike》2017年、作家蔵
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田口史樹、ブローチ、ペンダント《The memory to relive》2019年、作家蔵
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新里明子、マウスピース《Putting on Someone’s Identity―mouth》Another Skinシリーズ、2015年、作家蔵
主催
京都国立近代美術館
特別協力
専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
巡回
島根県立石見美術館 2027年3月20日(土)~6月21日(月)
山梨県立美術館 2027年7月3日(土)~8月29日(日)