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展覧会「没後10年 麻田 浩展」電子メール討論会をはじめるに際して

「没後10年 麻田 浩展」電子メール討論会をはじめるに際して


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  「没後10年 麻田 浩展」を担当いたしました当館主任研究員の山野英嗣です。
  これから、本展覧会の最終日(9月17日)に開催予定のシンポジウムに向けて、まず担当者として記したいと思います。
  ご承知のように、このたび企画しました本展覧会は、画家・麻田 浩(1931–1997)の全画業を紹介するはじめての回顧展であります。したがいまして、シンポジウムに向けて「電子メール討論会」をすすめるに際しましても、まず一般の方々は、麻田 浩についての情報あるいは感想について、ほとんどお持ちでないのが実情ではないかと思います。このことは、本展覧会を開催いたしました美術館についても同じことで、過去に開かれた個展(これもすべてが、画廊あるいは百貨店を会場としたもの)のカタログもきわめて限られ、個人画集も出版されてはおらず、資料の収集も困難をきわめました。ささやかながらも、そのひとつの成果として、本展覧会カタログが、麻田 浩についての「画集」となるのではないかと思い、本展覧会図録では、年譜も充実させ、さらには展覧会に出品されてはいない作品(おおよそ10号以上のもの)も、可能な限りカラーで収録する態勢を整え、まずは画家・麻田 浩の画業の全容を知っていただけるよう心がけました。むしろ本展覧会をご覧いただき、また図録を手にとっていただくことで、皆様方の心のなかで、自由に「麻田 浩像」を形成していただき、感想を寄せていただければとも思います。
  ただ、私自身も今回の展覧会を準備してゆく過程で驚きましたのは、数は少なくとも、全国に熱烈な「麻田 浩ファン」がおられることです。そして、そうした方々が、大切に麻田作品を所蔵されているということも知りました。このたびの展覧会は、はじめての回顧展ではありますが、今後そのような方々の熱い思いも結集され、将来的には、どこかでさらなる展覧会が実現することもまた、可能になるかもしれません。その意味で、まさに本展覧会がそのスタート台となれば、関係者一同これにまさる喜びはありません。
  今回企画いたしましたこの「電子メール討論会」では、「麻田ファン」の方々にも、自らの熱い思いを寄せていただきたく思います。そして、今回の展覧会ではじめて、麻田絵画に潜む「宗教的テーマ」の重要性もクローズアップされたと思われます。当館が所蔵する麻田 浩の代表作《地・洪水のあと》(1985–86)にも、そのことは明確です。さらには、麻田絵画と文学との関係や、麻田 浩が手がけ高い評価を得た版画作品についてなど、テーマもふくらんで参ります。
  積極的なご投稿をおまち申し上げております。

(2007/08/02 京都国立近代美術館主任研究員・山野英嗣)

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