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展覧会ピカソ 愛と苦悩一「ゲルニカ」への道

ピカソ 愛と苦悩一「ゲルニカ」への道

 この展覧会は20世紀美術を代表する画家パブロ・ピカソの代表作の一つである『ゲルニカ』に焦点を絞り、その成立過程と状況を明らかにする企画であった。1937年のパリ万国博覧会のスペイン政府館壁画として制作された『ゲルニカ』は、ピカソの代表作として知られ、しばしば反戦平和の象徴として引き合いに出されてきたが、視点を少し変えて『ゲルニカ』の誕生をピカソ個人の営みとして明らかにしようとした。『ゲルニカ』は、1937年、スペインのバスク地方をナチス・ドイツが爆撃し多くの罪なき人々が犠牲になったことを知ったピカソが、暴力の不条理や戦争の悲惨を暴き平和を希求して描いたとされてきたが、本展ではゲルニカに内在するモティーフや主題の幾つか(「闘牛」、「礫刑」、「ミノタウロス」、「女」、「アトリエ」)を抽出し、それらが『ゲルニカ』の前後で如何に『ゲルニカ』へと展開し『ゲルニカ』から如何に展開したかを辿ることで、ゲルニカ爆撃という唯一の契機によってではなく、社会的な変動と個人的な生活の中で動いて止まないピカソの心理的テーマの複合体として『ゲルニカ』を説明しようと試みた。現在『ゲルニカ』は、プラド美術館に所蔵されレイナ・ソフィア芸術文化センターに寄託展示されているが、門外不出の状況にあり、代わって等寸大の写真複製を資料として、またピカソの人と生活を偲ぶ写真パネル、「ゲルニカ」に関連する当時の美術雑誌等を展示し、補足説明とした。一般鑑賞者の方々が、戦後50年目の年に開催された本展を契機にして、どの程度『ゲルニカ』に担わされてきた政治性に対して改めて関心を示したかは不明だが、展覧会に対する反響として、これまで余り焦点を当てられてこなかったピカソの私的側面や内面の問題が多くの人々の共感や関心を呼んだ事がまず挙げられるだろう。(永井隆則)

会期
10月31日(火)、12月17日(日)
入場者数
151,517人(1日平均3,608人)
共催
東武美術館・朝日新聞社
出品目録
作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
《ゲルニカ》のための習作N0.6 1937 鉛筆、板に石膏下地 53.7×64.7
《ゲルニカ》のための習作No.10 1937 鉛筆、グアッシュ、板に石膏下地 60.0×73.0
フランコの夢と嘘Ⅰ 1937 エッチング、シュガー、アクアチント、紙 31.7×42.2
フランコの夢と嘘Ⅱ 1937 エッチング、シュガー、アクアチント、紙 31.8×42.2
闘牛と六つの鳩の習作 1892 鉛筆、紙 13.0×20.2
闘牛 1896 油彩、板 13.7×22.1
闘牛の光景 1900 鉛筆、紙 20.8×26.0
闘牛の光景 1900 ペン、青鉛筆、紙 23.3×17.3
闘牛のクロッキー 1900 ペン、紙 20.7×13.3
ピカドールと介添人 1900 ペン、水彩、紙 16.5×14.7
闘牛場面のスケッチー止めの一突き 1900 ペン、紙 13.6×20.9
闘牛場の闘牛士たち 1900 ペン、紙 11.6×17.5
ピカドールのきまざまなクロッキー、その他 1900 鉛筆、ペン、紙 21.0×13.6
闘牛の観客 1903 ペン、紙 31.5×21.8
牡牛と馬 1921 鉛筆、紙 25.0×32.3
闘牛 1922 油彩、鉛隼、板 13.6×19.0
構成:女と牡牛 1930 ペンと青のインク、不規則に切断きれた升目入りの紙 18.2×13.0/13.5
オルフェウスの死(『変身譚』第11章挿絵) 1931 エッチング30点 32.4×26.7
牡牛の頭部 1931-32 ブロンズ(1点のみ鋳造) h35.0×w55.0×d53.0
牡牛と馬と横たわる女 1934 エッチング、紙 24.0×30.0
闘牛:女闘牛士の死 1933 油彩、鉛筆、板 21.7×27.0
闘牛:闘牛士の死 1933 油彩、板 31.0×40.0
白日の死 1933 ドライポイント、ラヴイ、紙 20.0×28.0
女闘牛士 1934 エッチング、紙 29.7×23.6
女闘牛士 1934 エッチング、紙 57.2×77.8
馬を突き刺す牡牛 1934 墨、紙 12.0×25.5
馬の腸を裂く牡牛 1934 鉛筆、紙 26.0×34.5
蝋燭を持つ女と牡牛と馬の闘争 1934 ペン、墨、褐色の鉛筆、合板に布 31.5×40.5
闘牛 1934 油彩、カンヴァス 50.0×61.0
大闘牛 1934 エッチング、紙 57.2×77.8
闘牛 1934 油彩、カンヴァス 33.0×41.0
闘牛 1935 パステル、墨、紙 17.5×25.5
犬の頭部とキリストの磔刑 1892 鉛筆、紙 15.8×20.0
キリストの磔刑 1896-97 油彩、紙 74.0×55.0
十字架上のキリスト 1902 鉛筆、紙 37.2×26.8
磔刑 1915-18 鉛筆、紙 36.0×26.6
磔刑(東京展のみ) 1917 鉛筆、紙 29.0×22.6
磔刑 1930 油彩、合板 51.5×66.5
磔刑 1932 墨、紙 34.0×51.0
磔刑(東京展のみ) 1932 ペン、墨、紙 25.5×33.0
ミノタウロス 1935 毛織り、絹 142.0×237.0
ミノタウロス 1933-34 木炭、紙 28.7×13.5
抱擁 1933 ドライポイント、紙 29.7×36.6
抱擁 1933 ドライポイント、紙 29.7×36.7
アマゾンを攻撃するミノタウロス 1933 エッチング、紙 19.4×26.8
酒を飲むミノタウロスと横たわる女 1933 エッチング、紙 19.4×26.8
酒を飲むミノタウロスと二人のモデルを伴う彫刻家 1933 エッチング、紙 19.3×26.9
闘牛場で若者に殺きれるミノタウロス 1933 エッチング、紙 19.3×26.9
眠る少女の上に跪くミノタウロス 1933 ドライポイント、紙 30.0×37.0
女を愛するミノタウロス 1933 ドライポイント、紙 29.9×36.8
ミノタウロス 1933 木炭、紙 51.0×34.0
少女に導かれる盲目のミノタウロス(東京展のみ) 1934 木炭、紙 51.0×35.0

作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
野生の花束を持つ少女に導かれる盲目のミノタウロスと《マーラの死》のためのスケッチ 1934 エッチング、ビュラン、紙 25.2×34.8
海辺で少女に導かれる盲目のミノタウロス 1934 鉛筆、紙 34..5×51.4
鳩を持つ少女に導かれる盲目のミノタウロス 1934 エッチング、紙 23.9×30.0
羽ばたきする鳩を持った少女に導かれる盲目のミノタウロス 1934 エッチング、ビュラン、紙 22.6×31.2
夜、羽ばたきする鳩を持った少女に導かれる盲目のミノタウロス 1935頃 マニェール・ノワール、アクアチント、紙 24.7×34.7
仮面をつけた人物と女の顔の鳥 1934 アクアチント、紙 24.9×34.8
怪物をながめる四人の子供たち 1934 エッチング、紙 23.8×29.8
ミウタウロマキア 1935 エッチング、スクレイパー、紙 ※49.7×69.3
49.7×69.0
雌馬と仔馬を荷車で運び去るミノタウロス(東京展のみ) 1936 ペン、墨、紙 50.5×66.0
荷車を引くミノタウロスー星空 1936 油形、カンヴァス 46.0×55.0
構成(ミノタウロスと女) 1936 鉛筆、墨、水形、紙 50.0×66.0
傷ついたミノタウロス、馬に乗る人と人物 1936 墨、グアッシュ、紙 50.0×65.0
傷ついたミノタウロス、馬と人物(東京展のみ) 1936 墨、グアッシュ、ペン、紙 50.0×65.0
サテュロスと眠る女 1936 アクアチント、紙 31.7×41.7
戦闘 1937 ドライポイント、紙 39.5×49.6
小舟に乗る水の精たちと傷ついた牧神 1937 油彩、木炭、カンヴァス 46.0×55.0
毛皮の衿をつけたオルガ 1923 油彩、カンヴァス 116.0×80.5
壁に掛かったギター(マリー=テレーズ) 1927 油彩、カンヴァス 27.1×34.9
肘掛椅子にすわる女 1927 油彩、カンヴァス 81.0×65.0
肘掛椅子で眠る女 1927 油彩、カンヴァス 92.0×73.0
レンガ色の背景の中の顔 1928 木炭、油彩、カンヴァス 65.0×46.0
1928 リトグラフ、紙 20.4×14.2
短剣を持つ女 1931 油彩、カンヴァス 46.5×61.5
赤い肘掛椅子にすわる女 1932 油彩、カンヴァス 130.2×97.0
横たわる裸婦 1932 油彩、カンヴァス 130.0×161.0
赤い枕で眠る女(東京展のみ) 1932 油彩、カンヴァス 38.0×46.0
救助 1932 鉛筆、紙 34.0×51.5
救助 1932 エッチング、紙 16.0×20.0
水浴する女たち 1933 混合技法、紙 23.8×29.8
殺人(東京展のみ) 1934 鉛筆、紙 39.8×50.4
二人の女 1934 油彩、カンヴァス 82.0×65.0
横たわる裸婦 1936 油彩、カンヴァス 130.5×162.0
花売り 1937 油彩、カンヴァス 81.0×65.0
マリー=テレーズの肖像 1937 油彩、カンヴァス 46.0×38.0
泣く女 1937 アクアチント、エッチング、ドライポイント、紙 72.3×49.3
泣く女 1937 油彩、カンヴァス 55.5×46.3
泣く女 1937 油彩、墨、紙 25.5×17.3
壁の前でなく女 1937 アクアチント、ドライポイント、紙 34.8×24.8
ドラ・マールの肖像 1937 油彩、カンヴァス 92.0×65.0
ドラ・マールの肖像 1937 油彩、木炭、カンヴァス 55.0×38.0
花飾りの女 1939 油彩、カンヴァス 54.0×32.5
泣く女 1939 油彩、カンヴァス 55.0×38.0
ドラ・マール 1941 鉛筆、紙 32.0×22.0
泣く女 1943 油彩、板 64.5×54.0
石膏の頭部のあるアトリエ 1925 油彩、カンヴァス 97.9×131.1
アトリエ:横顔の肖像と彫刻の頭部 1928-29 油彩、カンヴァス 162.0×130.0
彫刻家 1931 油彩、合板 128.5×96.0
彫刻家、横たわるモデル、馬と若者の彫刻 1933 エッチング、紙 19.3×26.8
彫刻家とモデル、牡牛の彫刻と二人のバッカス神の信徒 1933 エッチング、紙 19.6×26.7
モデルと超現実主義の彫刻 1933 エッチング、紙 26.8×19.3
静物:パレット、燭台、ミノタウロス像 1938 油彩、カンヴァス 73.7×90.2
静物:燭台、パレットと牡牛の頭部 1938 油彩、カンヴァス 97.0×130.0

作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
赤い牡牛の頭部のある静物 1938 油彩、エナメル、カンヴァス 97.0×130.0
牡牛のの頭蓋骨、果物、水差し 1939 油彩、カンヴァス 59.2×91.6
牡牛の頭蓋骨のある静物(東京展のみ) 1942 油彩、カンヴァス 130.0×97.0
頭蓋骨のある静物 1942 油彩、板 97.0×130.5
鳩のある静物 1941 油彩、カンヴァス 60.0×73.0
静物 1944 油彩、カンヴァス 65.7×92.1
黒い水差しと頭蓋骨 1946 リトグラフ、紙 32.5×44.0

資料展示
雑誌『ドキュマン』(1929~、2巻本)、『カイエ・ダール』(1937年1~3号、4~5号)、『ミノトール』(1933年6月創刊号)、『ピカソ素描帖(ファクシミリ)』、『サン・スヴェールのベアトス本(写本)』、ゲルニカ原寸大複製写真、ピカソ関連写真パネル30枚、ドラ・マール撮影『ゲルニカ』制作過程写真8枚
※順に東京都現代美術館、川村記念美術館所蔵作品寸法。それぞれ、京都会場、東京会場に出品
新聞雑誌関係記事
●新聞記事
朝日(夕):9月30日(田村紘一)
朝日(夕):10月25日(無署名)
朝日(夕):10月28日(無署名)
朝日(夕):10月30日(大高保二郎)
朝日(夕):10月31日(無署名)
朝日(夕):11月2日(永井隆則)
朝日(夕):11月3日(永井隆則)
朝日(夕):11月7、10日(永井隆則)
読売:11月7日(無著名)
読売(夕):11月9日(末)
京都(夕):11月22日(富山秀男)
朝日(夕):11月24日(無署名)
毎日(夕):12月1日(無署名)
朝日(夕):12月2日(無署名)
産経:12月3日(無署名)
朝日:12月3日天声人語
京都:12月10日(河野健二)
京都:12月16日(0)
日経:12月29日(宝玉正彦)
●雑誌記事
Tea Time Art The Gold lO月号(永井隆則)
視る 341号11月号(友井伸一)
視る 342号12月号(岸本実香子)
視る 344号-345号 ’96年2月~3月号(永井隆則)
文化庁月報No.325 10月号(永井隆別)
美術画報Vol.5 10月号(無署名)
Information Art 11月号(無署名)
美術手帖Vol.48 Nα718 ’96年1月号(大倉美恵子)
日経アート 12月号(小西信之)

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