展覧会移行するイメージ:1980年代の映像表現
移行するイメージ:1980年代の映像表現
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写真は1960年代に、ポップ・アートがすでに媒体として用い、70年代にはコンセプチュアル・アートに於てさらに実践的に用いられたが、80年代の、写真を媒体とした映像表現は、それまでのものと全く異り、従来の写真の枠組や問題意識から離れ、先にも述べた今日の社会や文化に対する極めて有効な批評的表現手段として用いられている。従って、アーティストたちの関心は、写真というイメージが、マス・メディアによって量産され、殆ど社会全体を覆い尽くし、人々の感性にも大きな変化をもたらすなど、現代に現出させた新しい問題に向けられる。それは、とりもなおさず、こうした量産や流通のシステムを創り出した現代社会に対して疑問や批判を投げかけるものである。彼等の間は、そこから更に、こうしたシステムの中で生み出されてゆく美術作品の生産と消費の問題、従来の美術史やそれに支えられた美術館や画廊という文化の一形式にまで至っている。
この展覧会は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本から26名の作家を選び、その映像表現を紹介しているが、大判のカラー・プリント、ピンホール・カメラ、コンピューター・スキャンによる映像の合成や素材の変換、電飾写真による構成など、その表現形式は実に多様である。
この展覧会は本館の特別展として企画されたが、本館での会期終了後、1990年11月20日より1990年12月16日まで、東京国立近代美術館においても開催された。
本展は1980年代の現代美術の諸動向の中で重要な局面を成していた写真を媒体としてアーティストたちの作品に注目し、彼らの取り組んできた表現の問題や社会、文化などについての批評的発言を、あらためて検証しょうとするものであった。
- 会期
- 9月23日(火)-11月12日(日)
- 入場者数
- 17,025人(一日平均387人)
- 共催
- 東京国立近代美術館
- 出品目録
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材質・技法等 |
---|---|---|---|
デニス・アダムス | チケット売場 | 1989 | 合成樹脂板、合板、プレキシグラス、蛍光灯、電飾写真:混合技法 |
ベルンハルト+アンナ・ブルーム | 餐宴(「ホーム・スイート・ホーム」シリーズから) | 1986 | ゼラチン・シルバープリント |
クリスチャン・ボルタンスキー | コンポジション・モデルネ | 1982 | カラー写真 |
〃 | イメージ・モデル | 1986 | カラー写真 |
ソフィー・カル | 墓 | 1990 | ゼラチン・シルバープリント、カードラ・メダル |
ヘレン・チャドウィック | ウィルスの風景No.1 | 1988-89 | コンピューター合成によるカラー写真 |
ヘレン・チャドウィック | ウィルスの風景No.4 | 1988-89 | コンピューター合成によるカラー写真 |
ハンナ・コリンズ | 地面の汚い穴 | 1989 | ゼラチン・シルバープリント |
〃 | 食物 | 〃 | 〃 |
〃 | 葡萄 | 〃 | 〃 |
バーバラ・エス | 無題 | 〃 | カラー写真 |
〃 | 〃 | 〃 | 〃 |
〃 | 〃 | 〃 | 〃 |
〃 | 〃 | 1990 | 〃 |
エヴェルガン | 夜の女 | 1988 | ポラロイド写真 |
〃 | 眠る人 | 1987 | 〃 |
〃 | 死せる狩人 | 1988 | 〃 |
ピーター・フィッシュリ | |||
デヴィド・ヴァイス | ものの成り行き | 1986-87 | ヴィデォ・テープ |
〃 | <ものの成り行き>からのスチール写真 | 1986-87 | カラー写真 |
アン・ハミルトン | 吸収力:テンポラリー・コンテンポラリーにおけるインスタレーション | 1988-89 | 〃 |
カレン・ノール | ロゴスの終末(目利きの世界より) | 1989 | チバクローム・プリント |
〃 | 標準的な概念の辞典(目利きの世界より) | 〃 | 〃 |
〃 | リベルテン風読書術(目利きの世界より) | 〃 | 〃 |
〃 | 想像の愉しみ(目利きの世界より) | 1981-89 | 〃 |
〃 | 古くさいシンメトリーの世界を粉砕する(目利きの世界より) | 1989 | チバクローム・プリント |
ジェフ・クーン | 静かなテーブルを捜して | 1986 | キャンバスにオイル・インク |
〃 | 味を提供します | 〃 | 〃 |
〃 | マーテルを飲んでいますか | 〃 | 〃 |
小山穂太郎 | 空間・療養所の夕刻の景(1986年6月-9日) | 1989 | ゼラチン・シルバープリント、漂泊 |
ルイーズ・ローラ | パリ、ニューヨーク、東京で買ったステラのインドの小旗IV(部分)と真鍮鉢…銀行から購入し、現在ヴィクトル・ユーゴ街に在る1966/1986 | 1986 | チバクローム・プリント、赤と青のトランスファータイプ |
シヤルル・マトン | 再構成、4番目の部屋 | 1990 | ミクスド・メディア |
アネット・メサジェ | 私の願い | 1989 | インスタレーション、カラー写真262枚 |
〃 | 私の記念品 | 1987 | カラー写真 |
〃 | 私の肖像 | 1988 | インスタレーション、26点の人形と写真 |
森村泰昌 | ポートレイト(九つの顔) | 1989 | カラー写真 |
〃 | ポートレイト(双子) | 1988 | 〃 |
〃 | FingeredCitrons(Nojima)1-4 | 1990 | 〃 |
野村 仁 | 西歴1986年の巡礼(ハレー彗星の帰還) | 1986-87 | 〃 |
〃 | 西歴1910年の巡礼(ハレー彗星の帰還) | 1986-89 | 〃 |
〃 | 西歴2062年の巡礼(ハレー彗星の帰還) | 〃 | 〃 |
〃 | 北緯35度の太陽 | 1982-87 | カラー写真によるインスタレーション |
リチャード・プリンス | エンターテイナーズ | 1982-83 | エクタカラー・プリント、12枚パネルによるインスタレーション |
リチャード・プリンス | プラスティック(ルーアンの双子の姉妹) | 1983 | |
〃 | ルーアン | 1982 | |
〃 | リロ | 1983 | |
〃 | ヴィクトリア | 〃 | |
〃 | ラッセル | 〃 | |
〃 | タマラ | 〃 | |
〃 | クリスティ | 1982 | |
〃 | キャロル | 〃 | |
〃 | ジャッキー | 1983 | |
〃 | ニッキ | 1982 | |
〃 | ローラ | 〃 | |
〃 | フェイ | 1983 | |
オリヴィエ・リション | イミタシオ・サピエンス:フランス・フランケン2世とデヴィド・テニールスから、ピクチャー・ギャラリー | 1989 | カラー写真 |
〃 | 〃 | 〃 | 〃 |
〃 | イミタシオ・サピエンス:ピーテル・サーンレダムから、ユトレヒト大聖堂 | 〃 | 〃 |
〃 | イミタシオ・サピエンス:ダービのジョセフライトから、夜のアークライト紡績工場 | 〃 | 〃 |
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材質・技法等 |
---|---|---|---|
ジョルジュ・ルース | 無題-チュール | 1990 | アルミニューム板にチバクローム |
〃 | 〃 | 〃 | 〃 |
〃 | 〃 | 〃 | 〃 |
〃 | 〃 | 〃 | 〃 |
アンドレ・セラノ | 小便漬けのキリスト | 1987 | チバクローム・プリント |
〃 | 白いキリスト | 1989 | 〃 |
〃 | 赤い法王I | 1990 | 〃 |
〃 | 赤い法王II | 〃 | 〃 |
〃 | 赤い法王III | 〃 | 〃 |
ロリー・シモンズ | 歩くトイレ | 1989 | 白黒写真 |
〃 | 歩くカメラII(ジミー・ザ・カメラ) | 1987 | 〃 |
〃 | 歩くマイクロフォン | 1989 | 〃 |
ダグ&マイク・スターン | 人のいるフィルム・トンネル | 1987-88 | フィルム、シルバープリント、にかわ塗りの木材、調色シルバープリント |
〃 | 無題(拡大されたキリスト) | 1985-87 | 調色シルバー・プリント、テープ、フィルム、木 |
パトリック・トサニ | サーキットNo.2 | 1989 | チバクローム・プリント |
〃 | サーキットNo.5 | 〃 | 〃 |
〃 | サーキットNo.6 | 〃 | 〃 |
トマス・シュトゥルース | ウィーン美術史美術館1 | 1989 | カラー写真 |
〃 | ウィーン美術史美術館3 | 〃 | 〃 |
〃 | ルーヴル美術館3、パリ | 〃 | 〃 |
〃 | ルーヴル美術館4、パリ | 〃 | 〃 |
〃 | アムステルダム国立美術館 | 1990 | 〃 |
- 新聞雑誌関係記事
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新聞記事
読売/9月20日(夕)「写真イメージの変革」(河本信治)
朝日/9月27日、10月20日(吉村良夫)
毎日/9月27日、11月8日(夕)
産経/10月4日
京都/10月6日(藤 慶之)
日経/11月5日(夕)、12月15日
雑誌記事
The Journal of Art October,1990
Art&Critique no.14 1990年11月(発行:京都芸術短期大学)
「対談:JmagesinTransition」(河本信治+畑 祥雄)
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