展覧会現代美術への視点-- 色彩とモノクローム
現代美術への視点-- 色彩とモノクローム
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本展は東京国立近代美術館の本年度特別展として企画され、当館の特別展と交換展示されたものである。東京国立近代美術館では現代美術をさまざまな角度からとりあげ、あらたな動向を探ろうとする催しう継続的に行なってきた。今回の展覧会はそうした流れの中で企画され、1984年度に開催した「現代美術への視点-メタファーとシンボル」につづくシリーズの第2回展である。
色彩とモノクロームというタイトルをつけた本展は、表現要素としての色彩の諸問題、その歴史上の変遷を辿るものでも、現代美術における有彩色と無彩色の関係性をとり扱ったものでもない。本展で規定する色彩とは、絵具という物質でも視覚的に感覚され個別的に命名される要素でもない。日常的な反復の世界、換言すれば形式あるいは既成概念の世界を、自らを取り巻くものに対する新鮮な接触を沮止する死の世界、つまり単調で平板なモノクロームの世界とすれば、色彩の世界は現実との直接的な接触の新たな始まりによってもたらされる生の●揚・横溢の世界であると本展は規定する。ひとつの色彩のあらわれとは、反復の世界に裂け目が生じもうひとつの外部の世界へと移行することを意味し、この移行は、未来を意識することではなく、反復的な時間の流れを断ち<いまここに>生きることにより可能となる。進歩の観念への強固な信頼を喪失した今日の私達の生の条件のひとつが、ひとつの色彩そしてあるいはモノクロームという生死の入れかわり、現在という裂け目でリアリティを獲得することとそれを喪失することの絶えざる交替にあるとすれば、芸術が芸術として成立するにあたってとりあげられるリアリティーの所在が今日ここに求められている、と本展は考える。以上のような意味での<ひとつの色彩そしてあるいはモノクローム>という問題意識を共有する現代の作家達の代表として、イギリス・フランス・イタリア・西ドイツ・アメリカの5ケ国から12名、日本から9名の作家達を選び出し、彼らの最新作57点を展示した。(永井)
- 会期
- 1月5日(金)~2月12日(日)
- 入場者数
- 12,028人(一日平均354人)
- 共催
- 東京国立近代美術館
- 出品目録
作者 | 作品名 | 制作年 | 材質・形状 |
---|---|---|---|
グレンヴィル・ディヴィー | 無題 | 1987 | 鋼鉄、セルローズ塗料 |
〃 | 押しボタン | 1988 | 彩色した鋼鉄 |
〃 | トロンメル | 1989 | 彩色した鋼鉄 |
ジョエル・デュコロワ | キリコにならいて | 1986 | 金属板(ナンバー・プレート) |
〃 | 湖畔の家 | 1989 | 金属板(ナンバー・プレート) |
ジョエル・デュコロワ | 果物鉢 | 1989 | ブロンズ |
ゲオルク・エットル | 立つ頭部 | 1988 | 大理石 |
カタリーナ・フリッチュ | ルルドの聖母 | 1987 | ポリエステル、石膏(台座) |
ヨルク・ガイスマール | ともに | 1980 | スライド映写機2台 |
〃 | 隔たりのある依存 | 1988 | 扇風機2台 |
〃 | ドローイング | 1988 | カーボン紙 |
原口典之 | 無題 | 1988 | 鋼鉄 |
〃 | 無題 | 1989 | 鋼鉄、ポリウレタン |
〃 | 無題 | 1989 | ポリウレタン、アルミニュウム |
池村玲子 | 無題 | 1989 | アクリル絵具・麻布に紙 |
〃 | バスト(胸) | 1989 | ブロンズ(掲載作品は粘土) |
〃 | クエルポ(からだ) | 1989 | ブロンズ(掲載作品は粘土) |
〃 | ゾイレ(柱体) | 1989 | ブロンズ(掲載作品は粘土) |
〃 | インテリア(室内)I | 1989 | 木炭、紙 |
〃 | ヴァルト(森)I、II、III | 1989 | 木炭、紙 |
剣持和夫 | 無題(出品作品のためのドローイング) | 1989 | 木、針金、スティルパイプ、他 |
小林正人 | 絵画=空 | 1985-86 | 油彩、麻布 |
〃 | 作品10番(天窓) | 1987 | 油彩、麻布 |
〃 | 作品11番 | 1987-88 | 油彩、麻布 |
ヴォルフガング・ライプ | ミルク・ストーン | 1977/88 | 白大理石、牛乳 |
〃 | 5つの未踏峰 | 1984 | 花粉(はしばみ) |
〃 | ライス・ハウス | 1989 | 木、封緘用蝋、米 |
〃 | ライス・ハウス | 1989 | 木、封緘用蝋、米 |
サイモン・リンク | アート・コローニュ、1986年10月 | 1987 | 油彩、麻布 |
〃 | トロイ・ブラウンタック、1989年1月 | 1989 | 油彩、麻布 |
〃 | ジュアン・ハミルトン、1988、1989年 | 1989 | 油彩、麻布 |
〃 | ジョセフ・コスース、1988、1989年 | 1989 | 油彩、麻布 |
トーマス・ロッハー | 1-32c | 1985 | チバクローム |
〃 | 1-13 | 1988 | アストラロン樹脂・木 |
シルヴィオ・メルリーノ | ハロ、バブム | 1987 | 混合技法・麻布に紙 |
〃 | 5つの火山がエル・サルヴァドルを観想する | 1988 | 混合技法・麻布 |
〃 | フラワーズ・ハンター | 1989 | 混合技法・麻布に紙 |
三輪美津子 | 1枚、2枚、3枚という題、あるいは無題 | 1988 | 油彩・麻布/グワッシュ・紙 |
〃 | 足が歩く | 1989 | ラッカー、石削粘土、左右12対 |
〃 | 暦 | 1989 | エナメル塗料、ガラス瓶12本 |
長沢秀之 | 風景-叙事 | 1988 | 油彩・麻布 |
〃 | 風景-たたかい | 1989 | 油彩・麻布 |
西川勝人 | 無題 | 1988-89 | ラッカー、石膏、木 |
〃 | 無題 | 1989 | 蜜蝋、ラッカー、石膏、木 |
ティム・ロリンズ+K.O.S | 黒いアリスNo.3 | 1982-86 | アクリル絵具、黒ゲッソ・麻布に本の頁を貼付 |
作者 | 作品名 | 制作年 | 材質・形状 |
---|---|---|---|
ティム・ロリンズ+K.O.S | クジラの白さ-エイハブ | 1989 | アクリル絵具・麻布に本の頁を貼付 |
鈴木省三 | 森I | 1982-87 | 油彩、オイルスティック、パステル・ゴム板 |
〃 | 森III | 1983 | オイルスティック、パステル・ゴム板 |
〃 | 低く地を飛び交う眼の高さから | 1983-86 | 油彩、オイルスティック、パステル・ゴム板 |
〃 | BridgeII | 1988 | オイルスティック、パステル・化織布 |
マーク・タンジー | 熟練の克服II | 1987 | 油彩、麻布 |
〃 | 海岸線の測量 | 1987 | 油彩、麻布 |
寺内曜子 | ホット・ライン71 | 1986 | 電話ケーブル |
〃 | 無題 | 1988-89 | 彩色した紙 |
〃 | ホット・ライン107 | 1989 | 電話ケーブル |
ウォーレス&ドノヒュー | たぶん彼はその娘を愛している・たぶん・たぶん彼は愛している | 1988 | ラテックス塗料、木炭、麻布、木、ライト |
〃 | 手持ちのジップNo.2-プレクシグラスに包まれた | 1988 | ラテックス塗料、麻布、木、テレビ受像器、ヴィデォ、プレクシグラス |
- 新人雑誌関係記事
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新聞記事
京都/1月19日(藤 慶之)
読売/1月11日(夕)
日系/2月5日(夕)
雑誌記事
小原流挿花 ’90年1月 No.470(笹山 央)
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