展覧会池田遙邨遺作展
池田遙邨遺作展
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本展は、昭和63年9月26日92歳で他界した日本画家池田遙邨の一周忌に合わせた遺作展である。遙邨はその長い生涯のほとんどを画業一筋に生き、亡くなる間際まで熾んな制作意欲を燃やし続けて、実に多くの作品を残したが、本展ではその中から精選された作品96点及び絵日記36面、合計97件を展示した。
遙邨は明治28年(1895)岡山に生まれ、はじめ大阪に出て松原三五郎のもとで洋画を学んだ。そして大正3年(1914)の第8回文展に水彩画「みなとの曇り日」で初入選を果たしたが、やがて日本画に興味をもち、大正8年には京都に出て竹内栖鳳に入門、日本画に転じた。この年秋の第1回帝展に「南郷の八月」が入選して日本画壇に足がかりをつくるが、大正後期にはムンクやシャバンヌなどの影響を受けた作品を描いて落選が続いた。しかし大正末期から大和絵の新解釈にたった清新な作品を帝展に発表して画壇に認められた。その後、冨田溪仙の作風に共鳴した時期を経て、戦後にはユーモアと詩情に溢れる独自の画境を切り拓いた。そして、晩年には漂泊の俳人種田山頭火に心を寄せ、その句境の絵画表現に挑んだ、いわゆる山頭火シリーズの制作に情熱を傾け、その画境に新たな展開を見せたのは、現代日本画の可能性を探る上でも特筆すべきことであった。
遙邨ははやくから江戸の浮世絵絵画家歌川広重に傾倒し、自らも三度にわたる東海道五十三次の旅をはじめとして、全国津々浦々に足を延ばしている。今日の画壇に比類のない、瓢逸と哀歓がないまぜになった詩情溢れる画境は、この画家の<さすらい>と切り離しては考えられないものであろう。遙邨はまさに人生の旅人であり、美の旅人であったと言えるだろう。初期から晩年にいたる各時期の代表作を集めた今回の遺作展は、このような遙邨芸術の全貌を示すものとして、多くの美術ファンを魅了した。
なお、本展は当館終了後、遙邨の出身地岡山県倉敷市の倉敷市立美術館に巡回展示した。
- 会期
- 9月19日(火)~10月15日(日)
- 入場者数
- 54,751人(一日平均2,281人)
- 共催 毎日新聞社
- 出品目録
作品名 | 制作年 | 材質 |
---|---|---|
みなとの曇り日 | 1941 | 紙本着色(水彩) |
湖畔残春 | 1920 | 絹本着色 |
颱風来 | 1921 | 〃 |
路 | 1923 | 〃 |
河畔よりの風景 | 〃 | 〃 |
災禍の跡 | 1924 | 〃 |
林丘寺 | 1926 | 〃 |
雪の大阪 | 1928 | 絹本着色 |
京の春宵 | 1929 | 〃 |
祇園御社 | 1931 | 〃 |
大漁 | 1932 | 〃 |
昭和六十余州名所 | 1934 | 〃 |
雨の大阪 | 1935 | 〃 |
江州日吉神社 | 1937 | 〃 |
日吉三橋 | 1938 | 絹本着色 |
東海総行脚 | 1940 | 紙本着色、貼交 |
吉野拾遺 | 1943 | 紙本着色 |
雪の神戸港 | 1947 | 絹本着色 |
白昼夢 | c.1948 | 〃 |
金閣追想 | 1950 | 麻本着色 |
花火 | c.1950 | 麻本着色(油彩) |
戦後の大阪 | 1951 | 紙本着色 |
池 | 1952 | 絹本着色 |
自画像 | 〃 | 紙本着色 |
幻想の明神礁 | 〃 | 絹本着色 |
灯台 | 1953 | 紙本着色 |
石垣 | 1955 | 〃 |
銀砂灘 | 〃 | 〃 |
石 | 1957 | 〃 |
灯台 | 1958 | 〃 |
寧楽 | 1959 | 〃 |
森の唄 | 1960 | 絹本着色 |
森 | 1961 | 紙本着色 |
投影富士 | c.1962 | 〃 |
富士 | 〃 | 〃 |
古庭 | 1963 | 〃 |
梟 | 〃 | 〃 |
灯の饗宴 | 1964 | 〃 |
野 | 1968 | 〃 |
海底 | 〃 | 〃 |
野みち | 1969 | 〃 |
砂丘(白馬) | 1970 | 〃 |
寂 | 〃 | 〃 |
寥 | 〃 | 〃 |
囁 | 1972 | 〃 |
谿 | 1973 | 〃 |
霧 | 1974 | 〃 |
山の灯 | 〃 | 〃 |
日蝕 | 〃 | 〃 |
赤い灯台 | 1975 | 〃 |
群 | 〃 | 〃 |
川 | 1978 | 〃 |
川 | 〃 | 〃 |
堰 | 1979 | 〃 |
雪田 | 1979 | 絹本着色 |
池 | 1980 | 〃 |
砂丘 | 〃 | 〃 |
蓮 | 〃 | 〃 |
灯台 | 〃 | 〃 |
雪日 | 〃 | 〃 |
惜春 | 〃 | 〃 |
京都タワー | 〃 | 〃 |
錦帯橋 | 〃 | 〃 |
弦月 | 〃 | 〃 |
渚 | 〃 | 〃 |
雷鳴 | 〃 | 〃 |
稲掛け | 1981 | 〃 |
葦風 | 〃 | 〃 |
積草 | 1982 | 〃 |
野仏 | 〃 | 〃 |
朧夜 | 〃 | 〃 |
濠 | 〃 | 〃 |
水郷の月 | 1983 | 〃 |
夕映えの浜 | 〃 | 〃 |
芒原 | 〃 | 〃 |
廃屋 | 〃 | 〃 |
山頭火行く | 1984 | 〃 |
うしろ姿のしぐれてゆくか山頭火 | 〃 | 〃 |
たそがれてゆく茶畑 | 1985 | 〃 |
鉄鉢の中へも霰 山頭火 | 〃 | 〃 |
夜の屋根 | 〃 | 〃 |
桜並木 | 〃 | 〃 |
田毎の月 | 1986 | 〃 |
波濤 | 〃 | 〃 |
嵯峨野の細道 | 〃 | 〃 |
あすもあたたかう歩かせる星が出ている 山頭火 | 1987 | 〃 |
あたらしい法衣いっぱいの陽があたたかい 山頭火 | 1988 | 〃 |
行きくれてなんとここらの水のうまさは 山頭火 | 〃 | 〃 |
すすきのひかりさえぎるものなし 山頭火 | 〃 | 〃 |
家を持たない秋がふかうなった 山頭火 | 〃 | 〃 |
青空したしくしんかんとして 山頭火 | 〃 | 〃 |
鴉啼いてわたしも一人 山頭火 | 〃 | 〃 |
春の海のどこからともなく漕いでくる 山頭火 | 1988 | 絹本着色 |
まっすぐな道でさみしい 山頭火 | 〃 | 〃 |
蚊帳の中でまんまるい月昇る 山頭火 | 〃 | 〃 |
絵日記 | 1980-81 | 〃 |
- 新人雑誌関係記事
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毎日/8月17日、9月14日(田原由紀夫)、9月18日、9月19日(夕)、「美の旅人」シリーズ:9月19日(夕)(梅原 猛)、9月20日(夕)(秋野不矩)、9月22日(夕)(下村良之介)、「池田遙邨遺作展から」シリーズ:9月22日~10月13日、「池田遙邨展ミニ紹介」シリーズ:9月26日、10月4日、10月5日、10月6日、10月7日(以上、島田康寛)、9月27日、9月28日、9月29日(以上、加藤類子)
京都/9月20日(夕)、9月30日(藤 慶之)
読売/9月7日
朝日/9月19日
日経/9月29日、10月9日
中日/9月27日
夕刊フジ/10月8日
新美術新聞/9月11日、No.547
<雑誌記事>
三彩 1989年9月号
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