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展覧会ジェリコー展

ジェリコー展

 ジェリコーは、1791年フランスのルーアンに生まれた。ヴェルネ、ゲランに学びながら、その指導に飽きたらず、ルーヴル美術館やイタリアで古典絵画を研究した。ミケランジェロから激しい運動表現を、カラヴァッジオから明暗法と劇的表現法を学んだ彼は、静的理知的な新古典主義に対抗して動的情熱的なロマン主義絵画を、ドラクロアに先立って逸早く体現した。その代表作が『メデューズ号の筏』である。

 本展では、『メデューズ号の筏』のレプリカしか出品されなかったが、完成作に至るまでの試行錯誤、制作プロセスをうかがわせるデッサンや習作を数多く展示した。

 ジェリコーは、この作品の制作に際して、病院で重病人の断末魔の苦しみを観察し刻々の変化を写した。その上、医者から死体をゆずりうけ徐々に腐敗していく様子を写生した。こうしたジェリコーのロマン主義の徹底したレアリストの態度は、本展で出品された『人さらい偏執狂』、主に貧しい無名の人々をとらえた多くの版画によって十二分に紹介された。

 本展は、32歳で夭折したこの天才画家の画業を、油彩画34点、水彩画とデッサン42点、版画101点、他作家によるジェリコーの肖像10点によって紹介し、ジェリコーの全体像を知るにふさわしい内容のものであった。全体品を6期に分け、初期から晩年までのジェリコーの画業の変化発展をたどれるように展示した。

 ローマのヴィラ・メディチで1980年に催された展覧会、ニューヨークで1985年に開かれた素描展に比して、質量とも決して劣らぬ大規模な展覧会であり、ジェリコー研究史上で意義深いものであった。

 また、展示されたジェリコーの作品の多くは、生物の本能、根源的生命力、エネルギーを表現したものであり、それは日本の現代美術に欠如しているといってよいものである。この意味でも、本展は極めて興味深く、刺激的であった。

会期
2月2日(火)~3月21日(日)
入場者数
総数 61,714人(1日平均 1,714人)
共催
毎日新聞社
出品目録
作者名 作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
テオドール・ジェリコー モンカード侯爵の騎馬像(ヴァン・ダイクを模して) 1808-12 油彩、画布 46.5×38.5
エフェゾスの聖パウロの説教(ルーシュウールを模して) 1808-12 46.0×38.0
キリストの埋葬(ティツィアーノを模して) 1810-14 45.0×59.0
スペインの馬 1812-14 50.0×60.0
テオドール・ジェリコー 後脚で立つ赤い鞍の馬 1813-14 油彩、画布 45.5×37.5
碗火を逃れる傷ついた胸甲騎兵(エスキス) 1814 55.1×46.0
重騎兵の肖像 1814-15 65.5×54.5
雄鶏、雌鶏、モルモット 1812-16 64.0×53.0
四人の若者に止められる馬 1817 油彩、画布に貼った紙 48.0×60.5
裸体習作または後向きの坐る裸の男 1817-18 油彩、画布 89.5×64.0
古代ローマの墓のある風景 1818 250.0×220.0
ライオン 1816-17 油彩、画布に貼った紙 25.0×33.0
二頭の豹 1817-20 油彩、画布 59.0×72.5
オリエントの男の肖像 60.0×48.0
マムルーク兵(オルレアン公旧蔵) 32.0×24.5
作者不詳(フランス画派) メデューズ号の筏(レプリカ) c.1825-35(?) 50.0×73.0
テオドール・ジェリコー 男の胸像(通称「メデューズ号」の大工) 1818-19 46.5×39.0
見捨てられた筏 1818 40.0×68.0
作者不詳(19世紀のフランス画派) ふたつの罪人の首(ジェリコーにもとづく) c.1818-24 50.0×61.5
テオドール・ジェリコー 死んだ若者の頭部 1818-19 32.5×34.5
ウジェーヌ・ドラクロワの肖像 c.1818-19 60.5×50.5
ペスト患者またはギリシア独立戦争の一情景 1818-20 38.0×46.5
葡萄酒を運ぶ荷馬車(大樽を積んだ荷車) c.1818-20 59.5×73.0
競馬 c.1821 油彩、画布に貼った紙 27.0×37.5
競馬 c.1821 27.0×37.5
蹄鉄工、または村の鍛冶屋 1822-23 油彩、画布 51.0×61.0
人さらい偏執狂 1822 64.5×54.0
ねたみ偏執狂、あるいはサルペトリエールの狂女 1822 72.0×58.0
黒人女の肖像、または若い混血女の肖像 1822-23 40.5×31.5
自画像 37.4×27.2
女の肖像 50.0×43.0
漂流者、あるいは嵐 50.0×61.5
海景 46.0×55.2
牧場の馬、あるいはフランドルの馬 54.5×65.5
岩に坐るオリエントの男 1823 35.0×45.0
「鍛冶屋の看板」のためのスケッチ 1813-14 鉛筆、紙 17.5×23.2
騎兵の戦闘のいくつかのスケッチ 17.4×23.2
ポーランド槍騎兵士官のための三つの習作 鉛筆、白い紙 9.2×14.4
はしごを登る背中向きの人物の習作と裸体習作 c.1813-14 33.2×22.3
坐る若い男の五つの習作 c.1815-16 ペン・褐色のインク、白い紙 26.2×18.5
パリスの救命を拒否するオイノネ 1816 鉛筆、淡灰色の紙 42.5×57.4
水浴びする馬と舟を漕ぐ人の習作 c.1816 鉛筆、白い紙 13.1×20
馬のさまざまなクロッキー:頭、胸元、脚 ペン・茶のインク、白い紙 9.4×16.1
テオドール・ジェリコー 横向きに立つ裸女の習作 1816 水彩・クレヨン、白い紙 20.5×13.6
劫罰の情景:毒蛇に盗人を噛ませる刑罰(ダンテによるか) 1816-18 ペン・褐色のインク、淡い色のついた紙 16.6×21.9
三人の若者に止められる後脚で立つ馬 1817 ペン・褐色のインク、石墨、白い紙 16.2×20.4
二人の競技者に制せられる二頭の馬、または裸馬の競争に着想を得た習作 鉛筆・ペン・褐色のインク、白い紙 9.6×24
古代を模した、列をなす三人の女、ポモナとパッカスの巫女と c.1817 黒クレヨン、白い紙 19.4×30.4
ラピタイ族の女をさらうケンタウロス 1816-17 ペン・茶色のインクの淡彩・白いグワッシュのハイライト、カルク紙 20.9×27.9
ケンタウロスとラピタイ族の女の習作(ケンタウロスの二本の尻尾) 黒クレヨン・白い紙 11.0×15.0
ラピタイ族の女をめぐって争う二人のケンタウロス ペン・茶色のインクの淡彩・白いグワッシュのハイライト、カルク紙 20.4×28.0
ラピタイ族の女を奪うケンタウロスの習作 黒クレヨン、白い紙 11.0×15.0
寺院から商人を追払うキリスト 1817 鉛筆・石墨、白い紙 19.5×15.8
傷ついた若いラッパ手を守るマムルーク兵(リトグラフの習作) 1818 ペン・茶色のインク、裏打ちしたカルク紙 27.0×25.8
マムルークと呼ばれるオリエントの男の二つの頭部 鉛筆、白い紙 29.3×21.8
「砲弾運搬車」のための習作 鉛筆、紙 22.1×28.5
「ロシアからの帰還」のための習作 鉛筆、乳白色の網目透かし入り上質紙 22.4×28.8
ボクサーまたはレスラーの7つの習作(「ボクサー」のための習作) 1818-19 ペン・茶色のインク・鉛筆、紙 22.4×28.7
サン=ジャン・ダークルの戦いにおけるクレベール将軍 水彩・グワッシュ、暗褐色の紙 29.5×21.9
猫の顔の五つの習作 鉛筆、裏打ちしたカルク紙 22.0×30.5
筏の上の反乱 ペン、白い紙 18.3×21.4
ボートに助けを求める生存者たち ペン、セピアのインク・淡彩、白い紙 21.1×26.0
見捨てられた筏 ペン、茶色のインク・紙 22.1×28.1
遠くに見えたアルゴス号、様々な裸体の習作 ペン、紙 24.5×30.2
死んだ息子を膝に抱く父親の習作 石墨、灰青色の紙 18.5×23.5
跪き、右手をあげた男の習作 石墨、紙 28.2×19.3
起き上がろうとする男の習作・手と腕の習作 石墨、紙 20.8×29.1
立った裸体の男の習作 1819 ペン・クレヨンの跡、印刷された小冊子の最終ページ裏面 21.6×12.5
海に沈んでゆく船 1818-19 鉛筆、紙 15.1×20.6
マイプの闘いのための習作 c.1819 鉛筆、白い紙 19.4×27.8
キリストの埋葬 1819(?) 17.0×21.5
武装して馬に乗る侍臣 c.1820 鉛筆、白い紙 13.5×13.7
オリエントの5人の騎手の習作 27.0×40.5
馬具をつけた馬(表) 1820-21 鉛筆、紙 17.5×27.9

作者名 作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
テオドール・ジェリコー 海に向かって坂を下る郵便馬車(誤って、「乗合馬車」とも) 1820-22 石墨・ペン・黒褐色の淡彩、白い紙 18.0×24.0
早足で走る馬に乗る騎手 1820-21 鉛筆、白い紙 12.0×18.0
斜め後ろから見た黒人の頭部 1822-23 パステル、暗褐色の紙 37.0×28.5
ローマの屠殺人 18172末 リトグラフ 17.1×24.3
画家の友人、オーギュスト・ブリュネの肖像 1818(?) 18.4×14.8
旗手 1817(?) 16.8×14.3
槍騎兵のラップ手 1818(?) 38.4×20.4
ピルール=アントワーヌ=ヴィクトール・ド・ラノーの肖像 14.3×14.1
乳絞りの娘と古参兵 7.6×12.6
波音に彼女を夢みる 16.8×18.0
コサック兵から傷ついたラッパ手を守る近衛隊のマムルーク兵 1818 34.3×27.8
ボクサー 35.3×41.7
傷ついた兵士を乗せる荷馬車 1818 28.9×29.2
厩舎で争う二頭の灰色の葦毛馬 27.0×34.9
ロシアからの帰還 44.4×36.0
砲弾運搬車 41.4×52.6
ルーヴル宮のスイス兵歩哨 1819 39.4×33.0
陣を変える近衛隊の騎馬砲兵 30.0×38.4
チャカブーコの闘い(1817年2月12日) 1819(?) 38.8×49.5
テオドール・ジェリコー マイプの闘い(1818年3月5日) 1819 リトグラフ 37.7×53.6
ホセ・デ・サン・マルティン氏 33.5×26.4
マヌエル・ベルグラーノ氏 33.3×26.3
乗馬! 32.0×42.6
砂漠の行軍 1822 29.0×40.1
サン=ベルナール山越え 35.9×42.3
傷ついたラーラ 1820 15.8×23.2
メデューズ号の遭難 9.9×15.9
J.ジェリコーの手で石版石に実写されたさまざまな主題 1821 36.8×33.4
バグパイプ奏者 31.4×23.3
震える脚でようやくあなたの家に辿りついた哀れな老いた男の悲しみを憐みなさい 31.5×37.4
近衛騎兵隊 27.2×34.3
アラビアの馬 17.0×33.6
体のきかない女 22.2×31.5
アデルフィ波止場の入口 25.3×31.0
フランドルの蹄鉄工 23.0×31.5
フランスの蹄鉄工 24.6×35.5
イギリスの蹄鉄工 28.0×37.2
調教 29.3×41.4
石炭運搬車 19.5×31.0
市へ行く馬 25.2×35.4
イギリスの騎手 1820 18.4×33.7
馬丁の乗った四輪馬車用の馬、あるいは格子柄の毛布を付けたイギリスの馬 19.6×29.4
眠る魚売り 21.5×29.3
驢馬と遊ぶ三人の子ども 21.2×34.3
製材工 1821 ペン、厚紙に貼った透写紙 32.9×44.3
若い母と三人の子ども リトグラフ 24.4×26.3
馬を喰うライオン 1820(?) 19.4×29.7
ボシェルヴィルのサンニジョルジュ教会に安置されたギヨーム征服王 1823 14.9×17.8
ルーアンのサン=ニコラ教会 34.0×23.7
雌馬と仔馬、扉絵 1822 15.3×21.9
メクレンブククの馬 18.8×23.4
オーヴェルニュの馬 19.0×22.9
コー地方の馬 17.1×21.9
スペインの馬 13.7×15.7
アンデンヌの馬 15.3×20.5
カーン平野の馬 19.0×22.5
ハノーヴァーの馬 17.9×23.7
イギリスの馬 16.6×22.1
フランドルの馬 17.1×22.3
アラブの馬 19.0×23.2
エジプトの馬 17.5×23.5

作者名 作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
デオドール・ジェリコー 競走の前に足ならしをする馬 1823 リトグラフ 9.4×16.5
競馬 13.9×20.9
二輪馬車の轅から出る馬 13.9×19.3
御者、あるいは馬具をつけた二頭の馬 12.8×17.1
砲兵中隊を攻撃する胸甲騎兵 12.8×17.1
軽騎兵隊のラッパ手 13.3×18.0
攻撃を命じる砲兵隊士官 12.8×18.0
皮剥ぎ職人のもとに連れられる三頭の馬 11.1×20.0
近衛軍軽火器隊の士官 15.3×18.5
ライオンに喰われる馬 19.5×24.0
ジアウール 1820 17.5×23.9
早足で走る馬 1823 14.0×20.0
垣を跳び越える馬 16.0×20.5
騎手の乗ったイギリスの馬 20.2×23.7
蹄鉄をつけられた馬 13.8×16.8
水飼い場 1822 34.0×28.5
石炭馬車 19.2×30.3
旅籠の戸口の老いた馬 25.0×38.2
足ならしする二頭の連銭葦毛の馬 29.0×42.2
厩舎につながれた格子柄の毛布をつけた馬車 32.8×40.2
フランドルの蹄鉄工 24.4×32.1
石膏屋の馬 1829 25.8×32.3
市に連れて行かれる馬 25.0×35.2
厩舎の戸口の二頭の馬 1822 34.3×43.3
馬車から解かれた大きな馬に布袋の燕麦をあたえる少年 41.4×33.2
二頭の馬を散歩させる騎手 32.0×38.2

作者名 作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
テオドール・ジェリコー イギリスの蹄鉄工 1822 リトグラフ 27.9×36.9
フランスの蹄鉄工 27.1×36.1
農耕馬 1823 19.1×26.6
蹄鉄工の納屋 20.3×25.2
掃除人夫 19.5×24.4
坂を登る荷車引き 22.0×30.5
死んだ馬 18.3×22.6
マゼッパ 15.9×20.7
ジアウール 15.0×21.0
アビドスの婚約者 12.4×16.5
ラーラ 13.6×24.3
厩舎のアラブ馬 18.8×23.5
馬を喰う虎 15.8×21.8
丸天井の厩舎の内部 20.2×27.4
アラブ馬 20.4×25.3
ライオンに襲われる馬 40.0×22.5
連銭葦毛の馬 1817(?) 14.7×9.9
レオン・コニエ 病床のジェリコー像 16.5×19.5
19世紀のフランス画派 ジェリコーの死 油彩、画布 38.0×45.7
ジェリコーのデスマスク ブロンズ 28×18.5×17(タテ×ヨコ×奥行)
アレクサンドル・コラン ジェリコーの胸像 1824 リトグラフ 17.5×14.2
アシール・ドヴェリア ジェリコーの上半身の肖像 17.9×12.8
ピエール=ジャン・ダヴィッド(通称ダヴィッド・ダンジェ) テオドール・ジェリコー 1830 ブロンズ製メダル 直径15.0
トニー・トゥーリヨン ジェリコーの上半身の肖像 1843 リトグラフ 29.5×21.5
ルイ=アレクシス・ジャマール(推定) ジェリコーの上半身の肖像 油彩、画布 42.0×33.7
19世紀フランス画派 ジェリコーの墓 ガラスの上にグワッシュ、蝋、毛髪 22.5×17.6
オーギュスト・プレオー テオドール・ジェリコー 1854 メダイヨン、電鍍法によるめっき 直径35.0

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