京都国立近代美術館京都国立近代美術館 京都国立近代美術館 京都国立近代美術館

MENU
Scroll

開館状況  ─  

展覧会若林 奮展

若林 奮

 1936年東京に生まれた彫刻家若林奮は、59年東京芸術大学を卒業後、主に鉄を素材としたスクラップ彫刻のようなものから出発して注目され、73年には神奈川県立近代美術館で個展が催されている。本展は神奈川展以後の二つの大きな仕事、「振動尺」「所有・雰囲気・振動」に焦点を当て、立体39点、素描及び制作ノート41点で構成された。

 「振動尺」とは、視覚・触覚・想像等がそれぞれ持つ尺度のずれの間をスプリングのように振動しながら、意識と外界との距離を測るものと思われる。若林は彫刻表現の意味を独自に問い続けているが、今回の作品は、物の世界の中での人間の位置を探るものといえよう。

 ここで彼は、人間が感覚によって把握・所有できる空間とその境界、物の表面と内側、時間の経過による物の堆積と崩壊、また外界の物と自分との共通の場である「雰囲気」などを問題としている。作品はこの考察に従い、継ぎ矧ぎした金属板を積み重ねて、存在の基盤となる地表の模湖としたさまとその上下の層(地層・大気)を感じさせる「百粒の雨滴」から、時間とともにこの三層を貫き地表を覆う植物のイメージをもつ作品群へと進み、さらに、表面を鉛で包まれた物たちを開かれた場域は切り取られた空間に提示する「大気中の緑色に属するもの」、「森のはずれ」などへ大きく展開する。これらの彫刻は、突然この世に出現したかのように異様でありながら、重い存在感を持っている。その強さは逆にわれわれの日常を揺るがし、意識的、無意識的に忘れている世界との根源的なかかわりを考えさせずにはおかない。

 本展は、東京国立近代美術館の「今日の作家シリーズ」第一回として企画されたが、関西では若林の初めての展覧会として反響を呼び、また、1984年度の「メタファーとシンボル」展に続いて国立美術館が現在の美術の動きに取り組み始めたものとしても評価された。

会期
12月15日(火)~昭和63年1月24日(日)
入場者数
総数 7,174人(一日平均 239人)
共催
東京国立近代美術館
出品目録
作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
立体ノート-気体、固体、液体、現在(1) 1973 木、グワッシュ、インク 35.1×14.9×5.5
立体ノート-気体、固体、液体、現在(2) 1974 木、釘 21.5×15.1×15.3
立体ノート-気体、固体、液体、現在(3) 木、グワッシュ 35.2×15×8
立体ノート-気体、固体、液体、現在(4) 24×19.3×19.7
立体ノート-気体、固体、液体、現在(5) 木、グワッシュ、インク 13×14×21.3
立体ノート-気体、固体、液体、現在(6) 23.3×16.9×17
立体ノート-気体、固体、液体、現在(7) 木、インク 6.5×6.7×40.1
立体ノート-気体、固体、液体、現在(8) 木、グワッシュ 19×14×6.8

作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
100粒の雨滴I 1975-76 銅、真鍮、鉄 100×100×12.6
100粒の雨滴II 1976-77 100×100×17.1
100粒の雨滴III 1977 銅、真鍮 100×100×5.6
振動尺試作I 1976-77 木、鉛、鉄 径21×145
振動尺試作II 1976-79 木、紙、銅、鉄 15.2×17.2×134.5
振動尺試作III 1977 木、鉄 径19.3×135
振動尺試作IVあるいはスプリング蒐集改 15×15×108
振動尺試作Vあるいはスプリング蒐集改 15×15×112
振動尺試作VIあるいはスプリング蒐集改 15×15×103
振動尺試作VIIあるいはスプリング蒐集改 15×15×108 (基部)92×183.5×12
素描(5点) 1976-78 鉛筆、水彩、紙 79.2×109.5(各)
振動尺I 1979 20.5×34.7×149.5
振動尺II 鉄、木 34.6×54.6×163.5
振動尺III 19.7×28.8×181.6
振動尺IV 18.8×19.7×186.2
振動尺V 1977-79 木、鉛、胡粉、グワッシュ 35×71×153
西壁の植物 1981 木、紙、鉛、胡粉 188×147×45
草の侵略及持物についてI 1984 鉄、銅、加熱器 183×91.6×36.4
草の侵略及持物についてII 1981 182.7×91×19.2
草の侵略及持物についてIII 鉄、土 182.7×91.5×35.6 56.3×41×53
草の侵略及持物についてIV 1984 鉄、鉛 203.3×134×16.2
綿についての記憶 木、鉛、綿の種子 65.5×52×184
ゆりの樹による集中的な作業 1983-84 木、紙、銅 39.7×38×206
ゆりの樹の一枝 1984 19.5×19.5×100(銅板:100×641)
スリットI 1984 銅、油絵具、パステル 50×50×4.5(29枚)
スリットII 45.7×45.7×1.8(18枚)
スリットIII 銅、鉄、油絵具 50×50×3(12枚)
綿を含む三角形 銅、油絵具、パステル 43×43×100(3本)(各銅板:100×200)
大気中の緑色に属するものI 1982 鉛、木 400×474.5(鉛板部)
の制作ノート(11点) 1981-82 グワッシュ、紙 76.5×53(各)
森のはずれ 1981-84 鉄、鉛、紙、木 506.3×414.8×257(部屋状部分)
素描(25点) 1986 鉛筆、紙 縦200~246.5 横100あるいは109.1
大気中の緑色に属するものII 鉄、銅、鉛、ペンキ、鉛筆、紙 964×1,000×367(展示スペースの容積)
移行を伝える蒸気と燕層 1987 鉄、銅、加熱器 568×674×186

新聞雑誌関係記事
毎日/10月13日(夕)
朝日/12月19日(夕)
サンケイ/12月21日
読売/12月23日(夕)
日経/’88年1月4日(夕)
京都/’88年1月16日
ぷがじゃ ’87年12月号
アート ’88年1月号(向井修一)

このページの先頭へ