展覧会メタファーとシンボル展
メタファーとシンボル展
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東京、京都の国立近代美術館は、「1960年代-現代美術の転換期」(昭和56年度)、「現代美術における写真」(昭和58年度)を開催し、1960年代、70年代の現代美術の活動を概観、また特定の視座による再検討を試みてきた。本展はこの延長線上に組織された展覧会であり、様々な表現と価値観が展開され、多様とか渾沌という表面的な言葉で語られることの多い80年代美術をより深く検証し、そこに共通する本質的問題を探り出そうとするものであった。
70年代末から世界各地で抬頭してきた新しい形象絵画は、新表現主義、トランス・アヴァンギャルド、あるいはニュー・ペインティングと呼ばれ、その豊かで奔放な表現により禁欲的な70年代美術と明らかな断絶を示している。これらの作品には、画面上に荒々しい絵画的な筆触と具体的なイメージが復活していることが特徴として上げられる。本展は、今日の世界が未だに19世紀以来のロマン主義の時代にあるとの前提に立ち、80年代美術をイメージを巡る問題として捉え、メタファー(隠喩)とシンボル(象徴)という概念をキーワードとして作品の解読を試みたところに企画の斬新さがあった。すなわち本展趣旨は、ある体系から逸脱する方向性(メタファー)と根源的なものへと凝縮する方向(シンボル)が美術表現において基本的な構造であり、80年代美術においては両者が調和的にではなく、対立的に共存しているとするものであった。
欧米五ケ国と日本から選ばれた22名、51点の作品が展示されたこの展覧会は、企画の意欲的な姿勢を高く評価するものから難解すぎるとの批評まで、様々な反響を呼び起こした。しかし展覧会が、その基本的コンセプト、美学、美術史に深く立ち入った論争を生んだことは高く評価されるべきものであり、将来の美術館活動にも一つの示唆を与えるものであった。
本展は東京国立近代美術館の59年度特別展として企画されたものであり、京都国立近代美術館が新館工事中のため国立国際美術館を会場にして開催された。
- 会期
- 昭和60年2月1日(金)~3月10日(月)
- 入場者数
- 総数5,803人(一日平均175人)
- 共催
- 東京国立近代美術館、国立国際美術館
- 出品目録
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材質・形状・技法等 | 寸法(cm) |
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エドワード・アリントン | 昆虫の辛辣さ | 1983 | 混合技法 | 180×180×180 |
BetweentheHornsofaSnail | 1985 | 〃 | ||
ペーター・ベンメルス | 大熊座 | 1980 | 分散染料・モスリン地 | 268×177 |
時間養殖者 | 1983 | 油彩・毛髪、モスリン地 | 240×180 | |
健康な汗 | 1984 | セラックニス、糊、毛髪・モスリン地 | 180×200 | |
ロレンツォ・ボネキ | ダマスカスの道 | 1983 | 油彩・麻布 | 200×300 |
天使とヤコブ | 1984 | 混合技法・厚紙 | 200×300 | |
ペーター・シュヴァリエ | 盲人 | 1983 | 油彩・麻布 | 250×200 |
ペーター・シュヴァリエ | 犬と二本の骨 | 1983 | 油彩・麻布 | 250×200 |
勝者の家 | 1984 | 〃 | 220×240 | |
エンツォ・クッキ | 角ばった顔のマルケ人未成年 | 1980 | 〃 | 205×205 |
古木の小径 | 1983-84 | 油彩、混合技法・麻布 | 310×205 | |
遠藤利克 | 水路 | 1984 | 木・水 | 35×35×1,200 |
ローラ・フォード | 静物 | 1982 | ブロンズ | 60×60×45 |
豚 | 1982 | ニレ材 | 75×60×120 | |
家庭 | 1983 | ブロンズ | 45(径) | |
ジェラール・ガルースト | 皇帝と逆さ吊りの男 | 1984 | 油彩・麻布 | 265×200 |
オリオンと鍛治場 | 1984 | 〃 | 235×200 | |
ルクレチア | 1984 | 〃 | 200×260 | |
アントニー・ゴームリー | 三つの道-型、穴、移送 | 1981-82 | 鉛、石膏 | 123×62×80 209×34×50 |
ケン・キフ | 海中で花を摘む女 | 1982 | 油彩・板 | 61×51 |
青い空間と一体になる頭-顔を往来に向けて | 1982-83 | 油彩・麻布 | 130×97 | |
街灯柱のある道と雨 | 1982-83 | 〃 | 97×122 | |
日常生活をよそおう女 | 1983 | 〃 | 130×97 | |
小清水漸 | 作業台-曲水 | 1983 | 桂・水 | 116×116×70 |
デウカリオンの机 | 1983 | 松・杉・桧 | 300×155×138 | |
浮くかたち | 1984 | 松 | 200×90×75 | |
黒田アキ | 裏返しに | 1984 | アクリリック・麻布 | 200×300 |
コロラトゥラの夏 | 1984 | アクリリック・油彩・麻布 | 200×300 | |
レヴァントの風II | 1984 | アクリリック・麻布 | 280×160 |
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材質・形状・技法等 | 寸法(cm) |
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ベルトラン・ラヴィエ | フォーマイカ・赤 | 1983 | アクリリック・台所机 | 76×72×82 |
絵画No.2 | 1983 | アクリリック・額付き麻布 | 96×150×5 | |
ガラスの下の絵画 | 1983 | アクリリック・枠付き鏡 | 96×150×5 | |
カルロ・マリア・マリアーニ | 予言者の夢 | 1984 | 油彩・麻布 | 200×250 |
天上の鏡の中でみつめあう | 1984 | 〃 | 250×200 | |
ヘルムート・ミッテンドルフ | 大都会人 | 1982 | アクリリック・生麻布 | 190×190 |
偏執狂 | 1983 | 〃 | 230×180 | |
頭走者 | 1984 | アクリリック・麻布 | 230×180 | |
中村 功 | 無題-1984No.1 | 1984 | 油彩・和紙・生麻布 | 3面(各)180×180 |
ジュリアン・オピー | 図書館での事件II | 1983 | 油彩・鉄 | 165×100×20 |
図書館での出来事 | 1984 | 〃 | 200×200×70 | |
ペインティングブルース | 1984 | 油彩・鉄 | 180×130×80 | |
スーザン・ローゼンバーグ | スリー・プラス・ワン | 1981-82 | アクリリック、フラッシュ・麻布 | 224×239 |
ジュリアン・シュナーベル | 燃える乳 | 1982 | 油彩、モデリングペースト、シサル麻 | 330×240 |
リトル・マザー | 1983 | 油彩・じゅうたん地 | 335×244 | |
椎原 保 | 無題 | 1984 | 石・鋼鉄線 | |
高木 修 | 特異な空間へ | 1984 | 鉄板 | 660×330×140 |
辰野登恵子 | Work84-P-1 | 1984 | 油彩・麻布 | 194×130 |
Work84-P-3 | 1984 | 〃 | 195×185 | |
Work84-P-7 | 1984 | 〃 | 259×194 | |
Work84-P-8 | 1984 | 〃 | 259×194 |
- 新聞雑誌関係記事
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朝日/12月19日(東京/夕) 2月13日(夕)
毎日/12月21日(田中幸人)、2月28日(夕)
読売/1月10日(東京/夕) 2月6日(夕)、本江邦夫
2月18日(夕) 安黒正流
3月6日(夕) 吉岡健二郎
サンケイ/2月25日(高橋 亨)
京都/2月9日
日経/2月13日(夕)
TheJapanTimes/12月30日
新美術新聞 No.388(本江邦夫)
季刊みづゑ No.933(市川政憲)
毎日グラフ 第38巻第2号(ワシオ・トシヒコ)
公明 No.277(石崎浩一郎)
ef No.20(杉山清子)
美術手帖 No.539(松枝 到)
海燕 第4巻第3号(東野芳明)
FlashArtNo.121
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