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展覧会長谷川潔展

長谷川潔展

 長谷川潔(1891-1980)は、近代日本に生を享け、東洋と日本の根深い伝統を担いながら、フランスの文化環境のなかに60余年の精進を続けて、東洋と西洋の叡知と精神、日本とフランスの美意識と技法とを独自に融合したとして、その評価は既に世界的となっている。しかし、1918年に日本を発って以来、一度も故国の土を踏んでいない。長谷川潔の芸術の全貌は、残念ながら日本ではまだ十分には知られていないというのが現状である。こうしたことから、当館においては長らく、その主要作品を収蔵することと平行しながら、その回顧展開催の準備をすすめてきたが、今回それが実現することとなったものである。

 長谷川潔は横浜に生まれ、20歳頃から黒田清輝、岡田三郎助、藤島武二らについて洋画を学ぶ一方、1912年頃から木版画にも手を染め、1916年には永瀬義郎らとわが国で初めての版画グループ日本版画倶楽部を結成して、版画家としての道を歩き始めた。フランスに渡ってからは、油彩画のほか木版画、石版画、銅版画など多岐にわたる技術の研鑽を積んだ。1964年にフランス芸術院のコレスポンダン会員となり、1966年にはフランスの文化勲章にあたるオルドル・デ・ザール・エ・レットルを受けたが、その間に、今世紀初頭にはすでに滅んでいた銅版画技法マニエール・ノワールを苦心の末復興させ、従来の複製的技法の域を越えて芸術的版画の技法として蘇生させたことは特筆すべきことであった。

 今回の展覧会は、長谷川芸術の最初期から晩年に至るまでの全貌を紹介したもので、版画131点のほか、わが国では殆んど知られていない油彩画10点、素描12点によって構成された。本展は美術界待望の回顧展として多大の関心を集め、静かな感動を斯界にもたらしたが、展覧会終了後間もなくの12月13日、パリのアトリエにおいて長谷川潔は不帰の客となった。

会期
6月20日(金)~8月3日(日)
入場者数
総数 13,286人(1日平均340人)
出品目録
版画
題名 制作年 技法 寸法(cm)
文学雑誌『仮面』表紙ダンス 1914 板目木版・手彩色 14.6×12.5
文学雑誌『仮面』表紙青春 1915 板目木版・金刷り 15.1×11.6
ダンスA 板目木版・黒刷り 33.0×23.0
ダンスB 33.0×23.4
風(イェーツの詩に寄す) 37.2×26.4
海辺の小屋 24.0×28.0
牧神の午後(ステファン・マラメルの牧歌) 1916 21.5×18.3
海岸の帆船(小笠原島) 1916 板目木版・黒刷り 21.6×26.2
魚見小屋 板目木版・色刷り 29.0×34.0
種子草 板目木版・黄金刷り(印刷数2点) 33.7×26.3
海岸の家の群 板目木版・特別ボカシ試刷 26.5×29.9
海岸の木挽小屋 1917 25.8×32.1
カニューの風景 1921 板目木版・色刷り試刷 17.0×21.2
若い花屋の娘 1922 石版・試刷 18.7×13.5
キャンペレの古い家 板目木版・色刷り試刷 20.4×26.6
キャンペレの古い家A 1923 石版・試刷 17.9×21.5
レダ 1922 オー・フォルト 10.9×7.5
サン・メームの村 1924 ダイヤモンド刻 45.7×63.5
水辺脱衣 64.3×46.3
プロヴァンスの古市 1925 マニエール・ノワール 20.0×28.0
南仏古村(ムーアン・サルトゥー) 13.5×37.8
水浴の少女 ポアント・セーシュ 14.6×7.4
奇術 ポアント・セーシュ、淡彩 11.5×7.7
思想の生れる時 12.3×9.5
ヴォルクスの村 1927 マニエール・ノワール 20.1×28.0
ロエの村道 1928 19.0×29.0
小さな金魚鉢 ポアント・セーシュ 25.6×19.7
サン・ポール・ド・ヴァンスの村 1929 マニエール・ノワール 13.6×17.8
農家と雲 ポアント・セーシュ 15.1×29.0
水浴の女 ダイヤモンド試刻 64.0×46.2
アレキサンドル三世橋とフランス飛行船 1930 マニエール・ノワール 16.8×30.5
ニューヨーク上空のポアン・ダンテロガッション号 18.0×28.5
アネモネ ポアント・セーシュ 23.5×18.6
オーバーニュ風景 1931 マニエール・ノワール 13.5×27.8
窓辺の草花 ポアント・セーシュ 25.1×19.7
コップに挿した種子草 24.2×18.8
シャトー・アルヌーの寺院 1932 マニエール・ノワール 16.0×29.0
オランジュと葡萄 16.1×28.9
ダリア(愛の天使の窓掛) ポアント・セーシュ 24.5×20.0
薔薇とハートの1 アクアタント 24.8×18.9
エッフェル塔と雲 1933 ビュラン 16.8×29.7
マルキシャンヌの村(東ピレネーの村) 1934 ポアント・セーシュ 17.0×29.9
二つのアネモネ アクアタント 23.7×18.6
ソリエスの村 1935 ポアント・セーシュ 20.9×27.5
伊太利アッシジのサンタ・キャラ古寺 17.7×29.2
モトリコ漁村(スペイン) 1936 ポアント・セーシュ 21.3×28.1
裸婦 ビュラン 26.5×16.9
サン・ジミニャーノ風景(イタリア) 1937 ポアント・セーシュ 22.9×31.9
花瓶に挿したコクリコと種草 ビュラン 25.7×20.5
花瓶に挿したコクリコと種草 26.4×21.4
三つのアネモネ マニエール・ノワール 25.4×19.9
ジコンダ古村の礼拝堂 1938 ポアント・セーシュ 20.9×29.7
聖体を受けたる少女 26.5×21.4
小さなアネモネ 1940 アクアタントとヴェルニ・ムー 18.6×14.0
ジャ・ド・ブッファン(ポール・セザンヌの家) ポアント・セーシュ 21.9×29.5
シャトー・ド・ヴェヌヴェルの窓 1941 ビュラン 28.9×21.4
レ・ボウの風景 ポアント・セーシュ 22.0×29.5
一樹(ニレの木) 28.9×21.4
ヴェヌヴェルの丘上の古い農家 1942 22.4×31.5
野草(コクリコと矢車草) 1943 ビュラン 26.5×21.2
切子グラスに挿したアネモネと草花 1944-45 アクアタント 25.1×18.4
宝石と香水 1946 オー・フォルト 24.0×18.1
コップに挿した枯れた野花 1950 ビュラン 28.1×22.8
くりとかたつむり 17.4×28.8
木の葉の上の魚 17.2×28.8
開かれた窓 1951 29.4×22.2
コップに挿した野花(春) 28.5×22.9
コップに挿した種子草(秋) 28.6×23.0
フレジュスの古代羅馬の燈台 1952 マニエール・ノワール 20.5×30.5
窓辺の花瓶 28.8×22.3
黄金律(賀状用) 1952-53 ビュラン(ヴェラン皮刷り) 9.0×9.1
黄金律(賀状用) ビュラン 8.9×9.3
パリの小鳩嬢 (賀状用) 10.9×8.1
若木 1953 オー・フォルト 32.4×24.5
置き忘れられた人形 ビュラン 31.3×23.2
野薊 オー・フォルト 33.0×24.8
木と月 1954 33.7×22.8
アカシヤの老樹 34.0×23.5
窓上の人形 オー・フォルトとビュラン 33.7×27.8
仏国大統領エリゼ宮饗宴メニュー用銅版画 1955 ビュラン 16.4×12.3
半開の窓 1956 31.8×25.0
再生したる林檎樹 1956 オー・フォルト 35.7×25.8
フランス版画家協会晩餐会メニュー用銅版画 ビュラン 22.4×17.1
野辺小禽 1957 23.8×33.3
アトミック時代と平和(賀状用) 8.4×8.6
玻璃球のある静物 1959 マニエール・ノワール 35.5×25.5
小鳥と落葉 26.0×35.5
瓶の秋草(ピエ・ド・シェーブル) 35.4×25.7
薔薇と封書 26.2×36.0
卓上 ビュラン 23.5×34.0
地球(賀状用及び本の口絵に使用) 1950年代 11.0×7.7
卓上の人形 1960 マニエール・ノワール 36.0×26.2
セードルの実のある静物画 26.2×32.0
薔薇と時 1961 35.7×26.5
骰子独楽と幸福の星 26.5×35.7
小鳥と胡蝶 26.2×36.0
幾何円錐型と宇宙方程式 1962 26.5×35.8
飼馴らされた小鳥(西洋将棋等) 35.4×26.3
飼馴らされた小鳥(草花と種子) 35.4×26.4
酒盃の草花 1963 26.5×35.6
狐と葡萄(ラ・フォンテーヌ寓話) 35.4×26.4

題名 制作年 技法 寸法(cm)
小鳥と二つの枯葉 1964 マニエール・ノワール 26.5×35.6
小鳥と魚の友愛 35.6×26.5
砂漠の薔薇と海の星 26.4×35.6
美食家協会メニュー用銅版画 1964 マニエール・ノワール 16.5×12.0
幸福の小鳥(賀状用) マニエール・ノワール、手彩色 9.9×14.0
仮装したる狐静物画(フィンランド童話) 1965 マニエール・ノワール 35.4×26.2
コップに挿したアンコリの花(過去・現在・未来) 35.6×26.5
ジロスコープのある静物 1966 35.6×26.4
瓶に挿した種草 35.5×26.4
メキシコの鳩 静物画 26.4×35.4
メキシコの魚 静物画 1967 26.5×35.5
メキシコの種子草 静物画 35.7×26.5
本の上の小鳩 静物画 26.5×35.8
オパリンの花瓶に挿した種子草 1968 36.0×26.5
時 静物画 1969 26.4×35.4
草花とアカリョム 26.4×30.4
横顔 1970 36.0×26.8
水浴の少女と魚 1971 ポアント・セーシュ 20.7×13.8
開かれた窓と小鳩(賀状用) 制作年不明 ビュラン 11.6×8.4
小鳥と花と果物(賀状用) マニエール・ノワール、手彩色 8.5×12.6
『転身の頌』(日夏耿之介第一詩集) 1917 21.2×20.2
『新しき小径』(堀口大学詩集)表紙・カット 1922 木口木版・黒刷り 表紙:11.2×6.2 カット:6.2×8.6
『月下の一群』(堀口大学訳詩集)表紙・カット 1925 木口木版・黒刷り 11.2×8.4
『日夏耿之介定本詩集』表紙・エキスリブリス 1925 木口木版・黒刷り 表紙:10.4×10.5(3点) エキスリブリス:9.0×7.5(3点)
“LeJapontraditionnel”(巴里祭刊)表紙・カット 1926 木口木版・黒刷り 表紙:19.0×15.0 カット(2点):9.0×7.4、9.0×9.0
『砂の枕』(堀口大学詩集)カット 1926 木口木版・黒刷り 8.2×9.6(2点)
春陽会カタログ表紙(小鳥と花) 1930 木口木版・黒刷り 19.5×12.2
民謡集『支那の夜』(フランス創作木版画協会出版)挿絵 1932 木口木版・黒刷り 6.8×12.2 9.7×7.2 8.6×17.0 9.6×9.6(2点)
『竹取物語』(本野盛一仏訳パリ・リーヴル・ダール協会出版) 1933 30.3×23.2(本)挿絵
『長谷川潔の肖像』(「現代版画の巨匠」豪華限定版叢書、マヌエル、ブルッケール出版社刊) 1963 33.0×25.2

油彩画
題名 制作年 技法 寸法(cm)
フュヴォーの古村 1930 油彩・キャンヴァス 54.0×65.0
ヴォルクスの村 37.0×92.0
南仏蘭西ソリエスーヴィル古村 1936 54.2×65.3
白い花瓶に挿した薔薇その他 c.1938 92.0×73.4
青い花瓶に挿した草花 1948 56.6×46.0
白い花瓶に挿した草花 56.6×46.0
コップに挿したボルビイリス 46.4×38.0
コップに挿した草花 27.0×22.0
グラスに挿した草花 1949 27.2×22.0
白い花瓶に挿したコクリコその他 46.0×38.0

素描
題名 制作年 技法 寸法(cm)
種子草写生 1935 48.1×63.2
草花写生A 1935~36 墨・淡彩 27.1×38.4
草花写生B 27.1×38.3
種子草写生 1936 63.0×47.9
聖体を受けたる少女 1946 サンギン 45.2×32.5
若い娘 1947~48 44.0×31.5
若き女の顔 制作年不明 56.6×45.3
種草 1953 セピヤインク 22.0×30.3
根の付きたる種子草 青墨 22.0×30.5
ヴェヌヴェルの古い農家 26.5×38.5
枯草 c.1956 墨(和筆描写) 22.8×30.8
灌木の一枝 墨・淡彩 26.5×38.5

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