展覧会現代メキシコ美術展
現代メキシコ美術展
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当展は東京国立近代美術館の昭和49年度特別展として企画されたもので、同館での展覧会(9月22日-11月4日)のあと京都で開催されたものである。メキシコ美術界の長老ルフィーノ・タマヨとカルロス・メリダ以下、中堅から若手まで28名の作家が選ばれており、メキシコの現代美術の状況をよく展望できる多彩な展示となった。出品作家のうち25名は画家、3名は彫刻家である。
オロスコ、リベラ、シケイロスら壁画運動の巨匠たちが世を去った現在でも、やはりメキシコの現代美術は世界のなかでヨーロッパともアメリカとも異る、ある独自の性格や体臭をもって発言をつづけていることが見てとれる。1910年代生まれでは、抽象のグンター・ゲルソーと特異を具象のホアン・ソリアーノがおり、前の世代と後の世代との橋渡しとなっているが、以後の若い世代へかけては様式、作風においてきわめて個性的であり多様な活躍ぶりといえる。
異色では嘗てパリのシュルレアリスム展にも参加した、イギリス生まれの女流画家レオノーラ・カリントンがいるが、また日本でも名前を知られたコロネル兄弟が注目された。兄のペドロ・コロネルは色彩、フォルムともにメキシコらしい特徴にみちた激しい抽象作風を示し、弟のラファエル・コロネルは達者な描写力をもって陰えいと風刺に富む新具象を展開している。具象系でいえばホセ・ルイス・クエバスの奔放なまでの特異さ、ルイス・ニシザワの現代社会への告発をひめた絵画が目を引いた。また若手で出色の作家はペドロ・フリーデベルグであり、シュルレアリスムの幻想的系譜をひきながら、明快なオプ・アートの手法を駆使して新鮮にして強烈な世界を開拓していた。彫刻の中では、メキシコ固有の主題をモニュメンタルに造形したフランシスコ・スニガが印象深かった。
因にみ出品作家の世代分けの参考として、生まれた年代と人数を記しておく。1890年代生まれ2名、1900年代生まれ2名、1910年代生まれ3名、1920年代生まれ7名、1930年代生まれ12名、1940年の生まれ2名である。
- 会期
- 11月26日-50年1月12日
- 入場者数
- 総数5,826人(1日平均931人)
- 出品目録
作者名 | 題名 | 制作年 |
---|---|---|
ヒルベルト・アセベス・ナバロ | 征服の談合 | 1966 |
〃 | 鳥に驚く女 | 1972 |
〃 | ヴィーナスと夕べの鳥 | 1972 |
〃 | 男と二羽の鳥 | 1972 |
リリア・カリーリョ | 静かなイメージ | 1970 |
レオノーラ・カリントン | チキ、あなたの国 | 1944 |
〃 | 電話遊び | 1967 |
〃 | アルカエストへの旅 | 1974 |
ペドロ・セルバンテス | 外擺(はい)線 | 1974 |
〃 | 双曲線 | 1974 |
〃 | 投影 | 1974 |
アルナルド・コエン | お前はそう言う | 1971 |
〃 | ひょっとしたら時間が経たない | 1973 |
〃 | 風景(20点) | 1974 |
ペドロ・コロネル | 夢の四隅 | 1961 |
〃 | 沈黙の時代I | 1973 |
〃 | 沈黙の時代II | 1973 |
ラファエル・コロネル | 浜辺の少女 | 1965 |
〃 | 籠を持った少女 | 1973 |
〃 | 青-赤-緑 | 1971 |
アルベルト・ヒロネーリァ | オルガス伯爵の埋葬 | 1972 |
〃 | スペインの踊り | 1974 |
〃 | サパータ | 1974 |
ロジャー・フォン・グンテン | ベトナムの花 | 1968 |
〃 | ある収集家のためのオブジェ | 1969 |
〃 | 戦いの車 | 1969 |
〃 | セリーネの肖像 | 1971 |
ルイス・ロペス・ロサ | ドーラ・マリー | 1962 |
〃 | 夜の風景 | 1969 |
〃 | 靴のカレンダー | 1969 |
カルロス・メリダ | 祭壇屏 | 1961 |
〃 | 黒い楕円 | 1964 |
〃 | トリオ | 1972 |
カルロス・メリダ | 形の詩集 | 1973 |
〃 | 双子の輪舞 | 1974 |
ロドルフォ・ニエト | 人物IV | 1974 |
〃 | 人物V | 1974 |
〃 | 人物VI | 1974 |
ルイス・ニシザワ | 永遠の理由 | 1966 |
〃 | カイン | 1966 |
アントニオ・ペラエス | 赤の深み | 1974 |
〃 | スペース | 1974 |
〃 | 光と大地 | 1974 |
〃 | 大地の花 | 1974 |
ビセンテ・ロホ | 否定3A | 1972 |
〃 | 土曜日のしるし | 1973 |
〃 | 赤い帽子の男 | 1974 |
フランシスコ・コルサス | 箱づめ | 1966 |
ホセ・ルイス・クエバス | 石器時代のマグダレーナ | 1962 |
〃 | 子供のサド侯爵 | 1964 |
〃 | 巨人たち(5点) | 1971 |
マヌエル・フェルゲーレス | ゼロのエネルギー | 1973 |
〃 | 二つの解釈 | 1973 |
〃 | ゼロのエネルギー | 1974 |
〃 | 二つの解決 | 1974 |
〃 | 二つの解決 | 1974 |
ペドロ・フリーデベルグ | ボードレールの台所 | 1974 |
〃 | 中間ゾーンの怪奇な風景 | 1974 |
〃 | けがれのない町-たくさんの家 | 1974 |
ルイス・ガルシア・ゲレロ | グアナホアトの道化 | 1964 |
〃 | 飛ぶマンゴ | 1964 |
〃 | マヌエル・ホセ・オトンに捧ぐ | 1966 |
〃 | 自然界の三王 | 1969 |
〃 | 苺 | 1971 |
フェルナンド・ガルシア・ポンセ | 絵画No.7 | 1973 |
〃 | コンポジションNo.5-74 | 1974 |
〃 | コンポジションNo.6-74 | 1974 |
グンター・ゲルソー | 南の風景 | 1964 |
〃 | 灰色-緑-オレンジ | 1968 |
〃 | オレンジ-白-赤 | 1968 |
グンター・ゲルソー | 否定4A | 1973 |
〃 | 否定1353 | 1973 |
〃 | 否定37 | 1974 |
ワルデマール・ショランダー | 女 | 1968 |
〃 | 人物 | 1971 |
〃 | 落ちた種 | 1971 |
ホアン・ソリアーノ | しゃれこうべのある静物 | 1967 |
〃 | 飛ぶふくろう | 1968 |
〃 | 南風 | 1969 |
〃 | イスクィントレ犬 | 1972 |
ルフィーノ・タマヨ | メキシコ人とその世界 | 1966 |
フランシスコ・トレド | 満足したろば | 1970 |
〃 | 海の花 | 1973 |
〃 | みのけのよだつ猫 | 1974 |
コルデリア・ウルエタ | 灰色の人 | 1967 |
〃 | 郷愁よさらば | 1972 |
〃 | 軍隊の夜 | 1974 |
フランシスコ・スニガ | 二人の立てる女 | 1959 |
〃 | 立っているフチテカ人 | 1966 |
〃 | 腰かけるマヤの女 | 1969 |
〃 | 偉大な祖母 | 1971 |
〃 | 坐るユカテカの女 | 1971 |
- 新聞雑誌関係記事
-
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毎日(地方)11月27日
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朝日(夕刊)12月4日
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