教育普及 パブリックプログラム
展覧会関連プログラム
Re: スタートライン展 笠原恵実子によるレクチャー&ワークショップ
「アフター・リチャード・セラ」
「Re: スタートライン展」の関連企画として、アーティストの笠原恵実子氏を講師に迎えたレクチャー&ワークショップを開催します。
「Re: スタートライン展」が取り上げた「現代美術の動向」展と同時期に開催された重要な展覧会として、1970年の「東京ビエンナーレ 人間と物質」(東京都美術館・京都市美術館ほか)があります。今回の企画では、同展に出品されたリチャード・セラ(1938- )の作品と同時期に発表された《動詞のリスト(Verblist)》という作品をめぐって、笠原によるレクチャーを聴いた上で、作品の制作プロセスをワークショップ形式で追体験します。1970年当時の身体と言語の関係を探るパフォーマンス形式の作品のありようについて、考えてみませんか。
ワークショップでは、3名程度のグループになり、《動詞のリスト(Verblist)》から選んだ動詞を身体を用いて表現し、ビデオ作品を制作します。
なお、5月13日のレクチャーのみ、または6月3日のワークショップのみの参加も可能です。ふるってご参加ください。
5月13日のレクチャー動画はこちらからご覧いただけます。(約1時間、YouTubeが開きます)
ワークショップに参加される方は、レクチャーの動画を事前にご覧いただくことをお勧めします。
「107_of carbonization」より
日時 | 【レクチャー】2023年5月13日(土)14時30分~16時 【ワークショップ】2023年6月3日(土)13時~16時30分 |
---|---|
会場 | 京都国立近代美術館 1階講堂 |
対象 | どなたでも |
定員 | 【レクチャー】60名(申込不要) 【ワークショップ】15名(事前申込制) |
参加費 | 無料 ※ワークショップに参加される方は企画展の観覧券が必要です。 |
申込方法 ※ワークショップのみ |
※申込者多数の場合は抽選を行い、5月29日以降、お申込みされた全ての方へご連絡いたします。 |
講師 | 笠原恵実子 1963年生まれ。1988年多摩美術大学大学院修了。1995年から2014年までニューヨークを拠点に活動し、これまで「日本の現代美術1985–1995」(東京都現代美術館、1995年)、「揺れる女/揺らぐイメージ」(栃木県立美術館、1997年)、ヨコハマトリエンナーレ(2001年、2014年)、シドニー・ビエンナーレ(2004年)、「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭」(2015年)など、国内外の多数の国際展やグループ展に参加。女性と社会との関係性を問う初期の彫刻作品から、近年は性差や宗教など社会を規定する制度を考察するインスタレーションを制作している。2014年より多摩美術大学美術学部彫刻学科の教授を務める。 |
講師コメント |
「アフター・リチャード・セラ」は、「人間と物質展」(東京ビエンナーレ、1970)においてリチャード・セラが制作し、現在多摩美術大学に設置されている作品《To Encircle Base Plate Hexagram, Right Angles Inverted》(1970)*と、同じくセラの作品で108 の動詞をリストアップしたドローイング《Verblist》(1967-8)の二作品を起点として展開します。当時の展覧会や美術の動向、《To Encircle》の再設置にまつわる話などをレクチャーで共有した後に、皆で《Verblist》に新たに動詞を書き加えることや、身体的表現へと発展させるワークショップを行います。そして、こういった行為を通して当時の社会状況や美術動向と現在を比較し、美術の継承や拡張を皆で考える内容です。 1969年に企画された二つの展覧会、ハラルド・ゼーマンのキュレーションの展覧会「態度が形になるとき:作品―概念―過程―状況―情報(When Attitudes Become Form: WORKS-CONCEPTS-PROCESS-SITUATION-INFORMATION)」(1969、ベルン・クンストハレほか巡回)と、マーサ・タッカーとジェームス・モンテのキュレーションの「アンチ・イリュージョン: 手順/素材(Anti-Illusion: Procedures/Materials)」展(1969、ニューヨークのホイットニー美術館)に大きな影響を受けた「人間と物質展」コミッショナーの中原佑介は、ポスト・ミニマリズムやランド・アート、コンセプチュアル・アート、アルテ・ポーヴェラなといった同時代的動向を念頭に、日本のアーティストも加え作家選考を行なっています。現在は巨大な鋼鉄彫刻で知られているリチャード・セラですが、当時は公民権運動やベトナム戦争反対運動など、矛盾や軋轢が顕在化したアメリカ社会の中で、従来の静的な鑑賞対象である彫刻では時代を反映できないと考え、身体的行為を通して彫刻や実験的インスタレーション、ビデオ作品などの新しい制作を模索する若い彫刻家であり、これら三つすべての展覧会に参加しています。 《Verblist》はその頃セラが行っていた身体的行為の基となる動詞のリストであり、実際に《To Encircle》においても、to encircle(周囲を回る、取り囲む)を基に、実際にセラ本人が描いた円弧に沿ってL字鋼が地中に埋め込まれています。展覧会場となった東京都美術館の外で杉の木と共に制作設置がなされたため、展覧会終了後も現場に埋められたままとなり、巡回先であった京都市美術館(現在の京都市京セラ美術館)でも見ることができない作品でした。 今回「Re:スタートライン」展開催を受けて、当時京都に来ることのなかったセラ作品について再考察し、当時のアートの動向から今を考える機会を持ちたいと思っています。 *《To Encircle》の再設置について 「人間と物質展」から8年後の1978年、東京・上野公園の整備工事により《To Encircle》は掘り起こされ、所有者不明かつ引き取り手がないとして放置されていることが判明、『美術手帖』に記載される。それを読んだ多摩美術大学の大学院学生有志が働きかけ、セラに直接連絡をとり一年後に正式に引き受け大学構内に再設置をする許可を得た。その後も大学内の何箇所かを移動し、現在は八王子キャンパス構内に埋められているが、未だ所有者はなく物品リストにも記載されていない。 セラが身体的行為から制作を試みていた60年代後半、日本では学生運動がピークを迎え、多摩美術大学でもバリケードを組み激しい闘争が行われていた。しかし、70年代に入ると急速に衰退し《To Encircle》が再設置された70年代後半には、全く異なる空気が流れていたと当時の学生たちが証言している。 |